第1回/講義とワークショップ
「人口減少時代のまちづくり 観光は地域に元気をもたらすか?」
観光を考えるなら、社会問題や経済動向の分析も大切。
前半は石森氏の講義を実施。観光を考える時に必要なデータや、具体的な事例を紹介しました。後半では地元の魅力を抽出し、参加者が共有するためにワークショップを行いました。
講義 石森 秀三氏
人口減少問題やアジア経済の数値的分析から、身近な観光振興の事例、商品開発のヒントまで、観光のすべてを語り尽くすかのような密度の濃い講義となりました。「旅から帰って思いだすのは、名所や名物よりも、旅先で出会った人。『観光とは人づくり』と言われるのはそのためです」とのコメントに、大きくうなずく参加者も少なくありませんでした。
ワークショップ 志賀 秀一氏
参加者は4つのグループに分かれ、宮古市の「強み」と「弱み」を、それぞれ付箋に記入。これらを整理し、今後取り組みたいアイデアとして模造紙にまとめました。各グループがアイデアを発表すると、盛んに意見交換が行われました。
- ワークショップのまとめ
- 発表内容から(抜粋)
- 【強み】
- ウニやアワビが美味しい/夏は涼しく冬は雪もない/方言が良い感じ/浄土ヶ浜/横断歩道で止まってあげると深々とおじぎされる
- 【弱み】
- お店の接客態度が良くない/アクセスが不便/外国・県外からの来客への対応力不足/定住したくてもアパートがない
- 【今後取り組みたいこと】
- 婚活イベント/トンネルにアート/朝市宵市/ナイトツアー/ドローン特区/朝ごはん専門店/災害経験の共有事業
締めくくりに、志賀氏から第2回までに、「今後取り組みたいこと」をひとり1件以上立案するよう課題が出されました。
【POINT】まちづくりパートナーより
「地域の観光に、新しいシナリオを。」/石森 秀三氏
リーマンショック後、アメリカでは脱マネー主義の模索がはじまりました。日本でも東日本大震災を契機に、経済性だけを優先せず、地域の文化や自然と調和したライフスタイルが求められています。地域の観光にも、新しいシナリオが必要だと考えた方が良いと思います。
第2回/講義とワークショップ
「人がつながれば、道はできる!」
広域連携で、観光振興の可能性を伸ばそう。
講義では、島氏が自ら展開したユニークな観光振興と広域連携について紹介しました。ワークショップは2日間にわたって実施。前回出されたアイデアを、さらに具体化する作業を行いました。
講義 島 康子氏
大漁旗を使った「おもてなし活動」や「マグロTシャツ」の商品開発、青森と北海道を結んだ広域観光事業について紹介。大間町の方言を交えたトークで会場を大いに沸かせました。「あそこには何かある、おもしろそうだなと思ったら、ぜひ現地まで行って調べましょう。必ずや誰かと出会い、何かが起こりますよ」と語った途端、会場からは「早速、大間に行ってみます!」という反応も。
ワークショップ 志賀 秀一氏
参加者を3つのグループに分けて進行。各自が考えてきたアイデアをもとに、グループごとのテーマに沿った企画を立案。企画には対象者、実施時期や内容などを明確にする「深掘り」が求められました。
- ワークショップのまとめ
- 発表内容から(抜粋)
- テーマ 「広域連携」
-
企画タイトル「 アゲアゲ 三陸ベルト」
北〜南三陸をベルト地帯とみなして、各地の観光拠点が交流しながら、それぞれ観光資源を磨く。共同で情報発信も。 - テーマ 「フェリー対応」
-
企画タイトル「 アボルタージュすっぺし!」
フェリー乗船中にイカの一夜干しを作るなど、アボルタージュ(奇襲・奇想)的な発想・手法を駆使して、室蘭との交流や協同事業を強化。 - テーマ 「おもてなし」
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企画タイトル「 みやこさ CO(来う)!」
SNSを活用してオリジナルのキャラクターを開発。スタンプラリーで宮古市民に浸透させながら、ネットなどで宮古ならではの魅力を発信。
