2月定例社長記者会見概要
2025.02.27
社長記者会見
○樋口社長からの説明事項
本日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございます。
本日は、「女川原子力発電所2号機 再稼働までの歩み」ならびに「2026年度採用計画」について、ご説明させていただきます。
〇女川原子力発電所2号機 再稼働までの歩み
女川2号機は、昨年12月26日に、14年ぶりに営業運転を再開いたしました。
2011年3月11日の東日本大震災で被災し、その後、2013年12月27日に新規制基準の適合性審査申請を行い、10年に及ぶ審査を経て、2024年5月27日に安全対策工事を完了いたしました。
その後も、再稼働に向け、安全確保を最優先に、燃料装荷をはじめとした各種検査・試験、作業などへの対応を丁寧に進めてまいりました。
その間、立地自治体の皆さまには、審査申請に係る事前協議了解や発電所視察などを通じ、真摯にご議論、ご確認をいただきました。
また、地域の皆さまに、当社の取り組みについて分かりやすく丁寧にお伝えすることに意を用いてまいりました。
当社では、女川2号機の発電再開を、単なる「再稼働」ではなく「再出発」と位置付けております。
これは、発電所をゼロから立ち上げた先人たちの姿に学び、地域との絆を強め、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を反映し、新たに生まれ変わるという決意を込めたものです。
女川原子力発電所では、建設当初より、地震や津波など自然への畏敬の念を持ち続け、常に最新の知見を反映するなど、安全性の向上にむけて不断の努力を積み重ねてきております。
女川1号機の設計に際しては、文献調査や地元の方々からの聞き取り調査結果を踏まえ、津波の高さを約3メートルと想定しましたが、専門家を含む社内委員会での議論を経て、「敷地の高さによって、発電所を津波から守る」こととし、敷地の高さを海抜14.8メートルに決定いたしました。
また、原子炉を冷やすために必要な海水ポンプは、津波の影響を受けやすい港湾部ではなく、原子炉建屋と同じ敷地高さから掘り下げたところに設置いたしました。
これは、敷地の高さを決定した考え方と同様に、「海水ポンプは重要な設備であり、敷地の高さによって津波から守る」こととしたものです。
このほか、津波の引き波時に、非常用の冷却海水を確保するため、取水路に傾斜をつけたうえで深くする工事を実施してきました。
こうした経営判断には、当社の「安全最優先」の姿勢が表れており、この考え方は現在も変わらず受け継がれております。
2号機の増設時には、想定される津波の高さを9.1メートルに見直し、敷地高さ海抜14.8メートルのうち、9.7メートルの高さまで、法面部分をコンクリートブロックで防護する追加工事を実施しました。
この対策により、法面部分を含む敷地地盤は、震災時の津波襲来にも耐えることができました。
女川原子力発電所では、過去に経験した地震の知見や、国の耐震指針の見直しを踏まえて、2010年6月までに、1号機から3号機の機器・配管の補強など、合計約6,600カ所の耐震工事を行いました。
また、2009年7月当時、免震構造の新しい事務棟を建設中でしたが、近い将来、宮城県沖地震が発生することを想定し、その時点で使用していた事務棟の外壁に筋交いを 設置する耐震工事を、震災発生の1年前に完了しておりました。
女川原子力発電所は、2011年3月11日、最大震度6弱、567.5ガルの揺れに襲われ、その後、約13メートルの津波に見舞われましたが、それまでに積み重ねてきた様々な「地震・津波への備え」により、当時、原子炉起動中の2号機、運転中の1、3号機の3基すべてが設計どおり安全に冷温停止しました。
翌年には、IAEA国際原子力機関が来所し、「あれほどの地震動にもかかわらず、構造物・機器は驚くほど損傷が少なかった」との報告書を取りまとめました。
また、これまで紹介してきたことなどが評価され、震災当時の発電所長が、WANO世界原子力発電事業者協会から、原子力の安全に寄与したとして「原子力功労者」として表彰されました。
震災時には、被災された近隣住民の方々が、発電所のPRセンターに助けを求めてこられました。
当時の発電所長が「人命にかかわる事態」と判断し、躊躇することなく発電所への受け入れを決め、その後、約3カ月間、最大364人が構内の体育館で所員とともに避難生活を送られました。
この被災された方々の受け入れは、これまでに先人たちが培ってきた地域の皆さまとの信頼関係から生まれた「地域との絆」を表す出来事だと考えております。
震災時、女川原子力発電所は震源に最も近く、また、東京電力福島第一原子力発電所と「地震の揺れ」や「津波高さ」が同等であったにもかかわらず、これまでの「備え」が奏功し、原子炉の冷温停止に必要な安全上重要な設備等に大きな被害はありませんでした。しかし、これに満足することなく、震災直後から、自主的に「緊急的な安全対策」に取り組みました。
例えば、震災翌年には、敷地の高さから約3メートルの防潮堤を設置し、海抜約17メートルとしました。
また、敷地内の高台に、「電源確保対策」として「電源車」や「大容量電源装置」などを配備いたしました。
女川原子力発電所では、これらの自主的な対策により、新規制基準に基づく安全対策工事が完了する前から、福島第一原子力発電所と同様な事故を起こさない安全レベルを確保いたしました。
ここからは、安全対策工事の概要について、触れさせていただきます。
新規制基準に基づく審査・議論の結果を踏まえ、万一の事故の進展に応じた対策を用意する「深層防護」と、各進展段階の対策に二重・三重の厚みを加えることを基本的な考えとして、さまざまな安全対策工事を進めてまいりました。
安全対策工事に従事した作業員は、工事開始から約11年間で、ピーク時には「約5,300人」、延べでは「約700万人」にのぼります。
