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集合研修型まちづくり元気塾

マスターコース2013

マスターコース2013の概要

平成25年度には、従来からの専門家派遣型とは異なる集合研修型の元気塾『マスターコース2013』を開催しました。 これまでの元気塾の支援団体を中心に参加者を募り、まちづくりパートナーと共に学ぶ企画です。 複数の団体が交流することで生まれる新たな気づきの獲得や、まちづくりに関わる方々同士のネットワーク形成などを目的としました。
開催場所は、元気塾終了後も自律的な活動を継続している団体の所在地から、新潟県南魚沼市塩沢と山形県南陽市赤湯の2 カ所を選定しました。
1.受講資格
●まちづくり元気塾にご参加いただいた団体の方々
●まちづくり元気塾にご参加の団体からご紹介いただいた方々
●まちづくりパートナーからご紹介いただいた方々
2.受講料
無 料※交通費、宿泊費などは参加者負担
3.募集人数
各会場とも40名程度(大幅に超過した場合は抽選)
4.プログラム
10:00 〜  現地視察
13:20    開会
13:30 〜  講義『地域経営総論』(講師:まちづくりパートナー)
14:00 〜  地元団体からの活動報告
14:40 〜  参加者からの発表&全体討議
17:00 〜  交流会

平成20年度支援 新潟県南魚沼市

牧之通り組合
●講師
法政大学 現代福祉学部 教授 岡ア 昌之氏
株式会社 東北地域環境研究室 代表 志賀 秀一氏
作新学院大学 経営学部 教授 橋立 達夫氏
NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク 会長 菊池 新一氏
愛媛大学 法文学部 講師 米田 誠司氏
有限会社 寺川ムラまち研究所 代表取締役 寺川 重俊氏
当日は新潟県上越市「お馬出しプロジェクト」をはじめ、山形県庄内町「庄内町グリーン・ツーリズムの会」、 新潟県南魚沼市「牧之通り組合」並びに「射干の会」、南魚沼市、新潟県の皆さんにより、活発な討議が行われました。
講義「地域経済論」 志賀秀一氏

講師:株式会社 東北地域環境研究室 代表 志賀 秀一氏

よそとつながる力を持つ

マスターコースのキーワードにもなっている“ ネットワーク”。宮城県の南三陸町は、震災前からよその地域とつながることを前向きにやっていた町でした。 地震で阪神や中越に被害が出たとき、南三陸町が手伝いに行っていました。
東日本大震災のときには、その恩返しということで、それらの地域からたくさんの方が南三陸町に支援にきていただきました。 南三陸町は、よそとつながる力を持つ、よそとつながることは大切だという価値観を持っていたんですね。自分たちの地域のレベルは、他の地域と比較してみないと分かりません。 普段から、よそと話をしたり、いろいろ見せてもらったりすることによって、自分の大きさが分かります。
よそとつながるということは、一方通行ではないわけです。お互いに思い合える関係をつくるために知恵を働かせなければいけません。 思いを込めた言葉で相手に伝える。こういうことを地域がどれだけできるかにかかってきます。

いざというとき、力を発揮できるのは日頃の積み重ね

震災のような大変なときに乗り越えられるのは、平時をちゃんとやっていることのあらわれではないかと思います。
南三陸町では、平時からいろいろやってきたキーパーソンがいらっしゃいました。 地域のコミュニティーというと、わずらわしいところもあるかもしれませんが、 何かあったとき、誰にも知られていなくて、忘れられている人がいる地域社会というのは、たいへん危ないと思います。 そういう方々の存在を認める必要もありますし、リーダーシップをとる方の人柄とか、いろいろあるでしょうが、いざというときに力を発揮できるのは、 日頃の積み重ね、つまり日常をどれだけレベルアップさせていくかということにかかっているのではないでしょうか。

活動報告

報告:牧之通り組合長 中島 成夫氏
コメンテーター:作新学院大学 経営学部 教授 橋立 達夫氏

あまり難しく考えちゃダメ(中島 成夫氏)

まちづくりというものは、あまり難しく考えちゃダメです。簡単な話なんです。
自分たちのまちでしょう?誰のまちでもないでしょう?そこに住んでいる人間がやるよりほかないんです。 そこに住んでいる人間が、住みやすい、誇りの持てるまちをつくればいいんです。それが基本です。 牧之通りの場合は、人が住んでいる居住区です。居住区というものは、まちの息遣いが感じられなかったら、まちじゃないでしょう。 あくまで人が住んでいるんです。それをまず考えなければダメだと私は思っています。

「経験」「学び」「新陳代謝」が組織の衰えを防ぐ(橋立 達夫氏)

組織というものは、できたときが一番元気で、長い時間が経つとだんだん衰えてきます。 どこのまちづくりでも最初は元気がいいんだけれども、だんだん変わっていってしまうところが多いんです。 それを防ぐためのポイントが3つあります。1つは経験です。経験を積んで、その経験から次の段階を考える。表彰を受けるというのも経験でしょう。 自分たちの考えたことが実現するというのが最初の経験で、それが表彰を受けるということで元気が持続します。
2つ目は学ぶことです。最初にできたもので満足しないで、新たに学ぶ何かをすることが大切です。
3つ目は新陳代謝です。新しい人、新しい力をなるべく入れることです。 特にボランティアのまちづくりですと排他的になりがちで、新しい人が入りにくくなることが多いんですが、 外から来た人や子どもたち、そういった新しい力が常に入ってくるような流れをこれからもつくっていっていただきたいと思います。

