第1回/オリエンテーションとワークショップ
大人たちとの対話が刺激となり高校生に気付きをもたらす。
岩手県の三陸海岸沿いでも最北端に位置する洋野町。漁業のまちで活動する「北三陸うみの学校」は、漁師や水産業経営者と高校生が対話する教育プログラムを通じて、地域特有の水産業の魅力を可視化し、未来の漁業従事者育成を目指しています。
まちづくり元気塾では、同団体と地元の岩手県立種市高等学校がコラボレーション。地域で活躍する大人たちと高校生が対話し、地域を良くするアイデアを「マイプロジェクト」としてまとめることを目指しました。
第1回では、はじめに橋立氏が、「自分たちが暮らす地域をより良くしようと住民一人ひとりが行動することがまちづくりに繋がる」と紹介。さらに地元の漁師や役場職員などと高校生25名の対話やまちづくりパートナーの岡崎氏がリードするワークショップが行われました。高校生たちからは「洋野は海がきれいで、ウニやアワビが美味しい」「洋野を中心に活動する南部ダイバーや漁師は格好いい」といった声が聞かれ、地元の魅力を再認識した高校生たちによる「マイプロジェクト」づくりがスタートしました。
第2回/ワークショップ
ひとつの成功体験が取り組みに持続性を与える。
第2回は、種市高校の生徒30名に加え、洋野町職員、地域おこし協力隊員、料理店経営者などの地域で活躍する大人が「プレイヤー」として参加しました。菊池氏の話題提供では、東日本大震災の被災地支援として、遠野市では主婦たちが手編みのブローチを作製・販売しており、この活動には地元の高校生も関わっていることについて紹介。「高校生にもできる活動は必ずある」と参加者を励ましました。続いて行われたワークショップでは、地元の「プレイヤー」たちから興味や趣味を活かしたライフプランづくりなどについてさまざまな体験談や意見が出され、高校生も自分たちの考えを積極的に発言しました。
後半は、まちづくりパートナーと支援団体メンバーで「子どもたちが描く未来のために、地域の大人たちは何ができるか」と題してディスカッションを実施。メンバーからは「学生のマイプロジェクトづくりには、今後もニーズがあるはずなので、マイプロジェクトづくりを継続させるために経済的な面でもサポートが必要」という意見が。これについて菊池氏は「行政の補助金などの活用も視野に入れながら、まずは、わかりやすい成果を出したい。ひとつでも成功体験があれば、高校生も自信を持って活動を続けていける」とアドバイスしました。
第3回/フィールドワークと発表、総括
洋野町のバリューを結んで新しい可能性を広げる。
第3回は、国際的な人材育成を行うインターナショナルスクールであるインフィニティ国際学院の学生5名とのフィールドワークからスタートしました。「洋野町の漁業・水産業のバリューチェーンを知ろう」というテーマのもと、水産業と水産加工業の現場で、体験活動を実施しました。また、種市高校の生徒による「マイプロジェクト」の発表を動画で視聴。橋立氏は「すばらしい取り組みが続いている。この高校生の努力をもっと地域の方々に広く知らせるべき」と高く評価しました。
高校生たちの発表を受け、眞下代表は「洋野の水産業が持続可能な形で次世代へと引き継がれていくためには、水産業の強化だけでは足りない。教育のエッセンスが必要ではないか。まずは、地域全体で若者に資本や時間を投資しようというマインド醸成が必要だろう。将来的には、得られたノウハウを使ってコンサルティングなどもやってみたい」と今後への展望を述べました。
全3回のまとめとして、菊池氏は「地域の住民が、このまちはすごいんだと誇りを持って言えるようにしたい。それこそがまちづくりだ」とコメント。橋立氏は「いずれ『高校生が変えたまち』として先進事例になり得る地域だ。情報をどんどん発信してほしい」と結びました。
参加者からひとこと
洋野町から最新のモデルを
●北三陸うみの学校 眞下 美紀子代表
手探りの活動だったのが、まちづくり元気塾の支援で「目に見える流れ」ができてきたように感じています。中高生など若い世代との関係づくりも進みました。漁業関係者をはじめ地域の方々を巻き込んでの取り組みは、ほかにない貴重な財産に育つのではないでしょうか。新しい産業おこしと人材育成のモデルを、洋野町を起点に広げていきたいと思います。