平成15年7月29日
当社はこのほど、国土交通省東北地方整備局との共同研究により、火力発電所から発生する石炭灰(クリンカアッシュ)と、不良土と呼ばれる建設工事で発生する水分を多く含んだ土を混合し、道路盛土材として有効利用する土質改良技術を開発しました。
当社では循環型社会の形成を目指して廃棄物の発生抑制、有効利用、リサイクル等に積極的に取り組んでいます。その一環として、石炭火力発電所から発生する石炭灰についても有効利用を図っています。
発生する石炭灰には、フライアッシュと呼ばれる電気集じん器で集めた微粉末の灰と、クリンカアッシュと呼ばれるボイラーの底に溜まる灰の塊を回収して脱水・粉砕した灰があります。発生量の9割程度を占めるフライアッシュについては、ほぼ全量をセメント原料やセメント混和材などに有効利用していますが、クリンカアッシュは、半量程度は土地造成材として利用しているものの、残りは埋立処分しています。
このため当社では、廃棄物処分量の更なる低減に向けて、クリンカアッシュについても有効利用拡大を目指してきました。一方、国土交通省東北地方整備局では、現在は廃棄処分を行っている不良土の利用方法について課題を抱えており、こうした双方のニーズが合致したことから、平成12年度より共同研究を行ってきたものです。
クリンカアッシュには、吸水性・透水性等に優れているという特長があります。共同研究ではこの点に着目し、クリンカアッシュと不良土を混合することにより、水を多く含んだ不良土の土質を改良し、道路の盛土材として利用することを目的に研究を進めました。
まず第一に、混合方法の違いにより、含まれる水分量に差が生じないか試験を行いました。直接混合する方法、サンドイッチ状に積み重ねた後に混合する方法のどちらにおいても水分量に大きな変化が認められなかったことから、実用的・経済的な直接混合を行う方法を選定しました。
次に、道路敷設時と同様の盛土施工を行い、日数の経過に伴う土質改良効果の試験を行いました。建設工事で発生する不良土には、粘性土と水分をより多く含んだ浚渫土があることから、この異なる性質の土に、3種類の量のクリンカアッシュを混合し、道路盛土材として利用可能な基準を満たすか確認しました。結果は、いずれのケースにおいても土質が改良される効果があり、特にクリンカアッシュの混合割合が高いほど短期間で土質が改良され、道路の盛土材として利用が可能となることが分かりました。
このように、クリンカアッシュの土質改良材としての有効性が確認されたことから、国土交通省東北地方整備局では、新道路技術5ヵ年計画の一環として、産学官で構成した「ゼロエミッション社会を目指す技術開発委員会」において、平成15年3月に「道路盛土における石炭灰と建設発生土利用ガイドライン(案)」をとりまとめ、直轄工事等で活用していく方針としており、すでに、本土質改良技術の導入実績もあります。
当社としても、クリンカアッシュの利用用途が拡がり有効利用が促進されるとともに、埋立処分を行う場合と比較して、費用面での効率化につながる可能性もあることから、今後の導入拡大を期待しているところであります。
当社では、環境問題に対する関心が高まっている中、環境問題を公益的課題の一つと位置付け、これまでも環境活動を積極的に展開しています。こうした中、平成13年度からは中期環境行動計画を策定し、環境問題に先見的な対応を図っており、今後とも、さらなる環境意識、環境活動の向上に積極的に取り組んでいくこととしています。
なお、今回の共同研究の概要は別紙のとおりです。
以上
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