原子力情報 The information of Nuclear Power

東通原子力発電所1号機 非常用ディーゼル発電機(B)の定期試験における停止に係る原因と対策について

平成27年 3月13日

【事象の経緯】

 東通原子力発電所1号機(平成23年2月6日より第4回定期検査中)において、平成26年12月24日10時26分頃、非常用ディーゼル発電機※1(B)を定期試験のため起動したところ、発電機の回転数の低下が確認されたため、同日10時40分に、非常用ディーゼル発電機(B)を手動で停止いたしました。

 点検調査のため、当該ディーゼル発電機を起動させたところ、燃料の供給を遮断する過速度停止装置※2がわずかに動作したことにより、発電機の回転数低下が生じていることを確認しました。

 このため、過速度停止装置を点検した結果、当該装置を動作させるガバナレバーとパイロット弁が接触し、必要な間隙がない状態であることを確認しました。
 その後、過速度停止装置が適切に動作するように、ガバナレバーとパイロット弁の間隙の調整を行ったところ、異常なく運転することを確認したことから、当該ディーゼル発電機は、平成27年1月6日21時19分に待機状態※3となり、復旧しました。

 本事象による排気筒モニタ、排水モニタ、モニタリングポストに異常な変化はなく、この事象による発電所周辺への放射能の影響はありません。

 また、本事象は、「東通原子力発電所におけるトラブル等対応要領」に基づくB情報に該当する事象であり、法令や安全協定に基づく連絡・報告事象ではありません。

平成26年12月25日平成27年1月7日お知らせ済み)

 

【原因調査の状況】

 ガバナレバーとパイロット弁の間隙調整の記録を確認したところ、発電所運転開始前の平成17年11月に実施して以降、今回の事象発生まで間隙調整を実施していないことを確認しました。

 また、原因調査として、パイロット弁の分解点検を実施したところ、パイロット弁の押し棒※4とそれを覆うキャップの摺動面に腐食があること、ならびにパイロット弁シート部ゴムが変形、硬化していることを確認しました。

 

【事象発生の推定原因】

 原因調査の結果を踏まえ、今回の事象は、ガバナレバーとパイロット弁を動作させる押し棒との間に必要な間隙がない状態となっていたこと、およびシート部ゴムの経年劣化によりシート部の密閉性が低下した状態で、非常用ディーゼル発電機の起動により、押し棒がやや押し込まれ、停止ピストン作動用の空気がわずかに漏れて供給されたことにより、停止ピストンが作動し、発電機の回転数が低下したものと推定しました。詳細については、以下のとおりです。

 

  • 発電所の運転開始前に実施したパイロット弁の分解点検後に、ガバナレバーとパイロット弁の間隙調整を実施した。しかし、押し棒を覆うキャップの摺動面に腐食個所があったため、押し棒がこの腐食個所に引っ掛かり、適正位置よりも押し棒が押し込まれた状態で間隙調整が実施された。
  • その後の定期点検等でパイロット弁を動作させた際に、腐食部分の引っ掛かりが解消されたことで、押し棒とガバナレバーとの間に必要な間隙が無い状態となった。
  • さらに、パイロット弁シート部のゴムが経年劣化により変形、硬化し、シート部の密閉性が低下していた。
  • この状態で、非常用ディーゼル発電機が起動し、ガバナレバーがわずかに動作したことで、押し棒がやや押し込まれ、パイロット弁から停止ピストンを作動させる空気がわずかに漏れて供給された結果、停止ピストンが作動し、発電機の回転数が低下した。

 

【再発防止対策】

  • 適切な間隙を確保するため、発電所の定期検査毎にガバナレバーと押し棒およびキャップとの間隙を確認するとともに、パイロット弁の動作確認を実施する。
  • パイロット弁の定期的な交換により、パイロット弁シート部ゴムの経年劣化に伴うシート部の密閉性低下を予防する。

 

 なお、東通および女川原子力発電所において、当該ディーゼル発電機以外の発電機で、回転数が低下する事象は確認されておりませんが、同様の再発防止対策を実施してまいります。

 

以上

 

※1 外部電源が失われた場合に、原子炉の停止や原子炉および使用済燃料プール等の冷却に必要となる電源を供給する設備。

 

※2 ディーゼル発電機の回転数が設定回転数を超えた場合に、ディーゼル発電機を停止させるための装置。

 

※3 原子炉施設保安規定に基づき、常時、運転が可能な状態にしておくこと。

 

※4 ガバナレバーにより押し込まれることでパイロット弁を開き、停止ピストンを作動させる空気を供給するためのパイロット弁の構成部品。

 

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