プレスリリース

別紙

「女川原子力発電所における宮城県沖の地震時に取得されたデータの
分析・評価および耐震安全性評価について(報告その3)」の概要

1.はじめに
 平成17年8月16日に発生した宮城県沖の地震(以下、「今回の地震」という。)の影響により、女川原子力発電所1号機、2号機および3号機が自動停止した。本件に関しては、原子力安全・保安院からの「女川原子力発電所における宮城県沖の地震時に取得されたデータの分析・評価について」(平成17・09・02原院第1号)により、以下の事項について報告するよう求められた。
<指示事項>
  • @ 今回の地震による女川原子力発電所各号機の安全上重要な設備の耐震安全性の詳細評価(以下、「指示事項@」という。)
  • A 今回の地震で観測された観測波の岩盤表面の応答スペクトルが周期によっては基準地震動の応答スペクトルを超えることとなった要因の分析・評価(以下、「指示事項A」という。)
 これらの指示事項のうち、指示事項@については、女川2号機に関する耐震安全性の詳細評価を取り纏め、平成17年11月25日に原子力安全・保安院に報告を行った。また、指示事項Aについては、「女川原子力発電所における宮城県沖の地震時に取得されたデータの分析・評価」を取り纏めるとともに、要因分析結果を踏まえて策定した「想定宮城県沖地震による地震動(想定宮城県沖地震AおよびB)」および「限界的なプレート境界地震および最大規模のスラブ内地震を踏まえた地震動(安全確認地震動)」に対する女川2号機に関する耐震安全性評価を取り纏め、同じく平成17年11月25日に原子力安全・保安院に報告を行った。
 この女川2号機に関する報告書については、総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部会 耐震・構造設計小委員会にて検討され、その結果、平成17年12月22日に、原子力安全・保安院より、「女川2号機報告書の報告内容が妥当と評価されること」および「女川2号機の耐震安全性が確保されていること」が確認されたとの通知を受けた。
 また、女川3号機については、指示事項@のうち「女川3号機に関する耐震安全性の詳細評価」、および「女川2号機報告書にて策定・報告している想定宮城県沖地震A、B、および安全確認地震動による女川3号機の安全上重要な設備(建屋、機器)ならびに地盤の耐震安全性の評価」を取り纏め、平成18年1月20日に原子力安全・保安院に報告を行った。その結果、平成18年3月1日に、原子力安全・保安院より、「女川3号機報告書の報告内容が妥当と評価されること」および「女川3号機の耐震安全性が確保されていること」が確認されたとの通知を受けた。

 このたび、指示事項@のうち「女川1号機に関する耐震安全性の詳細評価」、および「女川2号機報告書にて策定・報告している想定宮城県沖地震A、B、および安全確認地震動による女川1号機の安全上重要な設備(建屋、機器)ならびに地盤の耐震安全性の評価」を取り纏め、報告するものである。

 また、女川1号機は、今回の地震を経験したこと、および運転開始後約22年を経ていることに鑑み、念のため、耐震安全性評価において考慮すべき経年化の影響評価を行ったことから、その結果についても合わせて報告するものである。
2.指示事項@「今回の地震による女川原子力発電所各号機の耐震安全性の詳細評価」に対する報告
 今回観測された地震データを用いて、女川1号機の安全上重要な設備(建屋、機器)について評価した結果、建屋については地震応答解析により求められた各層のせん断変形角*1は壁のひびわれが発生する変形角の値以下であり、また機器については基準地震動S1に対する許容値*2以下であり、弾性範囲にあることから、耐震安全性は確保されていることを確認した。
3.女川1号機の耐震安全性評価(想定宮城県沖地震A、Bならびに安全確認地震動に対する女川1号機の耐震安全性評価)
  • (1)想定宮城県沖地震AおよびBに対する女川1号機の安全上重要な設備(建屋、機器)の耐震安全性の評価
     想定宮城県沖地震AおよびBを用いて、女川1号機の安全上重要な設備(建屋、機器)について評価した結果、建屋については地震応答解析により求められた各層のせん断変形角は壁のひびわれが発生する変形角の値以下であり、また機器については基準地震動S1に対する許容値以下であり、弾性範囲にあることから、耐震安全性は確保されることを確認した。


