当社、女川原子力発電所2号機(沸騰水型、定格電気出力82万5千kW:宮城県牡鹿郡女川町、石巻市)は、定格熱出力で運転中のところ、復水器につながる気体廃棄物処理系*1を流れる気体の量が、9月中旬から徐々に増加傾向を示していたことから、第9回定期検査を前倒して開始し、その原因調査を実施することとしました。(10月10日お知らせ済み)
10月11日に原子炉を停止し、気体廃棄物処理系の流量増加の原因について調査を行った結果、高圧第2給水加熱器*2(B)から復水器につながるベント配管*3の曲管部に一ヵ所の穴があり、当該箇所から周りの空気を吸い込んでいることを確認しました。(10月12日お知らせ済み)
1.穴が開いた原因調査結果
当該箇所の内面を観察したところ、エロージョン*4と思われる、ノコギリ歯状の凹凸が確認されたことから、これにより減肉が進展し、穴が開いたものと推定しました。(11月5日お知らせ済み)
2.短期間で減肉が進展した要因調査結果
女川2号機においては高圧第2給水加熱器(B)内のベント配管の先端部中心に、給水加熱器内の非凝縮性ガスを排出する目的で直径約5mmのベントホール(以下、「当該ベントホール」)が設けられており、比較的凝縮水が流れ込みやすい構造となっております。そうした構造において、凝縮水の水位が上昇した場合、先端部中心に設けられたベントホールの影響により、ベント配管に流れ込む凝縮水量が増加することを、実機を模擬した模型を用いた試験により確認しました。(11月5日お知らせ済み)
その後、実機を模擬した模型を用いた試験において、高圧給水加熱器内にスケール*5が堆積した場合、当該ベントホール周辺の凝縮水の水はけが悪くなり、水位が上昇して当該ベントホールが完全に水没し、ベント配管内に流入する凝縮水の量が増加することを確認しました。また、実機においてもスケールの存在を確認しました。
3.推定原因
本事象は、給水加熱器内に徐々にスケールが堆積していった結果、当該ベントホール周辺の凝縮水の水はけが悪くなり、水位が徐々に上昇し、当該ベントホールが完全に水没したことで、当該ベントホールを通じてベント配管内に流れ込む凝縮水量が増加したこと、また、流れ込む凝縮水が増加したことで、オリフィスの下流側で高速な蒸気の流れにのった液滴が当該曲管部に高速で衝突する回数が増えたことにより、短期間で減肉し穴が開いたものと推定しました。
4.再発防止対策
当該曲管部における短期間での減肉の進展は、高圧給水加熱器の器内ベント配管の先端部中心に設けられているベントホールからベント配管内部に流れ込む凝縮水に起因することがわかったため、今回の定期検査において高圧第1給水加熱器および高圧第2給水加熱器の器内ベント配管先端部中心のベントホールを閉止いたします。
また、高圧給水加熱器のベント配管オリフィス下流の当該曲管部におけるエロージョンの対策として、流速を低減させることが有効であることから、今回の定期検査において、高圧第1給水加熱器および高圧第2給水加熱器のベント配管オリフィスを復水器内に移設する工事を実施いたします。
なお、念のため、次回定期検査において当該曲管部の肉厚測定を実施いたします。
以上
*1 気体廃棄物処理系とは、復水器の真空度を保つために系統内に流れ込む空気を抽出し、あわせて、復水器に流入する気体状の核分裂生成物の放射能を減衰させる系統。
*2 給水加熱器は、原子炉に送る給水を、高圧タービンからの蒸気などとの熱交換により温め、熱効率を上げるものであり、低圧第1、第2、第3、第4、高圧第1、第2、および低圧給水加熱器ドレン冷却器の7段階の加熱器で構成。
*3 高圧第2給水加熱器ベント配管とは、高圧第2給水加熱器内の非凝縮性ガスを復水器に排出するために給水加熱器に設置されている配管。
*4 エロージョンとは、蒸気と凝縮した液滴が混じって流れている配管において、液滴が高速で配管内面に衝突し、浸食する現象。
*5 スケールとは、サビなどの総称。