当社女川原子力発電所1号機では、原子炉格納容器内の放射線量などを測定する装置(以下、「格納容器内雰囲気モニタ※1」という。)について、その機能の一つである格納容器内の酸素濃度を測定する検出器の校正作業を毎月1回の頻度で実施しています。平成22年10月4日に実施したこの月例作業中に、本来、選択するべき酸素濃度を測定する検出器ではなく、誤って放射線量を測定する検出器を操作し、測定を停止したことから、同日午前10時01分、格納容器内の放射線量の測定ができなくなりました。
その後、校正作業を中止し、直ちに作業前の状態に戻したことから、10時03分に放射線量を測定できる状態となりました。
格納容器内雰囲気モニタには、A系とB系の2つがありますが、B系の放射線量を測定する機能は故障中※2であったため、今回校正作業を行おうとしたA系のみで測定していました。
2つの系統のうち1つが動作可能であれば運転上問題はありませんが、B系の測定機能故障に加え、今回の操作誤りによりA系も一時的に放射線量を測定することができなくなったものです。当社は格納容器内の放射線量の測定ができなくなった午前10時01分から10時03分までの間については、発電所の運転の際に実施すべき事項などを定めた保安規定で求められている運転上の制限※3を満足しない状態であったと判断しました。
なお、本事象により排気筒モニタ、放水口モニタ、モニタリングポストに変化はなく、発電所周辺への放射能の影響はありませんでした。
(平成22年10月4日お知らせ済み)
その後、この事象が発生した原因について調査を行い、再発防止対策をとりまとめました。
1.事象発生の原因
(1)作業員の操作および操作確認に係る原因
点検作業は、操作担当の作業員と操作確認を担当する作業員の2名で行っていた。
操作担当の作業員は、作業手順書の各項目に記載された個々の操作について、十分な確認をしなかったため、本来、選択すべき酸素濃度測定検出器が選択されず、操作盤の選択状態を示す画面も十分に確認しなかった。
確認担当の作業員は、作業手順の大まかな確認は行っていたが、作業手順書に記載された個々の操作内容と実際の操作状況を対比して確認することまでは行っていなかった。
(2)作業手順書の記載内容に係る原因
作業手順書には、複数の操作の手順が1項目にまとめて記載されており、「一つの操作に対して一つの手順」という記載になっていなかった。また、操作の実施結果を記載する確認欄もなかった。一つの手順毎に結果を確認してから次に進むという手順になっていなかったため、確認が十分にできない内容だった。
2.再発防止対策
(1)作業員の操作および操作確認に係る対策
当該協力会社に対して、以下の再徹底を指示した。
b.作業員毎の役割分担を明確に定め、操作を担当する作業員、確認を担当する作業員などそれぞれの役割を十分に確認した上で作業を開始する。
(2)作業手順書の記載内容に係る対策
運転上の制限への影響が考えられる作業について、その旨を作業手順書へ明記するとともに、以下のとおり見直す。
a.作業手順書への記載は、「一つの操作に対して一つの手順」という記載となるように内容を見直す。
b.作業手順書に操作手順に対する実施結果を確認する欄(チェック欄)を追加する。
なお、本事象が発生した経緯および原因と再発防止対策については、発電所の当社社員ならびに当該協力会社を含む全ての構内協力会社へ対して周知し、注意喚起することにより再発防止に努めていくとともに、今回策定した再発防止対策が定着するまでは、作業時における当社社員の立ち合いにより実施状況を確認してまいります。
以 上
※1 格納容器内雰囲気モニタ
※2 B系の放射線量を測定する機能の故障
平成22年7月より格納容器内雰囲気モニタの放射線量を測定する機能(放射線検出器)の測定値が通常よりも低い値を示していたため故障と判断していたもの。
なお、放射線検出器はA系、B系の2つのうち1つで測定をすることができれば保安規定で要求している運転上の制限は満足している。
※3 運転上の制限
安全機能を確保するため、予備も含めて動作可能な機器(ポンプ等)の必要台数や、原子炉の状態毎に遵守すべき温度や圧力の制限を定めているものであり、保安規定第27条は、計測および制御設備の要求事項について定めたもの。
格納容器内雰囲気モニタが動作不能となった場合には、30日以内に動作可能な状態に復旧することと定めている。
(参考)
事象発生時の女川原子力発電所(宮城県牡鹿郡女川町、石巻市)の運転状況
1号機(定格電気出力52万4千kW)定格熱出力一定運転中
2号機(定格電気出力82万5千kW)定格熱出力一定運転中
3号機(定格電気出力82万5千kW)平成22年7月29日から定期検査中