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女川原子力発電所3号機における制御棒1本の過挿入事象に関する原因と再発防止対策について平成21年 6月25日 女川原子力発電所3号機(平成20年11月26日より第5回定期検査中)は、5月28日午後2時33分頃、制御棒駆動水圧系水圧制御ユニット(以下、「HCU」という。)の隔離解除作業を実施していたところ、制御棒が所定の位置にない状態となったことを示す警報が発生しました。 直ちに、当該制御棒は所定の位置である全挿入位置に戻っていることを確認し、午後2時36分頃に警報を復旧しました。 本警報は、137本ある制御棒のうちの1本が全挿入位置から、さらに挿入側に動作(以下、「過挿入」という。)したことにより発生したものと判断しました。
本事象は法律に基づく報告事象です。 なお、この事象による発電所周辺への放射能の影響はありません。
その後、本事象が発生した原因について調査を行い、再発防止対策を取りまとめ、本日、国に報告するとともに、安全協定に基づき、宮城県、女川町および石巻市へ報告いたしました。 本報告の概要は、以下のとおりです。
1.調査結果 当該制御棒を操作する際に動作する方向制御弁(120弁、121弁、122弁、123弁)について漏えい確認を実施したところ、123弁に判定基準(2ミリリットル/分)以下の微量なシートリークが確認されました。 さらに123弁を分解点検したところ、メインバルブシート面に微小な傷が確認されたことから、このシートリークは、微細な異物がシート面に噛み込んだことにより発生したものと推定しました。 異物混入に関する調査では、定期検査毎に実施するHCU内のフィルタ(P1〜P4)の点検において、制御棒駆動水入口側のフィルタ(P1)は、毎回すべて新品に取替えを実施しており、ローテーションのうえ再使用するフィルタ(P2、P3、P4)が超音波洗浄後に組み込まれるのに比べて、工場で超音波洗浄されてから組み込まれるまでの作業ステップ(梱包、開梱、目視検査等)が多いことから、フィルタ(P1)の取替作業時に異物が混入する可能性が高いと推定しました。 なお、運転手順書の遵守状況については、当初運転員から報告のあった103弁と104弁の操作順序を誤った可能性について、聞きとり調査および操作動線の検証の結果、運転手順書を遵守していなかった可能性は極めて低いと考えられます。また、仮に、103弁と104弁の操作順序が異なっていたとしても、制御棒過挿入は発生しないことから、要因の可能性はないと判断しました。
2.事象発生の推定メカニズム 調査結果から、当該制御棒の過挿入事象発生のメカニズムは以下のとおりと推定しました。 (1)平成20年12月10日に実施した方向制御弁の漏えい試験で漏えいのないことを確認していること、5月7日に実施したHCUの隔離解除では制御棒過挿入は発生していなかったことから、この時点までは123弁のシート面には異物を噛み込んでいなかったが、5月8日に実施した制御棒駆動機構機能検査において、制御棒が全引抜きから全挿入される時に異物が123弁付近に移動し、滞留した。 (2)5月12日に「制御棒駆動水圧系機能検査」としてスクラム機能検査を実施しており、この時、123弁が開動作(その後閉動作)となるタイミングで同弁のシート面に異物を噛み込んだ。 (3)5月13日、上記検査が終了したため当該HCUを隔離したことから、123弁に噛み込んだ異物はそのままの状態で保持された。 (4)5月28日、当該HCUの隔離解除操作を行う過程において、103弁を全開にした際、123弁に駆動水圧力(約1.15MPa)がかかり、シート面に噛み込んでいた異物が排出される際に、瞬時、駆動水が流れ、その結果、制御棒を挿入側に動作させることが可能な圧力(約0.5MPa)が加わり、制御棒が過挿入となった。 (5)異物が排出されたことから123弁が全閉状態に戻り、制御棒を挿入側に動作させる駆動水が流れなくなったことから、操作することなく自重で全挿入位置に戻った。
3.推定原因 本事象が発生した原因は、以下のとおりと推定しました。 (1)HCU内のフィルタ点検時には、他社プラント事象の水平展開を含め異物混入防止に努めてきたものの、現地で超音波洗浄された後、再使用のためローテーションして組み込まれるフィルタ(P2、P3、P4)に比べて、新品のフィルタ(P1)は、工場での超音波洗浄から組み込みまでの作業ステップが多いことから、その間に異物が混入した。 (2)異物が123弁付近に混入し、そのシート面に噛み込んだことにより、シートリークが発生し、制御棒過挿入事象に至ったが、異物がシート面より排出されたことで、制御棒を挿入側に動作させる力がなくなったことから、制御棒は自重で全挿入位置に戻った。
4.再発防止対策 異物混入防止をさらに徹底していくために、以下の対策を実施します。 (1)当該HCUの123弁については新品に交換するとともに、当該HCU内のフィルタを組み込む前に内部のフラッシングおよびフィルタ(P1〜P4)の超音波洗浄を実施した。また、方向制御弁の交換後、当該制御棒駆動機構(以下、「CRD」という。)を駆動させ、その機能に問題がないことを確認した。 (2)従来より実施していた異物混入防止対策を徹底するとともに、今回の事象を踏まえ、新品のフィルタ(P1)についても、他のフィルタ(P2、P3、P4)同様に、組み込み前に現地で超音波洗浄を実施することとし、その旨を工事要領書に明記する。
また、運転手順書を遵守していなかった可能性は極めて低く、本事象の要因ではなかったものの、操作の実施状況を記録により確認できなかったことから、今後、HCU隔離解除の操作状況を確実に確認できるよう運転手順書における操作実施状況のチェック方法等について検討します。
なお、本事象では異物が発見されず、CRDの系統内に残留している可能性があることから、CRD本体に流入した場合についての影響評価を行った結果、原子炉内に異物が流入する可能性は低く、CRD本体の駆動機能およびプラントの機能に影響を与える可能性はないと考えております。 さらに、今回の事象を踏まえ、当該CRD本体の次回分解点検時においては、異物の除去を含めて点検を実施することとしております。
今後、準備が整い次第、原子炉を起動する予定です。
以 上
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