原子力情報 The information of Nuclear Power

女川原子力発電所1号機における保安規定に定める運転上の制限※1内への復帰について

平成22年 7月15日

 当社女川原子力発電所1号機(沸騰水型、定格電気出力52万4千kW:宮城県牡鹿郡女川町、石巻市)は、第19回定期検査中であり、7月6日に原子炉を起動し、発電再開に向けて各機器の確認を行っているところでありますが、7月9日、午前4時48分頃、原子炉建屋地下2階で、当社社員が、高圧注水系※2の蒸気タービンを回すための蒸気配管に設置された弁(高圧注水系タービン主蒸気止め弁)付近から床面に水が滴下していることを確認しました。

 水の滴下を止めるために、高圧注水系の隔離を行う必要があることから、高圧注水系が動作不能となるため、同日午前5時10分に、保安規定第39条に定める運転上の制限を満足しないと判断いたしました。

 その後、高圧注水系の隔離を行ったところ、同日午前6時12分に、水の滴下は止まりました。

 滴下した水の量は、微量(1ミリリットル未満)で、放射性物質は検出されませんでした。

 なお、高圧注水系の代わりに原子炉を「冷やす」機能である原子炉隔離時冷却系が動作可能であること、自動減圧系の窒素ガス供給圧力が規定圧力以上であることを確認しました。

(7月9日お知らせ済み)

 

 調査の結果、微量の漏えいは、高圧注水系タービン主蒸気止め弁(以下、「主蒸気止め弁」という。)の軸封部から滴下したものと判明しました。

 主蒸気止め弁は、高圧注水系の運転時には、蒸気が軸封部を通じて弁の外に漏れ出さないように、軸封部の蒸気を真空ポンプで吸引する構造となっておりますが、高圧注水系の停止時は、真空ポンプも停止しており、上流側にある高圧注水系ポンプ駆動用タービン止め弁(以下、「タービン止め弁」という)の弁体と弁座の接触状態が変化したことにより、この部分から流れ出した蒸気が主蒸気止め弁の軸封部から滴下したものと推定しました。

 このため、タービン止め弁の分解点検を実施した結果、異常はなかったものの弁体と弁座の接触部分の磨きなどの手入れを行い、その後、弁の全閉状態において下流側への蒸気の流出がないことを確認するとともに、高圧注水系の定期試験を実施し、高圧注水系が動作可能であることを確認したことから、7月14日午後8時25分に運転上の制限内に復帰いたしました。

 なお、主蒸気止め弁の軸封部から床面への水の滴下がないよう処置も実施しました。

 

 本事象による発電所周辺への放射能の影響はありません。

 

以 上

※1 運転上の制限

     運転上の制限とは、安全機能を確保するため、予備も含めて動作可能な機器(ポンプ等)の必要台数や、原子炉の状態毎に遵守すべき温度や圧力の制限を定めているものであり、保安規定第39条は、非常用炉心冷却系への要求事項について定めたもの。

     高圧注水系が動作不能となった場合には、代わりに原子炉を「冷やす」機能の健全性を速やかに確認するとともに、10日以内に動作可能な状態に復旧することと定めている。

 

※2 高圧注水系

     非常用炉心冷却系の一部で、原子炉の水位が低下する事故等が発生した場合、原子炉内の圧力が高い状態でも原子炉内に注水し、燃料を冷却する設備。高圧注水系は原子炉で発生する蒸気の一部を使って、高圧注水系ポンプ駆動用タービンを回し、連結されたポンプを駆動させるしくみになっている。今回、微量の水が漏えいした個所は、原子炉で発生した蒸気の一部を高圧注水系ポンプ駆動用タービンに導くための配管に設置されている弁。