安全対策で重要な要素である設備の配置については、敷地の形状を生かし、海抜約60メートルの高台に、発電所の安全に必要な電源を確保する「ガスタービン発電設備」や、大規模な原子力災害が発生した場合に現地対策本部となる「緊急時対策建屋」を設置いたしました。
数ある安全対策工事の中でも、「防潮堤のかさ上げ工事」、「耐震工事」、「電線管の火災防護対策工事」の3つは、特に大掛かりなものでした。
「防潮堤のかさ上げ工事」については、女川地域において、歴史上、過去に大きな津波被害を受けていたことや、海岸の地形がリアス式であり、津波が遡上しやすい地形であることなどを踏まえ、地域の方々に、より安心していただく観点から、当時の社長が「その時点で、技術的に可能な限り高くする」と判断し、基準津波に約6メートルの余裕を見て、国内の原子力発電所の中でもトップクラスとなる29メートルの高さとしたものです。
防潮堤の総延長は、約800メートルにおよびますが、このうち約680メートルについては、河川堤防のように土を盛り立てる台形型で設置するスペースが十分に確保できないことから、鋼の管を使用した「鋼管式鉛直壁構造」といたしました。
一方、残りの約120メートルについては、港湾側へのアクセス道路の設置を考慮し、セメント改良土による盛土堤防で構成いたしました。
「耐震工事」については、延べ約9,000カ所におよぶ工事を実施いたしました。
特に、「圧力抑制室」は、これまでに経験のない大規模な工事でした。
圧力抑制室内の狭い作業場所へ大量の大型補強部材を運搬する必要があり、加えて、複数の作業を同時並行で進めなければならないことから、実際の工事を実施する前に、直径約10メートルの実物大模型を製作し、工事の事前準備や効率的な工法の検討を行いました。
また、溶接によって部材が変形する恐れがあったことから、その模型を使用し、溶接手順の検討や溶接員の技量向上に向けた訓練などを実施したことにより、1年半で大工事を完成させることができました。
「電線管の火災防護対策工事」については、発電所内で、万一、火災が発生した場合に、火災発生箇所と同一の区画にある電線管などが損傷しないよう、耐火材でラッピングするものです。
このラッピング工事は、主に原子炉建屋内での工事であり、他の安全対策工事に伴い、新たに設置した設備や機器・足場などにより、作業エリアが狭い場所が多く、工事箇所によっては、離隔が十分に取れず、それらを迂回するために、電線管のルートを変更しながら工事を進める必要がありました。
このように、現場の状況に合わせて慎重に工事を進めた結果、最終的に、ラッピング工事をした個所は「計247カ所」、長さは「延べ430メートル」におよびました。
ソフト面の対策についてご紹介いたします。
再稼働後の事故対応に係る技術力に磨きをかけるため、「稼働中の生きたプラントでの実機体感研修」や、「女川2号機における各種訓練」を並行して進めるとともに、再稼働前には「大規模損壊訓練」ならびに「シーケンス訓練」を実施いたしました。
これらの訓練については、再稼働工程の進捗を踏まえ、真夏に実施しましたが、防護服を着た状態で重いホースを運搬・接続するなど、極めて作業環境が厳しい状況だったことから、熱中症対策を講じながら、進めてまいりました。
これまで様々な取り組みを紹介してまいりましたが、これら一つひとつに 真摯に向き合い、様々な苦難を乗り越えてきた結果、被災した原子力発電所として、また、国内のBWRで初の再稼働を果たすことができました。
これはまさに歴史に残る一大プロジェクトであり、東日本大震災からの復興につながるとともに、電力の安定供給やカーボンニュートラルへの貢献の観点からも、社会的にも大きな意義があったと考えております。
最後になりますが、発電所の運営にあたっては、地域の皆さまからのご理解が何より重要と考えております。
引き続き安全確保を最優先に、女川2号機の安定運転に努めるとともに、立地地域での対話活動やホームページ、リーフレットなどを用いて当社の取り組みを分かりやすく丁寧にお伝えしてまいります。
また、当社社員が地域の一員として、お祭り・イベントなどに参加し、地域の方々とともに、引き続き、地域活性化にも取り組んでまいります。
今後とも「安全対策に終わりはない」という確固たる信念のもと、原子力発電所のさらなる安全性向上にむけた取り組みを着実に進め、地域の皆さまから信頼され、地域に貢献する発電所を目指してまいります。
〇2026年度採用計画
続いて、「2026年度採用計画」について、ご説明させていただきます。
2026年度の新卒採用数については、東北電力と東北電力ネットワークの両社合計で、前年度の計画を20名程度上回る「270名程度」といたしました。
また、キャリア採用数については、2026年度から2027年度の2カ年において、両社合計で、前年度の計画を10名程度上回る「80名程度」といたしました。
さらに、事業の変革などを進めていくうえで重要な役割を果たす「DX」をより一層推進していくため、新卒採用において、学部や専攻を問わず、デジタルやIT領域に関心の高い方を対象とした「DX・情報コース」を新設いたしました。
東北電力と東北電力ネットワークは、引き続き、インターンシップ等の充実や情報発信の強化などに取り組み、新卒・キャリアを問わず、積極的に採用を進めてまいります。
〇役員人事について
以上が、本日の会見テーマについての説明となりますが、最後に、本日決定いたしました役員人事などについて、ご紹介させていただきます。
先月、4月1日付ならびに6月株主総会付の役員人事などについてお知らせしておりましたが、当社は、本日、4月1日付で実施する執行役員の人事、および本店室部長等の異動について決定いたしました。
また、同じく、東北電力ネットワークにおきましても、4月1日付で実施する執行役員の人事および本社室部長等の異動について決定しております。
本日、私からは以上です。
以 上
(注)樋口の「樋」は、一点しんにょう