  • (2)安全確認地震動に対する女川1号機の安全上重要な設備(建屋、機器)および地盤の耐震安全性の評価
     安全確認地震動について、女川1号機の安全上重要な建屋および安全上特に重要な機器の耐震安全性評価を実施した結果、建屋については地震応答解析により求められた耐震壁のせん断変形角は終局状態に対する許容限界値を下回っており、また機器については基準地震動S2に対する許容値*3を下回っていることから、安全機能が維持されることを確認した。
     さらに、原子炉建屋基礎地盤についても十分な支持力を有するとともに、すべりに対する抵抗力も有しており、また沈下量も小さいことから、安全確認地震動に対して、耐震安全性は確保されることを確認した。
4.経年化の影響評価
  • (1)設備診断調査
     女川1号機では、これまでも定期的な点検・検査等において、超音波探傷検査によるひびの有無、配管肉厚測定による減肉状況等の確認を実施しており、適切な保全活動を展開してきたところであるが、念のため、主に安全上重要な設備について、定期的な点検範囲から拡大した部分も含めた設備診断調査を実施し、特に問題のないことを確認した。

  • (2)解析評価
     これまでの定期的な点検・検査等において確認されている、安全上重要な機器についての耐震安全性評価上の影響が考えられる事象としては、炉心シュラウドのひびおよび安全上重要な設備の配管の一部の僅かな減肉傾向がある。
     また、今回の地震に鑑み、設備診断調査において、他にも耐震安全性評価上の影響が考えられる事象が発生していないかを確認したが、新たな事象は認められなかった。
     以上のことから、炉心シュラウドおよび安全上重要な設備の配管について解析評価を行った。
    a.炉心シュラウドの評価

     女川1号機の炉心シュラウドについては、特殊設計施設認可において、ひびの進展や、ひびのある状態での構造健全性を評価しているが、現在推定されるひび深さに対して今回の地震による解析評価を行い、耐震安全性が確保されていることを確認した。また、保守的に特殊設計施設認可での管理値に相当するひび深さを仮定し、その深さに対して想定宮城県沖地震および安全確認地震動による解析評価を行い、耐震安全性が確保されることを確認した。


    b.安全上重要な設備の配管の評価

     安全上重要な設備の配管の一部に、僅かな減肉傾向が認められている。これらの配管は、必要最小肉厚に対して十分な余寿命を有することが確認されており、有意な減肉とは認められないが、念のため減肉傾向が認められている配管のうち、最も余寿命の短い残留熱除去系配管について、その配管の肉厚が必要最小肉厚まで減肉したと仮定し、今回の地震、想定宮城県沖地震および安全確認地震動による解析評価を行い、耐震安全性が確保されることを確認した。

5.まとめ
 今回の地震に対し、女川1号機の安全上重要な設備について評価を実施した結果、耐震安全性は確保されていることを確認した。
 設備の耐震安全性を確認するための地震動として、宮城県沖近海のプレート境界に発生する地震の地域特性および最新の知見を考慮して策定した、想定宮城県沖地震による地震動(想定宮城県沖地震A、B)と安全確認地震動に対し、女川1号機の安全上重要な設備および地盤について、評価を実施した結果、耐震安全性は十分確保されることを確認した。
 また、女川1号機が今回の地震を経験したこと、および運転開始後約22年を経過したことに鑑み、経年化の影響評価を実施した結果、特に問題のないことを確認した。

以上


*1: せん断変形角は、地震によって建屋の各階に生ずる変形量のうち、せん断力による変形の指標であり、基準面からのずれの大きさを角度で表したもの。
*2: 基準地震動S1に対する許容値は、基準地震動S1−Dを想定しても安全上重要な設備が耐える(塑性変形を起こさない)よう設定した許容値。
*3: 基準地震動S2に対する許容値は、基準地震動S2−DとS2−Nを想定しても安全上重要な設備の安全機能が保持できる(過大な変形を起こさない)よう設定した許容値。


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