平成21年度支援 山形県南陽市

赤湯温泉ゆかい倶楽部
●講師
法政大学 現代福祉学部 教授 岡ア 昌之氏
株式会社 東北地域環境研究室 代表 志賀 秀一氏
作新学院大学 経営学部 教授 橋立 達夫氏
NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク 会長 菊池 新一氏
愛媛大学 法文学部 講師 米田 誠司氏
ひまわり亭 代表取締役 本田 節氏
●ゲスト
南陽市 副市長 安達 正司氏
当日は山形県白鷹町「中山地区活性化推進会」をはじめ、福島県三島町「ランチBOX」、 山形県尾花沢市「矢越を愛する会」、山形県南陽市「赤湯温泉ゆかい倶楽部企業組合」の皆さんにより、活発な討議が行われました。
講義「地域経済論」 岡崎昌之氏

講師:法政大学 現代福祉学部 教授 岡ア 昌之氏

風景になるには100 年かかる

これからの地域経営と、まちづくりにおいて、これだけ日本が経済的にもレベルアップしてきた段階では、 景観だけではなくて内面からも美しいまちをどういうふうにつくるかということが今、日本の各地域で問われ始めているのではないでしょうか。 表面的に美しいまちは10年か15年間、一生懸命努力すれば段々できてきます。 ただ、それが内面を伴って風景になってくるには、100年かかるというのが、元東京農業大学学長である造園学者の進士五十八さんの持論です。
一つの風土というか、にじみ出すものになるには1000年かかるといいます。そのことの大切さがまちづくりの基本としてあるのではないかと思うのです。

コモンスペース

観光客が自由に散策できるよう、積極的に自分たちの民地、プライベートな土地を開放して、 公と私が融合したような土地をどんどん拡大していこうとしているのが小布施(おぶせ)のオープンガーデンです。
外の人たちとうまく交流できるコモンスペース、プライベートとパブリックが交わるような観念、 あるいはプライベートな財産が公的な性格を持つような意識といったことが、これから深い意味での美しいまちをつくる上では是非とも必要ではないでしょうか。

信念に向かって、さまざまな力を統合させていくのが本当の多様性

美しいまちというのは、単に外見が美しいだけではなく、やはり地域の中のさまざまなパワー、いろんなところに向かおうとする力、 ベクトル、それをどういうふうにお互い調整して、できれば一つの方向にまとめていくということが非常に重要で、それが景観や風景につながっていくことになるのではないでしょうか。
そのためには、同じ地域にずっと暮らしている人々への配慮とか、多様性を認めること。多様性を認めるというのは、てんでんばらばらに好き勝手なことをやるということではありません。 一つの基本線、ディシプリン、自分たちの信念というものを持ちながら、それに向かうさまざまな力を統合させていくというのが、本当の多様性だと思います。

活動報告

報告:赤湯温泉ゆかい倶楽部企業組合 酒井 綾子氏
コメンテーター:東北地域環境研究室 代表 志賀 秀一氏
コメンテーター:作新学院大学 経営学部 教授 橋立 達夫氏

声をあげたら、いろんな人からアドバイス(酒井 綾子氏)

人が来て楽しくなるまちってどういうものかなと考えていたとき、 赤湯にいらっしゃった方から「15時の新幹線に乗るんですけど、10時に旅館を出て、それから何か時間をつぶすところはないですか」と言われました。 レストランや喫茶店はありましたが、「何か楽しめるところをつくりたいね」といって始めたのが「御神坂(おみざか)体験工房はまぁ〜れ」です。 そこからさらに「漬物や料理の体験料をもらうばかりではなく、それ自体が商品にならないだろうか」ということに発展し、赤湯温泉ゆかい倶楽部企業組合を設立しました。 必要に迫られて始まったことですが、「やりた〜い」と声をあげたら、あれよあれよという間に広がって、 補助事業のお話やら、いろんな人がアドバイスをくださり、惣菜工房ができあがりました。

キーワードは“ 楽しい”(志賀 秀一氏)

活動が長続きしているのは、女性の方々が、粘り強く、生活感をしっかり持って、 よその方との接触を図ってきたことが一番のポイントではないでしょうか。楽しくないと続きません。 キーワードは、やはり“ 楽しく” ということ。時間の制約など、さまざまなバリアがあるでしょうが、みんなで集まり、笑顔で、人の批判をせず、前向きな意見を出し合い、 周囲からは批判的な考えもあったかもしれませんが、それを乗り越えるパワーを持って、“ 楽しく” をキーワードにされたことで、今日に至っているのかなと思います。

地域ブランドは、外の人との合作(橋立 達夫氏)

