仙台火力発電所リプレース計画 環境影響評価準備書の概要
1.事業者の名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地
事業者の名称 |
:東北電力株式会社 |
代表者の氏名 |
:取締役社長 高橋 宏明 |
主たる事務所の所在地 |
:宮城県仙台市青葉区本町一丁目7番1号 |
2.対象事業の名称
仙台火力発電所リプレース計画
3.対象事業の目的
仙台火力発電所の既設設備を廃止した上で、地球環境問題への対応と競争力確保のための経済性の両面から、発電燃料を重油及び石炭から天然ガスに変更するとともに、発電効率の高いコンバインドサイクル発電を導入する計画とする。
4.事業計画の概要
(1) 対象事業実施区域
仙台火力発電所構内(宮城県宮城郡七ヶ浜町代ヶ崎浜字前島)
(2) 設備概要等
項目 |
現状 |
将来 |
1号機 |
2号機 |
4号機 |
発電方式 |
汽力発電 |
同左 |
コンバインド
サイクル発電 |
発電規模 |
17.5万kW |
同左 |
44.6万kW |
使用燃料 |
重油・石炭 |
石炭 |
天然ガス |
環境保全対策 |
排ガス |
硫黄酸化物 |
排出濃度:186ppm
排出量:108 m3N/h |
排出濃度:152 ppm
排出量:92 m3N/h |
― |
窒素酸化物 |
排出濃度:300ppm
排出量:170 m3N/h |
排出濃度:260 ppm
排出量:146 m3N/h |
排出濃度:5 ppm
排出量:15 m3N/h
|
ばいじん |
排出濃度:0.15g/m3N
排出量:85 kg/h |
排出濃度:0.15g/m3N
排出量:85 kg/h |
― |
煙突 |
地上高120m |
同左 |
地上高59m |
二酸化炭素 |
0.832kg-CO2/kWh |
0.885kg-CO2/kWh |
0.362kg-CO2/kWh |
冷却方式等 |
海水冷却
冷却水量:約6m3/s
取放水温度差:
約10℃ |
同左 |
海水冷却
冷却水量:10m3/s
取放水温度差:
7℃以下 |
(3) 工事工程(予定)
撤去工事開始 |
:平成19年 9月(予定) |
4号機着工 |
:平成19年 12月(予定) |
運転開始 |
:平成22年 7月(予定) |
5.環境影響評価の項目
環境要因の区分 |
環境要素の区分 |
工事の実施 |
工事用資材等の搬出入 |
窒素酸化物、粉じん等、騒音、振動、主要な人と自然との触れ合いの活動の場 |
建設機械の稼動 |
窒素酸化物、粉じん等、騒音、振動 |
造成等の施工による一時的な影響 |
水の濁り、動物の重要な種及び注目すべき生息地(海域に生息するものを除く)、植物の重要な種及び重要な群落(海域に生育するものを除く)、産業廃棄物 |
土地又は工作物の存在及び供用 |
地形改変及び施設の存在 |
動物の重要な種及び注目すべき生息地(海域に生息するものを除く)、植物の重要な種及び重要な群落(海域に生育するものを除く) |
施設の稼動 |
排ガス |
窒素酸化物、二酸化炭素 |
排水 |
水の汚れ、富栄養化 |
温排水 |
水温、流向及び流速、海域に生息する動物、海域に生育する植物 |
機械等の稼働 |
騒音、振動、低周波音 |
資材等の搬出入 |
窒素酸化物、粉じん等、騒音、振動、主要な人と自然との触れ合いの活動の場 |
廃棄物の発生 |
産業廃棄物 |
6.主な環境保全措置
(1) 排ガスによる影響の低減策
- 天然ガスを燃料とした発電効率が高いコンバインドサイクルプラントの導入により、硫黄酸化物及びばいじんの発生がなく、二酸化炭素の発電電力量当たりの排出量を現状より大幅に低減する。
