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山形県庄内町

庄内町グリーン・ツーリズムの会

チーフパートナー/岡ア 昌之氏/法政大学 現代福祉学部 教授

庄内町グリーン・ツーリズムの会の課題

発足から3年が経過し、ツアーやイベントの実施、地域資源や農作業を洗い出して体験メニューを作成したりと、「庄内町グリーン・ツーリズムの会」では、グリーン・ツーリズムにおける一通りの“基礎”は経験済みです。一番の課題は、そこからもう一段階ステップアップする方策をまだ見い出していないということでした。対処法は、実践以外にありません。庄内町は町役場が率先してグリーン・ツーリズムの普及・促進に力を入れており、協力体制も万全で心強いので、より実践的な内容で解決に結びつけばと思います。また、町には特性が全く違う多様な地域があり、課題を分割することが大切ですが、実は旅行者側にとっては、庄内=ひとつの地域なのです。魅力的なツーリズムのためには酒田や鶴岡も含めた広域的な視点も必要となるでしょう。

岡ア 昌之氏

第1回派遣

【平成22年7月5日(月)〜7月6日(火)】

概要

1日目は庄内町余目第四公民館で、まちづくりパートナーの菊池新一氏、政所利子氏による講演と、活動にあたっての課題を参加者とともに議論する意見交換会が開かれました。菊池氏からは遠野の事例を地域の特性に沿って具体的に伝えていただき、政所氏には「Power up 庄内元気作戦」のタイトルで全国のさまざまな先行事例や動向を中心にお話いただきました。2日目は余目駅前の新堀農業倉庫や教育旅行受入れ先である農家、漬物工場など地域資源の視察後、これからの活動について話し合いが行われました。

【インタビュー】まちづくりパートナー /菊池 新一氏

●NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク マネージャー
グリーン・ツーリズムに対する都市の人々の需要は、ますます高まっています。しかし、一度受け入れてみたものの、継続ができないという悩みもよく耳にします。それは、受け入れ側が過度な準備や気遣いをして疲れ、訪れた側もそれに負担感を抱いてしまうことに起因しているように思います。遠野で打ち出しているのは、「体験」ではなく「体感」型のツーリズム。至れり尽くせりのおもてなしや、稲刈りなどのイベントよりも、何でもないいつもの暮らしぶりが、都市の人にとってはほっとする、癒しとなるのです。現在、遠野で農家民泊を実施しているのは120軒。「無理せず、楽しんでやる」がモットーです。そして、大切なのは「庄内らしさ」を見つけること、「人」という資源を掘り起こすこと。「できない」と最初から決めつけるのではなく、何ができるか、なぜ根付かないのか、粘り強く考えていく。そのお手伝いができればと思います。

まちづくりパートナー /菊池 新一氏

【インタビュー】庄内町グリーン・ツーリズムの会 会長 /小林 仁氏

庄内町の主産業は農業で、米、野菜、花、果物、養豚など、さまざまな生産活動が行われています。また、清流・立谷沢川が流れる立谷沢地区、清河八郎の生誕地であり芭蕉ゆかりの土地である清川地区、風力発電で知られる狩川地区、米どころ庄内の中心地・余目地区など、それぞれ特色のある地区があるものの、観光客数は山形県内で一番少なくなっています。そこで町では地域資源を活かしたグリーン・ツーリズムの普及に力を入れており、私たちの会も3年に渡って活動してきました。関心を持つ住民は多いのですが、なかなか活動が広がっていかないのが現状です。
菊池先生、政所先生のお話を伺い、具体的な取り組みのヒントをいただき、やる気になったメンバーは多いと思います。同時に、受け入れ態勢についてなど、課題も浮き彫りになりました。これを機に、中学生・高校生の農業体験など教育旅行を受け入れている「教育旅行等実行委員会」など、地元の連携体制を強固なものにし、幅広い世代に訴求するプログラムづくりや効果的なPR方法などを考えていきたいと思います。

庄内町グリーン・ツーリズムの会 会長/小林 仁氏

第2回派遣

【平成22年10月30日(土)〜10月31日(日)】

概要

庄内町におけるグリーン・ツーリズムの拡大を目指すなか、第1回元気塾では「自分達が楽しんで、できることから始めていく」ことの認識を共有しました。今回は、庄内町グリーン・ツーリズムの会の小林会長から「地域資源の再整理や住民が参加しやすい推進体制」などについて提案があり、その後、実践に向けた具体的な活動について意見交換が行われ、地元の雪祭りとタイアップして「食」をテーマにしたグリーン・ツーリズムを試行することとなりました。

【インタビュー】まちづくりパートナー 政所 利子氏

●(株)玄 代表取締役」インタビュー
庄内町は、月山、鳥海山を望む自然景観、米、野菜、川魚といった豊かな食材など、資源には事欠かない地域です。それを裏付けるように、意見交換会では多くのポイントが挙げられました。今回は女性から多く意見が出されましたが、特に食の話題となると、もう話が止まらないほどで、微笑ましく、また頼もしく思いました。でも考えすぎて「実はそうでもないのでは?」と、後ろ向きになってしまう傾向があるようです。さらにグリーン・ツーリズムを本格的に始めるには、十分な受け入れ体制をつくらなければいけないのではないか、との懸念もお持ちのようです。しかし、できるところからやればいいのです。忙しいときは、暇がある人とうまくスケジュール調整をすればいい。地域の食材がなかったら、あり合わせのものでつくればいい。そんな、ある意味「ルーズ」な感覚でいいんです。「ルーズ・フィット」という言葉があります。キチキチにすべてを決め込まなくても、うまく物事はおさまるものです。

