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福島県郡山市

柳橋町内会

テーマ/伝統芸能を核とした取り組みによる地域経済と文化の活性化

ふだんの食材からでも、新しいメニューは生まれる。
価値観の変化が、まちづくりの推進力に。

柳橋地区は、「柳橋歌舞伎※」を伝承してきた歴史ある地域です。近年は人口減少や高齢化、耕作放棄などの課題も顕在化し、地域の活性化とコミュニティ復活が急務に。そこで伝統芸能を活かした、新たな事業への取り組みがはじまりました。

※柳橋歌舞伎…郡山市重要無形民俗文化財指定。発祥は江戸時代。
 1980 年以降は柳橋地区のほぼ全戸が保存会員となり、年1 回の定期公演などを行っています。
支援団体
柳橋町内会の皆さん、柳橋歌舞伎保存会の皆さん
まちづくりパートナー
橋立 達夫氏(作新学院大学 名誉教授/チーフパートナー)
岡ア 昌之氏(法政大学 名誉教授/第2回)
本田 節氏((有)ひまわり亭 代表取締役)
田村 幸夫氏(JAはが野 理事/第3回)
東北電力株式会社
郡山営業所長 後藤 宏(当時)(2016年6月〜2018年6月)
開催場所
福島県郡山市中田町柳橋
黒石荘(柳橋歌舞伎伝承館)
中田ふれあいセンター(第3回)
方向性の模索チーフパートナー/橋立 達夫氏

答えは、身近な所にある。

まちづくりでは、成功事例をそのままなぞろうとする地域も少なくありません。しかし、最適な方策は「もともと自分たちでやってきたこと」の中にあることが多いもの。まちづくり元気塾を通じて、身近にある食材や料理の魅力を見つけていきましょう。

橋立 達夫氏
身の周りから見直そうと語る橋立氏

第1回/話題提供とワークショップ
「食資源を活かした、地域づくり・まちづくり・元気づくり」

いつも家にある食材だけで、ここまでできる。

初日は、橋立氏と本田氏がまちづくりに関する話題を提供しました。2日目には本田氏の指導で「食のワークショップ」を実施。地元の食材を活かした、新しいメニューの試作に取り組みました。

まちづくりパートナーからの話題提供

橋立氏は、柳橋を活性化させるビジネスを起こし、持続させていくことを提案。本田氏は、自身が運営する農家レストランについて紹介しました。「ふだん通りのやり方、すなわち地域特有の文化を活かしましょう。観光向けに特化すると、飽きられて続かなくなります」とのアドバイスも。

食のワークショップ 本田 節氏

参加者が持ち寄った地元の食材をもとに、本田氏がレシピを調整。早速、新メニュー10品目を試作することに。「歌舞伎弁当」を意識し、重箱を使うなど新しいアイデアも飛び出しました。

ワークショップのまとめ
ワークショップでのコメントから(抜粋)
本田氏
柳橋のおかあさんたちのチームワークは、とても見事。急なお願いをしても、ぱっと段取りができます。歌舞伎を支えるコミュニティで、連携が磨かれているのでしょう。この地区ならではの良さですから、まちづくりにもどんどん活かしましょう。
橋立氏
ふだんの食材に、本田氏がアイデアを加えた。それだけで、新しいメニューがたくさんできました。こうなると、地元の食材に対する視点や評価が変わり、調理する腕前にも自信がつきます。こうした価値観の変化が、まちづくりを進める効果も。
参加者
いつも家にある食材だけで、ここまでできるのかと驚きました。調理のひとつひとつが新しい発見で、自分たちの狭い世界が大きく広がったような気がします。光がちょっと見えましたので、前進あるのみ。皆で力を合わせてやっていきます。

なお、第1回終了の後日、参加者有志が「勉強会」を開催。ワークショップの内容について復習などを行いました。

【POINT】まちづくりパートナーより

「ソロバン」で、地域の文化を守ろう。」/本田 節氏
特産品を地元のレストランで活用して稼ぎ、お金や仕事を地域の中で回して、皆の暮らしが成り立つようにする。これがまちづくりの「ソロバン」です。しっかりした経営戦略を立てて、柳橋の暮らしと文化を持続させましょう。

身振り手振りで熱い思いを伝える本田氏

第2回/話題提供とワークショップ
「高齢社会のまちづくり 目指すべき方向」

地域の中で連携を深め、持続的な経営を。

初日は、パートナーが「柳橋歌舞伎」定期公演を視察。2日目には、まず橋立氏が農家レストランの取り組みについて紹介。続いて本田氏が「食のワークショップ」を実施しました。

準備万端の参加者と気持ちを鼓舞する本田氏

話題提供 橋立 達夫氏

農家レストラン経営の成功事例を紹介。「農家レストランは、集客だけでは根付きません。高齢者の自宅菜園や保育所などと連携し、地域の中で存在感を大きくすることで、持続的な経営も可能になります」と強調しました。

食のワークショップ 本田 節氏

キュウリ、ナス、オクラ、ミョウガ、カボチャなど地物の食材だけを使い「健康で長生きするためのメニューづくり」に取り組みました。三種の「麹」(醤油麹、塩麹、甘麹)を用い、一般的な調味料は使わずに調理。計7品が完成し、参加者一同で試食しました。