- 低NOx燃焼器の採用及び排煙脱硝装置の設置により、窒素酸化物の排出量を現状の約1/20(15 m3N/h)と大幅に低減する。[NOx排出濃度:5ppm(O2=16%換算)]
(2) 温排水による海域への影響の低減対策
- コンバインドサイクルプラントの導入により、温排水の放水量を現状の約12m3/sから10m3/sに低減するとともに、取放水温度差を現状の約10℃から7℃以下に低減する。
(3) 景観への影響の低減対策
- 建屋の形状・色彩は、日本建築の代表的な手法である白壁と瓦葺屋根の蔵をイメージし、グレーを基調とする抑制した色彩にするなど、景勝地松島の小島やマツなどの自然環境と調和するよう配慮する。
- 発電設備の中で最も高い煙突は、周辺丘陵の稜線を大きく越えることがなく、「航空法」に基づく昼間障害標識(紅白の彩色)等が不要な高さ59mとする。
- 海側の植栽を追加し、人工構造物を目立たなくする。
(4) その他
- 騒音の発生源となる機器は、可能な限り屋内への設置を図るとともに、屋外に設置する場合には、防音壁や防音カバーの取り付け等の防音対策を実施する。
- プラント排水を処理する総合排水処理装置は、既設設備を撤去し新たに設置することにより、さらなる環境負荷の低減を図る。
- 既設設備を最大限活用する観点から、既設取放水口を有効活用し、海域の工事は行わない。
7.主な予測・評価の概要
(1) 排ガス
年間の気象データ等に基づいて窒素酸化物の着地濃度(年平均値)を予測した結果、発電所の寄与濃度は現状の1/30と大幅に低減し、着地濃度の最大は0.00004ppmと低い濃度になっていることから、環境への影響は少ないものと考えられる。
また、発電電力量当たりの二酸化炭素排出量は0.362kg-CO2/kWhであり、現状の0.832〜0.885kg-CO2/kWhと比べ大幅に低減される。
(2) 温排水
温排水の放水に伴う水温上昇域を予測した結果、海表面の1℃上昇域は現状の3.6km2から2.1km2となり、周辺海域の水温への影響は大幅に低減されるものと考えられる。
(3) 景観
リプレース後は、設備のコンパクト化により視認される人工構造物が大幅に減少するとともに、建屋の形状・色彩を自然環境と調和するよう配慮することから、景観への影響は少ないものと考えられる。
8.環境監視計画
工事中は、工事工程の適切な管理を行い、敷地境界において窒素酸化物、騒音、振動を適宜測定するとともに、仮設排水処理装置出口で水質を監視する。
また、運転開始後は敷地境界で騒音、振動を適宜測定するとともに、総合排水処理装置出口での水質を定期的に測定する。さらに、排ガスの窒素酸化物濃度や復水器出入口における水温を常時監視する。
9.事後調査
これまでの現地調査において、重要種のハヤブサが既設の煙突等をパーチ(止まり)場所等として利用することが確認されている。このため保全措置として、煙突には手摺を設置して、ハヤブサがパーチ可能な構造とする等の対策を講じることとしているが、効果に係る知見が不十分であることから、工事中も含め事後調査を行う。
10.環境影響の総合評価
本計画の推進に当たっては、発電効率の高いコンバインドサイクル発電方式、低NOx燃焼器及び排煙脱硝装置等の採用により大気環境への影響低減を図るとともに、既設設備の流用による工事規模の縮小、コンパクトな構築物とすることによる周辺景観への配慮、工事の実施における大気質、騒音、振動等の対策などにより、環境影響を可能な限り低減する計画とした。
本事業の実施に伴う総合評価としては、実行可能な範囲内で環境影響を回避又は低減しており、国及び地方公共団体が定めている環境基準及び環境目標等の維持・達成に支障を及ぼすものではないことから、本事業のリプレース計画は適正であると評価する。
以上