「観光まちづくり」には2つの条件があると思っています。まず、地域に根ざすことです。さまざまな主体が観光に関わっている状況をつくることです。 従来、観光協会の中心になっていた旅館や飲食業以外の商店主の方が歴史をひもといてみたり、 町の中のお気に入りポイントをつなげてツアーを考えてみたり、そんなことをあれこれと考えていくのが新しい観光まちづくりのやり方だと思っています。 「こういうことがあったらいいのにな」と思ったら、そういう人を見つけて引っ張り込んで一緒にやる。そういう流れがいろんなところでできたらいいなと思います。
二つ目は、外の人の力を借りるということです。今の観光は、まちづくりの魅力を感じて観光客が来ます。 その人たちは、いろんなノウハウを持っている人たちですから、その力を地域の中に引っ張り込んで一緒に地域のイメージをつくっていく。
地域ブランドというのは、実は外の人のイメージです。地域の中でいくらつくろうとしてもできるものではないんです。 外の人がイメージを抱いてやって来て、それが裏切られなかったら、だんだんブランドとしてつくり上げられていくんです。 つまりは、外の人との合作です。もちろん地域の人にも、こういうものを見せたいという夢はあるんですが、それを受けて外の人たちがやって来て、 「裏切られなかった。確かにそうだよね」というところから発していくんだと思っています。

講師からのメッセージ

全体討議の中から、講師の方々が発言された印象深いコメントを集めてみました東北を愛し、全国の事例を見てきたからこそ紡ぎ出される金言の数々は、まちづくりにとって大切なメッセージが込められています。

●岡崎 昌之氏
交流、観光、どちらにしても安易に外に依存しないことだと思います。観光という行為を通じて、自分たちの誇りをきちんと基本にすえて、軸のぶれない生活のあり方、価値観、ライフスタイルをつくっていく、そのためにも交流ということが必要だと思います。
(新潟会場 観光と交流の区別が話題となったことに対して。)
●菊池 新一氏
どうも男どもの仕掛けというのは、ネクタイを締めて正面玄関から「ごめんください」と入っていくようで、あまりうまくいかないなと思います。勝手口に回るという方法もあるわけです。
(山形会場 遠野で産直レストランを立ち上げる際、お母さんたちのふとした会話から話が進んでいった経験を踏まえて。)
目標を達成したときというのは、実はマイナスに向かって落ち込んでいくので、その先にどういう夢を描くかが一番大事です。「そんな夢みたいな話をするな」と言われたもんですが、「この世の中夢しか実現したためしがない」と言う先生もいらっしゃいました。正にそのとおりなんです。
(山形会場 遠野の集家レストランの事例を引いて。)
●志賀 秀一氏
物事を壊したり、強引に持っていくのは男パワー。それを持続させ、継続してやっていくのは女性パワーだと思います。男性と女性では物事を進めていく上での考え方、動かし方に違いがあるのではないかと思います。まちづくりには女性パワーが必要ですね。
(新潟会場 元気塾での取り組みを振り返って)
●橋立 達夫氏
今こういうことで困っているんだけれど、お手伝いしてくれませんか、ということを都会に向けてどんどん言っていいと思うんですね。地域の恥でもなんでもないと思います。そういうことを求めている人が、世の中に結構いるということです。
(山形会場 都会の人の力の巻き込みかたに触れて。)
●寺川 重俊氏
生業も暮らしも日々の楽しみも、何もかも含めトータルで元気になりたい。そのために外の人といろいろなつながりを持った活動をして元気になることを"観光"と言っていましたが、観光についての認識がみんな違うので、どうも観光業者だけが儲かるのではないかという話になってしまう。トータルで物事を考えて、その中で外の人とどうつながっていくのかという、あるべき姿を議論することが重要だと思います。
(新潟会場 "観光"という言葉が誤解されやすいことについて。)
●米田 誠司氏
いつも元気ということはあり得なくて、停滞期があってもいいと思います。停滞期が大事なんです。その時期に、どうやって自分たちの力を次に備えていくか。外の仲間を見つけるとか、勉強だけしっかりしていくとか、そういう時期だと捉えると次に必ずつながります。
(山形会場 参加者の近況報告へのコメントとして。)
新しい仲間を増やすとき、地域にはいろんな力を持った人、会計が得意な人とか交渉が得意な人、人材は山ほどいますから、仲間を増やしていくための目線を向ける先を変えていくとかなり違う気がします。
(山形会場 参加者から仲間の増やし方を問われて。)
●本田 節氏
農商工連携や6次産業と言われていますが、生産から加工、販売まで、農山漁村の女性たちが昔からやっていたものです。暮らしの中から「これ、どうしてこうなるの?」という疑問や課題をクリアしていく"暮らしの知恵"に女性たちが長けていたんですね。
(山形会場 地域のお母さんたちが持っている経験、技、知恵を活かすことについて。)
ハローワークに「土日祭日・子供の病気・子供の行事最優先。子育て支援します」という求人を出したら、応募が殺到しました。働きたくてもフルタイムで働けないお母さんたちが、いっぱいいたんですね。それで今、子育て支援と高齢者の生涯現役という表裏一体の事業になり、食文化を伝えることもできるようになりました。
(山形会場 自身が代表を務めるコミュニティーレストランの事業について。)