プレスリリース

新潟県内の停電の原因と再発防止対策について

平成18年1月13日

 平成17年12月22日に新潟県内の下越地方を中心に発生いたしました暴風雪等の影響に伴う停電では、大変寒い中、多くのお客さまに長時間ご迷惑をおかけしましたことを心よりお詫び申しあげます。

 12月22日8時10分頃から新潟県内の下越地方を中心に、最大で約65万戸の停電が発生いたしましたが、県外の当社事業所や関連会社、協力会社ならびに他電力の応援など約2,000名体制で、送電線、配電線の系統の切り替えや送電線の絶縁用がいしに付着した塩分の除去、電源車の投入など、総力をあげて復旧に取り組み、23日15時10分、全ての停電が復旧いたしました。

 停電発生以来、停電が広範囲に及んだ原因究明のための現地調査や再発防止対策の検討を行ってまいりましたが、このたび、現地調査により発見した故障個所の状況や、雪のサンプルデータの分析などから明らかとなった原因と、これらの原因を踏まえ策定した、再発防止対策について取りまとめましたので、以下のとおりお知らせいたします。

1.停電の原因

(1)停電時の気象

 停電が発生した12月22日午前は、−40℃以下の非常に強い寒気が日本海上空に張り出しており、さらに、太平洋側および日本海側には低気圧が存在しておりました。この影響で、新潟県下越地方には多量の降雪を伴う台風なみの強風が吹いておりました。
 また、22日未明から、着雪が起こりやすいとされる0〜2℃程度の気温(着雪適温帯)が長時間継続しておりました。
 このように着雪適温帯で非常に強い風が長時間にわたって吹いたことに加え、多くの降水量(降雪)があったのは、新潟地方気象台の30年間の気象データによれば過去に類例がないものであり、送電設備にとってはこれまで経験したことのない極めて過酷な気象状況でありました。(別紙1(PDFファイル)

(2)広範囲停電の原因

 今回の停電は、新潟変電所(五泉市)に接続する多重化された送電線のがいしへの塩雪害※1により、これまで経験したことのないような複数回の故障が同時に生じ、さらに復旧を補うため北新潟変電所(聖籠町)から新潟市方面に供給すべく使用していた送電線もギャロッピング現象※2により故障し、広範囲長時間停電に至りました。(別紙2(PDFファイル)
 一部地域については倒木による配電線断線などの故障が発生し、復旧に時間を要しました。

(3)がいしへの塩雪害

 15万4千ボルト以下の送電線については、新潟変電所を起点とする送電線(北新潟線、中新潟線、西新潟線など)を中心に多数の送電線で同時に絶縁低下が発生しました。
 この原因は、送電線のがいしに付着した雪のサンプル調査において、海水と類似した成分が観察されたことから、海塩粒子を含む雪が送電線のがいしに付着し表面を覆い絶縁が保てなくなったことによるものと判断いたしました。(別紙3(PDFファイル)別紙4(PDFファイル)
 なお、送電線に付着した雪の除去とがいしの清掃作業を終えるまで、送電を行うことができず、最終復旧までに長時間を要しました。

(4)ギャロッピング現象

 送電線の故障個所を調査した結果、27万5千ボルト送電線2ルート(北新幹線、東新潟火力B線)他において、電線どうしの接触や接近によるショートの痕跡を複数発見しました。一部送電線については、停電発生直後の現場パトロールにおいて、当社社員が実際に電線の異常動揺を確認していること、また、当時の気温や風向などが、電線の異常動揺を生じやすいとされる気象条件※3と合致していることなどから、この送電線における故障は、強風下での電線着雪によるギャロッピング現象が原因であると特定いたしました。(別紙5(PDFファイル)
 なお、当日は、日本海に発生した小低気圧の通過により、強風が長時間継続し、7時前から発生した電線動揺が17時頃に収まり、その後再送電したため系統復旧に長時間を要しました。

2.再発防止対策

(1)設備面の対策

a.塩雪害対策(別紙6(PDFファイル)

