プレスリリース

9月定例社長記者会見概要

平成26年 9月25日

○海輪社長からの説明事項
 本日もお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。

 本日、私からは、「今夏の電力需給の実績」と「当社原子力発電所における新規制基準適合性審査の状況」についてご説明いたします。

 

○今夏の電力需給の実績について

 まず初めに、今夏の電力需給の実績につきましてご説明いたします。

 詳細な説明に入ります前に、この夏の電力需給について概括的に申し上げますと、今夏、当社管内におきましては、電力需給が逼迫するような状況には至りませんでした。その要因は大きく3つございます。

 一つ目は、ご承知のとおり、この夏、特に8月に入ってから、全国的に不順な天候が続き、気温がそれほど上がらなかったということです。

 二つ目は、当社の需給対策により、最大限の供給力を確保するとともに、設備パトロールの強化等により、火力電源の大きなトラブル等がなかったことです。

 そして三つ目は、引き続きお客さまに節電にご協力いただいたことであります。これらによって、この夏も安定供給を果たすことができました。お客さまのご協力に冒頭感謝申し上げます。

 

 今夏、東北地域においては、7月は梅雨前線の影響が小さく、高気圧に覆われて晴れの日が多くなりました。また、7月25日の梅雨明け以降から、本格的に気温が高くなりました。一方、8月に入りますと、太平洋高気圧の張り出しが弱く、湿った気流の影響を受けやすい状態が続いたため、曇りや雨の日が多くなるなど、中旬以降は平年を下回る気温となりました。

 このように、今夏において比較的気温が高い日が続いたのは、梅雨が明けた7月末から8月初旬までのわずかな期間であり、今夏の最大電力は、8月5日に記録した1,360万kWとなりました。なお、この日の当社管内7都市平均の最高気温は33.2℃でありました。

 

 今夏の最大電力の想定値と実績値の差異についてご説明いたします。

 今夏8月の最大需要の想定につきましては、平成22年並みの猛暑となった場合、1,445万kW程度を見込んでおりました。これに対し、今夏の実績は、先ほど申し上げましたとおり、1,360万kWとなり、想定を85万kW程度下回る結果となりました。
 この要因といたしましては、猛暑想定を下回ったことによる気温影響として68万kW程度、節電にご協力いただいた効果として12万kW程度、そのほか、景気影響などで5万kW程度の影響があったものと試算しております。

 なお、節電の取り組みにつきまして、当社ではお客さまに無理のない範囲でのご協力をお願いしてきており、既に需要想定の段階から64万kWの節電を織り込んでおりましたので、実際の節電効果としては76万kW程度あったものとみております。昨年夏の節電効果は約80万kWでありましたことから、お客さまにはこの夏もこれまでと変わらぬ節電の取り組みにご協力いただいたものと受け止めております。重ねて御礼申し上げます。

 続いて、この夏の最大電力を記録した8月5日の供給力の状況について申し上げます。

 8月5日の供給力は1,586万kWであり、供給力から需要を差し引いた予備力は226万kW、予備率は16.7%の実績となりました。

 1,586万kWの供給力は、火力発電所の定期点検時期の繰り延べ・調整、自家発からの余剰電力の購入、火力の増出力対応、長期計画停止火力発電所の継続運転、緊急設置電源の活用など、当社として今夏も最大限の取り組みを積み重ねた結果、確保することができたものであります。

 

 次に、夏季需給対策強化期間における当社の取り組みについてご説明いたします。

 震災以降、当社火力発電所は定期点検時期の繰り延べ・調整をしながら高稼働で運転を続けておりますが、安定運転を継続し、お客さまに電気を安定してお届けするためには、不具合の兆候を早期に把握することが何よりも重要であります。

 冒頭申し上げましたとおり、当社火力発電所では、需要ピーク時期に備えて、事前の点検・補修に万全を尽くすとともに、設備トラブルの未然防止に向けて、設備パトロールの実施頻度を増やして対応いたしました。このほか、現場計器へのマーキングやサーモビジョンを活用するなど、不具合の見える化による現場機器の巡視点検強化や、運転データの管理・監視強化を図ってまいりました。

