当社女川原子力発電所1号機(沸騰水型、定格電気出力52万4千kW:宮城県牡鹿郡女川町、石巻市)については、定格熱出力にて運転中でありますが、7月15日、原子炉運転中に定期的(1回/月)に実施する高圧注水系※2手動起動試験において、高圧注水系(以下、「HPCI」という。)を起動したところ、11時26分頃「HPCIタービン自動停止」および「HPCIポンプ流量低」の警報が発生しました。
高圧注水系が動作可能であることが確認できなかったことから、同時刻に保安規定第39条に定める運転上の制限を満足しないと判断いたしました。
警報が発生した原因は、HPCIタービン主蒸気止め弁(以下、「当該弁」という。)が起動信号にて全開となるべきところ、開動作しなかったことによるものです。
高圧注水系が動作不能の場合には、代わりに原子炉を「冷やす」機能が確保されていることを確認するため、原子炉隔離時冷却系が動作可能であること、自動減圧系の窒素ガス供給圧力が規定圧力以上であることを確認しておりますが、いずれの機能も正常であることを確認済みです。
原因を調査した結果、先月、発電機と励磁機の接合部分から油(グリス)が漏れた原因調査および補修のために原子炉を停止した後、原子炉水位の上昇操作をしており、これにより原子炉水位高信号※3(以下、「当該信号」という。)が発信していたため、当該弁が開動作せず、HPCIタービンが起動しなかったことが判明しました。
これは、原子炉起動前に原子炉水位を通常水位に戻した際に、当該信号が発信されていることを示すランプが球切れにより消灯していたため、解除操作が行われなかったものです。
このため、当該信号を解除した上で高圧注水系の定期試験を実施し、高圧注水系が動作可能であることを確認したことから、7月15日22時45分に運転上の制限内に復帰いたしました。
HPCIの機器の状態については、現場において問題のないことを確認しております。
再発防止対策として、次回定期検査時に当該信号の表示ランプをLEDタイプに変更することを検討します。また、原子炉起動過程でHPCIを待機状態にする際に、原子炉水位高信号の解除操作を行うことを運転手順書に明記します。
今後、解除操作が行われなかった背景にある要因などについて、調査・検討をしてまいります。
なお、本事象による発電所周辺への放射能の影響はありません。
※1 運転上の制限
※2 高圧注水系
非常用炉心冷却系の一部で、原子炉冷却材喪失事故時に原子炉に給水するための設備。高圧注水系は原子炉で発生した蒸気の一部を使用してHPCIタービンを回し、連結するポンプを動かすことにより原子炉内に給水する。
なお、非常用炉心冷却系としては、他に「炉心スプレイ系」「低圧注水系」がある。
高圧注水系は、原子炉水位異常低下信号により起動し、原子炉水位高信号により停止する系統。
※3 原子炉水位高信号