ワークショップのまとめ
パートナー、参加者のコメントから(抜粋)
本田氏
その土地ならではのものを、その土地だけのやり方で仕上げる。「土産土法」から生まれた名物には、人を呼び込む力があります。柳橋には上質の伝統芸能が継承されています。それに見合った上質の食文化を提供できるよう、サービスや独自性を追求していきましょう。
橋立氏
柳橋には、人のつながり、農作物、伝統文化、自然景観など「まちの資源」と呼べるものがたくさんあります。ぜひ、これらを活かす方策を具体化したいですね。
参加者
私たちにも何かできそうという雰囲気が生まれてきたように思います。頼まれたから、言われたからではなく、自ら立ち上がっていく姿勢が大切だと感じました。

なお、第2回終了の後日、参加者有志が「ひとり暮らしの高齢者向け弁当」の試作・販売を行いました。

【POINT】まちづくりパートナーより

「柳橋らしさを、持ち続けてほしい。」/岡ア 昌之氏(まちづくり元気塾アドバイザーリーボード座長、まちづくりパートナー)
柳橋地区には、歌舞伎という芸術を残すための仕組みがあります。その仕組みが、住民の一人ひとりに出番と役割をもたらして、生きがいを与えています。すばらしい伝統です。これからは、まちづくりの中でも一人ひとりに出番と役割がある、そんな柳橋らしさを持ち続けてほしいと思います。

伝統の大切さを改めて指摘する岡ア氏

【気づき】参加者からひとこと

「私たちが元気になれば、地域も元気になる」

●柳橋町内会 宗像 栄子さん
「地域を元気にするためには、自分たちが元気にならなくちゃね!」と本田先生が教えてくれました。まだまだ学びたいこともありますが、自分たちでできることを、自分たちでやっていこう、と考えています。

柳橋町内会 宗像 栄子さん事

第3回/話題提供とワークショップ
「農家レストランを支える地域農業の在り方について」

歴史と文化の積み重ねを活かしながら、新しさを加えよう。

初日は、柳橋町内会の活動報告と意見交換を行いました。2日目午前には本田氏による「食のワークショップ」を開催。午後には田村氏より農家レストランに関する話題が提供されました。

あうんの呼吸で実習を行う本田氏と参加者

活動報告と意見交換

第2回実施後に行われた「高齢者向け弁当試作会」について報告。次いでまちづくりパートナーが、レストラン事業に必要な各種許認可などの情報を提供。

食のワークショップ 本田 節氏

初日の開会前に、参加者から「太巻き」を柳橋名物にしたいというアイデアが出されました。これを受けて歌舞伎の幕をモチーフにした3 色太巻きを試作。花見弁当やインバウンド向けメニューも考えてみよう、と盛り上がりました。しさをプラスしよう、という言葉です。私は柳橋の暮らしに、歴史と文化の積み重ねを感じています。そこに私のような「よそ者」の発想が加われば、きっと何かが動きだすと確信しています。

ワークショップのまとめ
発表内容から(抜粋)
本田氏のコメントから
「復古創新」。古きを大事にしながら新しさをプラスしよう、という言葉です。私は柳橋の暮らしに、歴史と文化の積み重ねを感じています。そこに私のような「よそ者」の発想が加われば、きっと何かが動きだすと確信しています。
まちづくりパートナーからの話題提供
「農家レストランを支える地域農業のあり方」について、田村氏自身の経験をもとに事例を紹介。「農家レストランの実現には、厨房施設の確保や認可などで行政との交渉が不可欠。制度的なことが障害になるケースもありますが、工夫次第できっと乗り越えられます」とアドバイスがありました。

今後の活動について

第3回の元気塾実施中に、農家レストランに好適な空き家が確保できたとの発表がありました。今後はこの空き家と運営組織の整備を進め、お弁当付き花見ツアーや歌舞伎公演共催企画を検討することとなりました。

「フォローアップ」研修

実施日
2017年9月9日(土)
会 場
福島県郡山市中田町柳橋 「黒石荘(柳橋歌舞伎伝承館)」
参加者
  • まちづくりパートナー 橋立達夫氏、本田節氏
  • 柳橋町内会(17名)
実施内容
  • 活動状況報告・食のワークショップ「食の拠点がもたらす新たな地域の元気」・試食会と意見交換

2017年4月、まちづくり元気塾の活動から生まれた「柳橋きらり塾」が農家レストランを開業しました。これを受けて、よりいっそう健全な経営を目指したフォローアップ研修を実施。本田氏からは原価率低減や持続的な運営のコツなど、実践的なアドバイスがありました。地元産の竹を活用した盛り付けなど新しいアイデアも提供。試食会はたいへん盛り上がりました。

農家レストラン「舞の里 けやき亭」の皆さん

Afterword

■まとめ/チーフパートナーからのメッセージ

地域の人たちの顔が輝くと、その輝きがまた人を呼ぶ
何かの変化によって、おもしろくなってきたね、楽しいね、と地域の人たちの顔が輝くと、その輝きがまた人を呼んできます。絶好のタイミングで、レストラン向けの優良物件も見つかりました。柳橋の皆さんの輝きが、何を呼ぶか楽しみにしながら、今後もサポートし続けたいと思います。(橋立 達夫氏)

■ひとこと/東北電力より

地域の資源を再発見し、一人ひとりが輝くまちに
実は13年ほど前、本店で「まちづくり元気塾」の立ち上げに関わりました。ですから今回、出身地である郡山市で皆さんのお手伝いが出来て、感慨もひとしおです。地域の資源を再発見し磨き上げ、柳橋の皆さんお一人おひとりが輝いて、魅力あるまちづくりにつながればと願っています。(郡山営業所長 後藤 宏)

※本文中に記載の役職等は、当時のものです。