 こうした取り組みによりまして、今夏においても火力発電設備の緊急停止を伴う大きなトラブルの発生は回避することができました。一方で、緊急停止には至らないまでも、軽微な不具合などによる計画外の停止や出力の抑制を行った事例は7月から9月の間で18件ほどあり、補修が必要な場合は、需要が低い時間帯に行うなど適切に対応いたしました。

 また、他社の設備になりますが、8月6日には当社が受電しております相馬共同火力発電の新地発電所2号機(当社受電分47万kW)がトラブルのため運転を停止いたしました。幸い気温が高くならなかったために需給逼迫には至りませんでしたが、夏場を通して予断が許されない需給状況が続きました。

 さらに、ベースとなる原子力が稼働していない中で、経年化した火力発電所の高稼働状態が続いておりますが、設備の信頼度の面から、いつまでも続けられるものではありません。また、経年化した火力設備は、新鋭プラントに比べ経済性が低いことから、高稼働を続けていくことはコストアップ要因にもつながります。したがって、この夏の需給は何とか乗り切ることができましたものの、現在の供給力は決して万全ではなく、安全を大前提とした原子力の再稼働が必要であると認識しております。

 

 なお、9月30日をもちまして、「夏季需給対策強化期間」は終了いたしますが、当社としては、引き続き緊張感を持って設備の運転、保守にあたり、安定供給に全力を尽くしてまいりたいと考えております。

 

 

○当社原子力発電所における新規制基準適合性審査の状況について

 続きまして、当社原子力発電所における新規制基準適合性審査の状況についてご説明いたします。

 皆さまもご承知のとおり、9月10日、原子力規制委員会において、九州電力川内原子力発電所1、2号機の審査書が了承されました。川内1、2号機については、優先的に審査が進められ、これが一区切りを迎えた7月以降、当社を含めた現在審査中のプラントの適合性審査も本格化してきておりますので、ここで、これまでの当社の審査の状況をお話しさせていただきます。

 まず、当社女川2号機につきましては、昨年12月に申請して以降、これまでに10回、審査会合が開催されております。また、今年6月に申請を行いました東通1号機につきましては、敷地内破砕帯に関わる有識者会合と並行して、これまでに2回、審査会合が開催されております。

 

<東通敷地内断層評価会合>

 なお、東通の敷地内破砕帯に関する有識者会合につきましては、9月11日に第10回目の評価会合が開催されました。
 当日の会合では、「有識者の意見は概ね一致している」というような整理がされましたが、私どもとしては、必ずしもそうではないと受け止めております。

 例えば、F−3断層の横ずれの可能性に関して、一部の有識者から疑問が示されておりました。また、第四系変状の成因は岩盤劣化部の体積膨張であるとする当社見解については、有識者の間で見解が二分していたと思っております。その他、主要な論点についても、有識者の間で意見は完全に一致している状況になく、さらに議論を尽くす必要があると考えております。

 当社は、東通の敷地内断層について、大規模かつ精緻な地質調査を行い、得られた膨大なデータをもとに、敷地内断層の活動性はないと評価しております。次回会合には当社の出席が認められておりますので、当社見解に理解が得られるよう説明を尽くしてまいりたいと考えております。

 

<審査の状況>

 それでは、女川2号機の審査の現状についてご説明いたします。

 原子炉設置変更許可申請に係る適合性審査は、地震や津波といった自然現象から重大事故対策に至るまで、大括りで9つの項目について審査が行われることになっております。

 女川2号機は、現在、「地震」、具体的には、施設の安全性や安全対策の有効性を確認するうえでの前提となる敷地周辺の活断層評価や、確率論的リスク評価による重大事故シナリオの評価、あるいは格納容器破損防止に係る原子炉格納容器圧力逃がし装置(フィルタベント)などについて審議が進められている状況です。

