第1回/ワークショップ
地域全体から考えてみると商店街は地域の要素のひとつ。
特定非営利活動法人ベコアイランドサミットは、任意団体として5年ほど活動した後、2019年に法人化。牛島地区を元気にすることを目指し、取り組みを続けてきました。
主な活動は、秋に開催される「牛島オータムフェスティバル」と、2019年に始まった「防災イベント」。前者は、地域の子どもやお年寄りなどの方々が少しでも交流を深めて、牛島ににぎわいを取り戻していくための取り組みで、後者は牛島地区の住民をターゲットにしたもの。いわば商店街支援と地区住民への働きかけが活動の2本柱です。また、活動を維持するための収入源として、イベントでのハンバーガー販売を行うとともに、牛島の「牛」にちなんだプリンやモツ煮などの開発にも取り組んできました。
しかし、そういった取り組みが商店街、地域住民、行政サイドなどキーパーソンたちになかなか浸透せず、地域挙げてのまちづくりにつながっていない、という悩みも抱えています。
寺川氏は、事前の現地視察などを元に「牛島の住民は福祉や教育でも問題を抱えているはず。まず牛島地区全体の活性化を考え、その上で商店街の要素を取りこんでいく、という方向で進もう」と提言。まちづくり元気塾がスタートしました。
活動の方向性を見出すため4つの視点から地域を評価。
第1回では、まちづくりパートナーのリードによりワークショップを実施。牛島地区のまちづくりにとって何が魅力で何が問題かを考えるきっかけとしました。
テーマは「牛島地区で考えてもらいたい4つのモノ」。以下4点についての意見を、参加者が付箋に書き込んで模造紙に貼りこみながら発表しました。
@絶対に手放してはならないモノ(守りたい、取り戻したい)、Aあれば良いけどなくても良いモノ(あれば便利、あったら良いな)、B端的に無くて良いモノ(邪魔に感じる、できれば解決したい)、C絶対にあってはならないモノ(絶対に取り除きたい、解決したい)
これらをテーマごとに分類・整理し、さらに全員で討議。プロジェクトとしてまとめられるよう整理しました。
@に関しては、味噌屋やたい焼き屋、得意技を持つお年寄りなどの「職人」や地域の「祭り」、伝統を守ろうとする「気質」や往時の雰囲気を伝える「街道の特徴」、生活にとって生命線の「交通」などが挙げられました。Aには「飲食店」や「物販店」に加え「歴史環境」なども。Bでは「人の問題」や「空き家」などが挙げられ、Cでは犯罪や災害、孤独死などのほかに商店街の「シャッター通り化」の問題も指摘されました。
縦長のまち割りも弱点ではなく新しい可能性を示している。
ワークショップ後半では、4つの視点からの分析をもとに、今後の活動軸となるプロジェクトの立案を試みました。
寺川氏は、どんな人材が牛島にいるのか、掘り起こしが必要と強調しました。また「地区の特徴ではあるが使いづらい」との意見が出されていた縦長の敷地も、かつての町屋の形式を活かすことで、画家や彫刻家などのアーティストや刃物や豆腐などの手づくり職人にとっては、むしろ魅力的な敷地になると指摘。橋立氏は、「たとえシャッター街になっていても、思い切ってシャッターなどを外してみると、レトロな美しい景観のまち並みに生まれ変わることがある」とアドバイスしました。
ワークショップでは参加者からさまざまな意見が寄せられ、寺川氏が夢のプロジェクトとして取りまとめを行いました。牛島にどのような人材や職人がいるかを把握することや、太平川の河畔やまちを散歩で楽しむための環境整備、子どもたちとの交流促進、地元でさまざまな活動に取り組む団体の後方支援など、テーマは多岐にわたりました。
橋立氏は「地域の中の人が楽しそうに取り組んでいると、自ずと外からも注目され、人材も集まってきます。皆さん自身がニコニコしながら、前進してほしい」とエールを送りました。
参加者からひとこと
広がる夢をもっと共有していこう。
●特定非営利活動法人ベコアイランドサミット 小松 薫理事長
牛島の現在と将来について語り合うだけで、こんなにわくわくするとは! 活動の考え方や取り組み方の勉強になりましたし、夢が広がりました。人材やまちの魅力の「棚卸し」をもっと詳細に進めて、周囲の方々と共有しながら、プロジェクトを充実させたいですね。「牛歩」のような進み方でも、少しでも牛島のプラスになればと思います。