- 事象発生の状況
女川原子力発電所2号機(電気出力82万5千キロワット)は、第8回定期検査中のところ、平成18年8月3日16時30分頃、原子炉建屋地下3階トーラス室注1の床に水溜まりが発見されました。その後の調査により、合計7箇所の水溜まりが発見され、その合計は約7L、放射能量は合計で約6.0×106Bq(ベクレル)でした。(別紙1参照(PDFファイル))。
この事象による外部への放射性物質の放出はなく、環境への影響はありません。
なお、本件は法律に基づく報告対象事象です。
- 調査
調査の結果、以下のことから、漏えい箇所は原子炉冷却材浄化系入口ライン試験タップ第一弁(F042X、以下当該弁という)と判断しました。
- (1)水溜まりが確認された床面の上部に、点検のために開放状態にあった当該弁が位置していました
- (2)当該弁下部にあたるサプレッションチェンバの側面に水の流れた痕があり、汚染が確認されました。
- (3)漏えい発見直後、当該弁のフランジ面まで水が溜まり、弁下部に設けた養生シート内に水が溜まっていました。
- (4)床面水溜まりと養生シート内水溜まりの主要核種の放射能濃度と割合が類似していました。
- (5)トーラス室において当該弁以外に水の漏えいが発生するような箇所はありませんでした。
- 推定原因(別紙2(PDFファイル)、3(PDFファイル)参照)
調査の結果、今回の事象の発生原因は次のように推定しました。
- (1)今回の定期点検において、当該弁を含む原子炉冷却材浄化系の弁3体(F002、F003およびF042X)を点検するため、その上流に位置する弁(F001およびF024)を閉とし、上記弁を含むエリアの水抜きを行いました。
- (2)機械保修課員はF003の点検において、上流側から水の流入を確認したため、F001もしくはF024からの漏えいを疑い、F003の上流に位置するF002を閉としました。機械保修課員はバウンダリ注2内へ水が流入してきた事象について適切な不適合処理を行わず、また、F002の点検予定であった電気保修課とバウンダリの変更について調整を行いませんでした。
- (3)後日、バウンダリが変更されたことを知らない電気保修課員は、点検のためにF002を開操作しました。そのため、F002上流に溜まっていた水が下流に流れ、機械保修課で開放点検中であった当該弁から漏えいしたものと思われます。
- 再発防止対策
本件において、管理職の関与および関係者間のコミュニケーション等が不十分であったこと、バウンダリ変更手続きの重要性の認識が不足していたこと、さらにはバウンダリ変更手続きが不明確であったこと等に問題がありました。そのため、以下の再発防止対策を講じます。
- (1)指示・報告の徹底とコミュニケーションの充実
業務を行うにあたっての基本動作である以下の徹底を図ります。
・ 管理職による指示・確認の徹底
・ 管理職と担当者の双方向コミュニケーションの徹底
・ 関係課間の情報共有の充実
- (2)教育等の充実
技術系各課員に対してバウンダリ管理およびタグ管理に関する教育、不適合処理に関する教育を継続して実施していきます。さらに、経験の浅い社員に対して管理職もしくは経験のある課員がバックアップをしていきます。
また、中長期的な課題として力量向上策の充実に取り組むこととし、今後1年を目途に保修担当者のOJT計画を策定します。
- (3)バウンダリ管理およびタグ管理の改善
バウンダリ変更時の管理方法を改善し、要領書に明記するとともに、バウンダリ管理およびタグ管理の基本事項について徹底を図ります。
以上
(別紙−1)水溜まり箇所測定結果(PDFファイル)
(別紙−2)原子炉冷却材浄化系 系統概要図(PDFファイル)
(別紙−3)漏えいに至った過程(PDFファイル)
注1: |
トーラス室とは、非常用炉心冷却系の水源として用いる水を擁する大きなドーナツ状のトンネル(サプレッションチェンバ)を収納する部屋。この形状をトーラス形状ということから、これを収納する部屋をトーラス室と言う。トーラス室にはサプレッションチェンバ以外の配管等も配置されている。トーラス室は原子炉格納容器の下部に、同容器を囲む様に配置される。
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注2: |
バウンダリとは、系統内の原子炉冷却材の流体等を保持し、外へ放出されるのを防ぐために設置されている器壁や管壁となる箇所。点検時に系統の水抜きをする際には、その箇所を境界としている。 |