 一方、東通1号機につきましては、これまで、敷地内破砕帯に関わる有識者会合と並行して、2回の審査会合が行われたほか、他社プラントと共通する項目につきましては、ヒアリングが継続的に行われているところでございます。

 

<安全性向上に向けた基本的な考え方>

 次に、当社の原子力発電所の安全性向上に向けた取り組みの基本的な考え方として、安全対策の基本思想と適合性審査に関わる基本姿勢をご説明いたします。

 安全対策に関しての基本思想につきまして、まず、当社は、事故は起こりうるという立場から、「深層防護」と「対策の多様化・多重化」を重視して、ハード・ソフト両面から様々な安全対策に取り組んでいるということです。これは、万一の事故が発生した場合も想定して、事故の進展段階に応じた対策を講じるとともに、各段階の対策を二重、三重に準備することで、事故の発生や進展を初期段階で食い止めるという思想であります。

 さらに、新規制基準の要求を満足すればよいということではなく、自主的かつ継続的に安全性の向上に取り組んでまいります。

 次に、適合性審査に関わる当社の基本姿勢でありますが、まず一つには、当社の安全対策が新規制基準に適合していること、あるいはその根拠等について、審査の中で丁寧に、真摯に説明を尽くしてまいりたいと考えております。

 そのうえで、他社の審査動向も含め、規制委員会との科学的な議論や最新知見に基づく評価を通じて、当社プラントにとって安全性向上の観点から重要であると判断した対策についても、新たに対応していくということです。

 既に様々な安全対策を実施あるいは計画している中において、新たな対策を組み入れることによって、原子力施設全体の安全性にどのように寄与していくのかという視点も重要になります。したがいまして、こうした取り組みにつきましては、審査の中で規制委員会と十分かつ建設的な議論を交わしながら適宜判断を行ってまいります。当社としては、こうした安全性に関する科学的な議論を通じて、より確実な発電所の安全確保を図ってまいりたいと考えております。

 

<安全対策工事>

 これらの具体例として、女川の防潮堤については、想定津波高23.1mに対して、約6mの裕度を確保して高さ約29mとし、かさ上げ工事を実施しております。これまでに、地盤改良工事等が終了し、平成28年3月までの完成を目指して、現在、鋼管杭の打ち込み作業を実施しております。

 また、フィルタベントの例では、当初の設計に加えて、さらに可能な限り被ばく量を低減するため、装置内に放射性よう素除去フィルタを追加設置することといたしました。

 このように、準備が整ったものから着々と工事が進んでいること、また、審査の進捗とともにそれぞれの設備等の設計も進んできたことから、原子力発電所の安全対策工事に係る費用につきまして、あくまで大枠ではありますが、ある程度の数字の規模感をお示しできる状況となりました。

 女川と東通の2つのサイトをあわせた安全対策工事費は、平成30年7月までに設置が義務付けられている特定重大事故等対処施設を除いて、現時点で、3千数百億円程度の規模感となる見通しであります。

 こうした安全対策工事は、ご案内のとおり、既設の原子力発電所を対象とした工事となりますので、建設段階で実施した場合に比べれば、追加的な工事費が発生することになります。

 加えて、当社の安全対策工事費のおおよそ3分の1程度が、地震・津波対策になるというサイト固有の特殊性があります。これは、当社が得た東日本大震災時の女川の経験や福島第一原子力発電所事故の教訓から、特に太平洋側に位置する女川と東通を守るためには、何よりも地震・津波への備えに万全を期す必要があると考え、特段の力を入れていることによるものです。

 当社といたしましては、今後とも安全を最優先に、新規制基準適合性審査への対応や安全対策工事を着実に実施していくとともに、最新の知見を踏まえ、発電所のさらなる安全性向上に向けて継続的に取り組んでまいります。

 

 本日、私からは以上です。

 

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