中でも「フェリー乗船中にイカの一夜干しを作る」企画を島氏が高く評価すると、参加者一同から拍手喝采が。ここで挙げられた企画は第3回でさらに検討されることとなりました。
第3回/講義とワークショップ
「広域観光連携について」
連携は、自立していなければできない。
初日には、宮古市近隣の市町からまちづくり関連団体、水産や観光の事業者、大学関係者などが参加。米田氏が広域連携について講義を行いました。2日目は、宮古観光創生研究会メンバーのみでワークショップを実施しました。
講義 米田 誠司氏
大分県由布市や愛媛県松山市など、米田氏が携わった各地のまちづくりについて解説。瀬戸内海周辺の自治体が連携する、大型船クルーズ計画も紹介されました。参加者に向け「広域連携とは、それぞれのまちが自立していてこそ成り立つ。その観点から、宮古の魅力を見つめ直してほしい」との要望も出されました。
ワークショップ 志賀 秀一氏
前日の米田氏の要望を受け、改めて「宮古の魅力」について意見を交換。「宮古の魅力を活かして、自分自身がやりたい企画」を検討し、参加者がひとりずつ発表しました。
- ワークショップのまとめ
- 発表内容から(抜粋)
- 浄土ヶ浜の時間帯別ツアー
- 浄土ヶ浜の朝・昼・夜それぞれを楽しむ。併せて星空や漁火、船からの景観も。
- 水産体験ツアー
- 宮古漁港で水揚げや水産加工などを体験し、自作の缶詰などを持ち帰るツアー。
- 宮古の「教科書」づくり
- 地元の歴史や文化をわかりやすく伝える「教科書」を作成し、市外でもネット販売。
- 「語り部バス」の運行
- 語り部が同乗し、昔話や観光PR、名産試食会などを楽しむバス。盛岡・宮古間を運行。
志賀氏が「都会や観光先進地を真似しても、長続きしない。常識にとらわれず、宮古ならではのスタイルを築いてほしい」と締めくくり、全3回を終了しました。
「フォローアップ」研修
- 実施日
- 2017年12月2日(土)〜3日(日)
- 会 場
- 岩手県宮古市内の各所・東北電力宮古営業所(現:岩手三陸営業所)
- 参加者
-
- まちづくりパートナー
- 志賀秀一氏
- 鈴木雅之氏((株)JTB東北本社営業部地域交流事業統括担当部長)(当時)
- 宮古観光創生研究会(4名)
- 実施内容
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- 【初日】宮古観光創生研究会制作「宮古満喫ツアー」モニタリング(1)
- 【2日目】宮古観光創生研究会制作「宮古満喫ツアー」モニタリング(2)〜まちづくりパートナーによる話題提供〜ツアーに対するフィードバックと意見交換
宮古観光創生研究会のメンバーが「着地型体験ツアー」を試作。まちづくりパートナーが現地に赴き、2日間にわたってモニタリングしました。
初日は東日本大震災で被災した喫茶店のマスターから体験談を聞き、宮古市唯一の酒造店などを訪問しました。
2日目は、プロの指導のもと新巻鮭づくりも体験。意見交換では、鈴木氏がツアーの長所短所を指摘し、志賀氏からは宮古市を取り巻く交通網などの最新情報が提供されました。
Afterword
■まとめ/まちづくりパートナーからのメッセージ
出会った人と仲良くなって、ご縁が続くようにする。これも観光の基本です。石森先生も島先生も米田先生も、凄い先生ばかり。しかし、敷居は高くありません。ずっとお付き合いしていきましょう。( 志賀 秀一氏)
■ひとこと/東北電力より
「住めば宮古」
「住めば宮古」と称される暮らしやすさ。若い方々のやる気と行動力もすばらしい。おかげで私もすっかり宮古ファンに。宮古商工会議所のフェリー活用検討委員会にも参画させていただきました。今後も幅広い支援を続けたいと思います。 (宮古営業所 現:岩手三陸営業所
所長 菅野 行夫)
※本文中に記載の役職等は、当時のものです。
【気づき】参加者からひとこと
語り尽くせないコミュニケーション
●宮古観光創生研究会 花坂 雄大代表
応募してからずっと、日常的に志賀先生やパートナーの先生、事務局の皆さんと緊密にコミュニケーションを取ってきました。良い関係を築きながらの取り組みは楽しかったですし、この絆は今後に繋がると確信しています。