- 事象の経緯
女川原子力発電所第2号機(沸騰水型、定格出力82.5万キロワット)において、第8サイクル中間停止中に制御棒の外観点検を行っていたところ、平成18年7月13日に6体の制御棒と燃料支持金具が、本来取付けられているべき位置と異なる位置に取付けられていることを確認しました。(別紙−1(PDFファイル)、2(PDFファイル)参照)
- 原因調査
過去の作業実績を確認したところ、制御棒取替とシュラウド点検において制御棒等の取外し・取付けを実施していることを確認しました。
制御棒取替作業では、制御棒の炉内位置番号とシリアル番号の確認を行っていたこと、および制御棒等の入れ違いの発生しない作業手順になっていたことを確認しました。
一方、第6回と第7回定期検査で実施したシュラウド点検での制御棒等の取外し・取付け時には、制御棒の炉内位置番号の確認は行っていましたが、シリアル番号の確認はしていませんでした。また、第6回定期検査の作業手順は、基本的に時計回りで取外すものの、最後の6体だけ規則性のない順序で取外すことにしていたことが判明しました。(別紙−3参照(PDFファイル))
- 推定原因
第6回定期検査で実施したシュラウド点検において、本来の取外し手順ではなく全ての制御棒を時計回りの順序で取外した後、本来の取付け手順どおりに取付けた場合、今回確認された制御棒等の入れ違いと合致することがわかりました。このことから、第6回定期検査において制御棒等の入れ違いが発生したものと推定しております。
- 影響評価
- (1)炉心燃料等への影響
燃料支持金具の下部には、燃料集合体内に流入する冷却水流量を調整するオリフィス(絞り)が取付けられています。燃料支持金具の入れ違いによって、燃料集合体内を流れる冷却水流量に影響を与え、当該燃料の出力や燃え方にも影響を与える可能性があることから、今回確認された入れ違いによる線出力密度*1、限界出力比*2、停止余裕*3等への影響について評価したところ、各制限値等を満足し運転できていたことを確認しました。
また、過去に行われた制御棒等の取外しを伴う作業を踏まえ、最大限の入れ違いを仮定した場合でも、各制限値等を満足することを確認しました。(別紙−4参照(PDFファイル))
- (2)過去の定期事業者検査等への影響
今回の入れ違いによる、過去に行われた定期事業者検査等への影響を確認したところ、第7回定期事業者検査のうち「原子炉停止余裕検査」、「燃料集合体外観検査」、「炉心状態を評価基準としている検査(総合負荷性能検査、炉心性能評価検査)」に影響があることが判明しました。
「原子炉停止余裕検査」では、入れ違いによって燃料の燃焼の進み具合が影響を受けることにより検査対象の制御棒が一部違ってくることがわかりましたが、解析の結果、検査の判定基準を満足していることを確認しました。
「燃料集合体外観検査」では、入れ違いによって燃料の燃焼の進み具合が影響を受けることにより検査対象の燃料が違ってくることがわかりましたので、本来の検査対象燃料について今回の停止期間中に外観の点検を行い、問題のないことを確認しました。
「炉心状態を評価基準としている検査(総合負荷性能検査、炉心性能評価検査)」については、入れ違いによる「線出力密度」や「限界出力比」への影響を評価した結果、いずれも検査の判定基準を満足していることを確認しました。
- (3)保安規定に定める運転上の制限への影響
今回の入れ違いによる、保安規定に定める運転上の制限のうち、炉心に関する条項第19条(停止余裕)や第25条(原子炉熱的制限値)等について、遡って評価した結果、いずれも保安規定における運転上の制限を満足していることを確認しました。
- 根本原因分析
推定原因から、今回の入れ違いが起こった根本原因について要因分析を行いました。直接的な原因は取外し手順を誤ったことでしたが、その他に「要領書の記載の不備」、「手順が明確に記載されていたため間違いは起こらないとの思い込み」、「入れ違いが炉心に及ぼす影響についての教育が不十分だった」等の要因が重なって発生したものと分析しました。
- 再発防止対策
以下の再発防止対策を実施することとします。
- (1) 制御棒等の取外し・取付け作業の各工程での作業担当課による立会い確認を実施します。
- (2)制御棒等の取外しから取付けまでの各ステップを記した手順を作成し、必ず二人で制御棒等の移動作業が間違いなく計画どおりに実施されていることを確認すると共に、取付け後に制御棒シリアル番号と燃料支持金具グループ番号を確認し、記録する手順とします。
- (3) 要領書に、手順の留意点とその理由を明記します。
- (4) 作業関係者に対し、制御棒等の入れ違いによって炉心へどのような影響があるのかを十分理解させるための教育を実施します。
以上
(別紙−1)制御棒および燃料支持金具 外見図(PDFファイル)
(別紙−2)制御棒および燃料支持金具 炉内配置図(PDFファイル)
(別紙−3)第6回定期検査時のシュラウド点検における取外し順序(PDFファイル)
(別紙−4)制御棒および燃料支持金具入れ違いによる炉心特性確認結果(PDFファイル)
*1 |
燃料棒単位長さあたりの出力のことで、燃料の健全性を確認する指標のひとつ。 |
*2 |
燃料集合体の冷却状態を示す値。燃料の健全性を確認する指標のひとつ。 |
*3 |
原子炉を安全に停止させるために必要な反応度のゆとり能力。最大反応度価値を有する制御棒1本が完全に引き抜かれた状態であっても、炉心は未臨界を維持できることが停止余裕に対する要求。 |