東通原子力発電所1号機(沸騰水型、定格電気出力110万kW:青森県東通村)は、1月7日より定期検査中のところ、1月30日15時55分頃、タービン建屋地下1階に設置してある作業用機器に電源を供給する変圧器からの発煙を確認し、16時02分に発煙の収束を確認しております。また、17時05分、東通消防署により鎮火が確認されました(1月30日お知らせ済み)。
当該変圧器を調査したところ、巻線には一部焦げた跡があり、カバー内面の一部にすすが確認されました(1月31日当社ホームページに掲載済み)。
その後、当社として詳細な調査を進めてまいりましたが、本日、火災の発生原因と対策を取りまとめ、安全協定に基づき青森県、東通村および隣接市町村へ報告しましたのでお知らせします。
なお、本事象による発電所周辺への放射能の影響はありません。
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火災に至った原因
(1)当該変圧器の巻線が焦げた原因
火災発生時、当該変圧器(定格容量50kVA)の下流側にあるタービンボルトヒータ用分電盤※1(以下「当該分電盤」という)に、定期検査関連作業のため定格容量以上の負荷(定格75kWのコンプレッサ※2)を接続して使用したことにより、当該変圧器が過負荷となりました。
さらに、本来、当該変圧器保護のためには当該分電盤とコンプレッサの間に150A以下の過負荷保護用ブレーカ※3を設置する必要がありましたが、容量の大きい200Aの過負荷保護用ブレーカを設置してしまったため、当該変圧器に過負荷耐量※4(約178A)を超えた電流(約200A)が流れた状態で使用し続け、当該変圧器の巻線の温度が上昇して焦げたものと推定しました。
(2)当該変圧器を過負荷で使用するに至った主な背景
a.作業用電源の使用を許可する際に当社から施工会社に対して提出を求めている「作業用電源使用申請・許可証」の対象から当該分電盤が漏れていました。
b.当社に「作業用電源使用申請・許可証」提出対象外の作業用電源の負荷に関する情報を施工会社から入手するルールがなく、当該分電盤の負荷に関する情報を事前に確認できませんでした。
c.当社、施工会社とも、当該分電盤に設置されている短絡保護用ブレーカ※5(225A)について、その目的が短絡保護であるという注意表示がなかったこともあり、一般的な過負荷保護用ブレーカと勘違いしてしまいました。このため、当該分電盤とコンプレッサの間に本来より容量の大きい過負荷保護用ブレーカを設置してしまいました。
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再発防止対策
今回の事象を踏まえ、以下の対策などを実施し、再発防止に努めてまいります。
(1)当該分電盤を「作業用電源使用申請・許可証」の対象とすること、および分電盤等を作業用として使用する場合は、すべて「作業用電源使用申請・許可証」の対象とし、その旨手順書に追記します
(2)施工会社に対し作業用電源リストを当社に提出することを調達要求事項として明確化します。
(3)当該分電盤に設置されているブレーカの目的(短絡保護用なのか過負荷保護用なのか)などを手順書に明記するとともに、当社社員に対する教育を実施します。また、手順書の内容を施工会社に対する調達要求事項として提示します。
あわせて、当該分電盤等にブレーカの目的を明記した注意表示を行います。
(4)作業用電源を供給する変圧器の電源側ブレーカに適正な過負荷保護装置を設置する等、設備上の対策を実施します。
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他の作業用電源を供給する変圧器の確認状況と今後の対応
当該変圧器以外の発電所内の作業用機器に電源を供給する変圧器等について、外観目視により異常の無いことおよび定格負荷の範囲内で使用していることを確認しました。
なお、当該変圧器は新品と交換いたします。
以上
- ※1:タービンボルトヒータ用分電盤とは、タービン用ボルトの締付をする際にボルトを加熱する装置に電源を供給するために設けたもの。なお、他の作業用電源としても使用することができ、火災発生時タービンボルトヒータは接続されていなかった。
- ※2:コンプレッサとは、空気圧縮機のことで、蒸気タービンの手入れ作業に使用していた。(使用状態は73kVA以下と推定)
- ※3:過負荷保護用ブレーカとは、定格を超える電流(過電流)が流れたときに遮断をする装置。
- ※4:過負荷耐量とは、電気機器が定格容量を超えて、異常を生じさせることなく運転できる容量で、当該変圧器の定格電流(137A)の約1.3倍の値である。
- ※5:短絡保護用ブレーカとは、故障などにより2線間が接触し、定格を超える大きな電流が流れた場合に、機器を保護するため瞬時に遮断する装置。
(添付資料)
1.電源構成図(PDFファイル)
2.設備改善対策(PDFファイル)