 本格対策として、がいしへの塩雪害が発生した15万4千ボルト以下送電線については、今回の原因に基づき、懸垂がいしの難着雪効果を実証試験で確認した上で懸垂がいしを雨洗効果の高い既設の長幹がいしと併用し、種々の過酷な気象に対してより信頼性を高めてまいります。対策については、多数の線路にわたり物量も多く停電などの作業調整が必要となることから、順次計画的に行い、平成19年11月完了を目途に工事を進めます。
 なお、暫定対策として、新潟変電所を起点とする送電線(北新潟線、中新潟線、西新潟線)のがいし表面に、有効期間はあるものの撥水性が高く難着雪効果が期待できるシリコーン塗布を進めております。

b.ギャロッピング対策(別紙7(PDFファイル)

 ギャロッピング現象による故障が発生した多導体※4の27万5千ボルト送電線については、従来のスペーサを、片側電線保持部が自由に可動することにより揚力特性が変化しギャロッピングを抑制するルーズスペーサに取替え、また単導体※5の15万4千ボルト以下送電線については電線間を把持し電線どうしの接近を防止する相間スペーサを設置するなどの対策を行います。
 これらについては、故障個所周辺や類似個所などを優先的に実施しながら、計画的に工事をすすめ、平成18年11月までに完了いたします。

(2)運用面の対策

a.北新潟変電所の送電系統運用の変更

 これまでは、新潟市および周辺地域への電力需要に対しては、主に新潟変電所を起点とする送電線3ルートにより供給しておりました。また、今後の電力需要の増加等に対応して、同地域の安定供給のために、新潟変電所と北新潟変電所との二方向からの供給を行うこととし、北新潟変電所の変圧器の増強工事を6月の運用開始で進めておりました。今回の塩雪害による送電線故障を踏まえ、増強工事の運用開始を2ヵ月程度繰上げることとします。なお、増強工事が終了するまでは、東新潟火力発電所の出力を制限しながら二方向供給を行い、安定供給に努めてまいります。

b.気象情報および観測データを活用した電圧低め運転(別紙8(PDFファイル)

 送電線のがいしは、通常の電圧よりも高い電圧でも絶縁性能を保つ余裕を持った設計としておりますが、がいしに塩分が付着すると絶縁性能が低くなり、耐電圧(絶縁性能が保てる限界電圧)が低下します。当社では、従来から、新潟県の日本海側12個所のアメダスデータ、変電所での塩分測定データ、および現地情報を勘案して、電圧の低め運転を実施しておりましたが、今後は、暴風雪警報発令などの新たな条件を付加して、塩雪害の発生をより確実に防止できるよう電圧低め運転を実施いたします。

(3)体制面の対策

a.送電線保守体制の強化

 送電線の保守体制の強化策として、ギャロッピング対策や塩雪害対策が完了するまでの間、暴風雪警報が発令された場合、送電線保守部門による予防巡視を行い、現地送電線の状況把握を実施するとともに、送電線保安要員および工事会社との連絡体制を確認し停電発生時の即応体制を確立いたします。

 以上の対策を講じることで、より一層の信頼度が確保され安定供給が図れるものと考えております。
 なお、今回の新潟県下越地方の暴風雪等の影響による停電を踏まえ、当社管内地域全体への対策の適用について検討を進めることといたします。

以上

※1.塩雪害

 海塩粒子などを含む雪ががいしなどに付着し絶縁が低下しアースする現象。

※2.ギャロッピング現象

 電線に翼状となった雪が付着することで、強風下で電線の振動が大きくなる現象。気象条件や送電線路の経過地など様々な条件が重なったときに起こる現象。

※3.電線が異常動揺しやすい気象条件

  • 気温:0〜2℃(着雪適温帯)
  • 風速:5m/秒以上(10分間平均)
  • 風向き:層流(規則正しい空気の流れ)に近い状態で、送電線に対し45度以上の角度であたること

※4.多導体

 1相の導体として2本以上の電線を適当な間隔に配置し、組み合わせたもの。

※5.単導体

 1相の導体として1本の電線を使うもの。

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