まちづくりパートナー /政所 利子氏

【インタビュー】庄内町グリーン・ツーリズムの会事務局(庄内町 商工観光課 主査 兼 観光物産係長) /佐藤 博文氏

グリーン・ツーリズムの会は、もともと私たち商工観光課が、手探りで「グリーン・ツーリズムとはなにか?」を考え始め、そのなかで発足したものです。そのため商工観光課は、同会の事務局も兼ねており、普段から、さまざまに用意された体験プログラムの受付窓口も務めています。グリーン・ツーリズムの会は、現在会員は10名足らずですが、会長をはじめ皆が非常に熱心に活動しています。しかし、ややもすると自己満足に陥ってしまう危険性もあります。まちづくり元気塾では、専門家の方々にご意見を頂き、グリーン・ツーリズムのあるべき姿を見つけていきたいと思います。今回は、町の商工会のメンバーも参加してくれ「"町なか"でもできる体験プログラムも考えよう!」との声が上がり「大きく一歩前進した」と、確実な手応えを感じています。

庄内町グリーン・ツーリズムの会事務局(庄内町 商工観光課 主査 兼 観光物産係長)/佐藤 博文氏

第3回派遣

【平成23年2月20日(日)〜2月21日(月)】

概要

1日目は、立谷沢地区の大中島集落を中心に開催された「月の沢龍神街道 スノーアートフェスティバル」とジョイントし、第2回元気塾でテーマとなった「食」のワークショップ「郷土料理伝承会」が行われました。今回は地元参加者に加え、法政大学岡アゼミの学生もモニターとして参加。その調理法などを学ぶとともに、郷土料理を大切に伝えていく思いを持つ良い機会となりました。2日目は、今後の方向性の検討が行われ、食材の豊かなこの地域の一番の強みである郷土料理をより多くの人に伝承し、さらなる磨き上げを行っていくことなどが確認されました。

【インタビュー】庄内グリーン・ツーリズムの会 副会長 /高梨 美代子氏

今回は郷土料理伝承会で、調理の実演・指導をさせて頂きました。私は、普段から月の沢温泉北月山荘で調理スタッフとして働いているので、そこでお出ししている「青菜煮」や「どんごえ(イタドリ)の煮付け」「納豆汁」「いとこ煮」「ごま豆腐」などを紹介しました。グリーン・ツーリズムでは、特に「料理」は重要な部分だと思います。庄内には、昔から食されてきた郷土料理、家庭料理がたくさんあります。しかし、これらはしっかり後世に伝えないと、消滅してしまう可能性もあります。今回のような伝承会で、しっかり地域のなかでレシピを共有し、根づかせることが、農家民泊を希望するお客様の期待に応えることになるのだと思います。元気塾では、特に菊池先生の「無理をしないこと」という言葉が参考になりました。私自身「おもてなし」の気持ちが強いので、つい頑張って無理をしてしまいがち。まずは「自分が楽しむこと」。それが第一なのだと気づけたことは大きいです。

庄内グリーン・ツーリズムの会 副会長 /高梨 美代子氏

【インタビュー】東北電力(株) 酒田営業所 副所長 /阿部 正剛氏

庄内地方は海の幸、山の幸、また広大な平野部で穫れるお米をはじめとした多彩な農作物など、非常に豊かな食材に恵まれたところです。そのなかで庄内町は、庄内地方の玄関口とも言える中心に位置していますが、酒田や鶴岡という大きな都市が近隣にあるせいか「通過されてしまう町」という傾向があるようです。今回のワークショップでは、普段私たちが何気なく食べている料理が、他の地域とは少し違う特徴のあるものだということが、岡アゼミの学生の方々など、参加者の声からわかりました。まさに私たちは「庄内人なのだな」と感慨を新たにしました。まちづくりには、いろいろな姿があると思います。最近では「B-1グランプリ」など、ご当地グルメでまちの活性化を図っているところもあります。庄内町では、グリーン・ツーリズムによるまちおこしを方策のひとつとして考えていますが、郷土料理にこれほど独自性があるのは、大きなアドバンテージだと思います。この庄内町での取組みが、まちづくり元気塾の代表的な成功例になればいいと、私は心から願っています。

東北電力(株) 酒田営業所 副所長 /阿部 正剛氏
チーフパートナー/岡ア 昌之氏/法政大学 現代福祉学部 教授

3回の派遣を終えて

もともと庄内町では、中高生を対象とした「教育旅行」の受け入れに力を入れており、農業体験を行う場として町内の農家との関係づくりを進めてきました。庄内町グリーン・ツーリズムの会も、こうした背景から生まれてきたわけですが、今回のまちづくり元気塾では、そのさらなる拡大を目的に支援を開始しました。抱えていた課題として、「一般の観光客によるグリーン・ツーリズムが進展しない」「受け入れに賛同する農家が増えない」などがありました。実際に、私たちが視察すると、立谷沢川沿いの景観は非常に風光明媚であるし、その上流にある月の沢温泉北月山荘では、郷土料理を中心とした食事が非常に人気を得ているという。もっと中高年向けにプログラムを整備し、実践していけば、グリーン・ツーリズムの活性化も、そう難しくはない。そんな見通しが立ったため、岩手県遠野で農家民泊120軒という実績を持つ菊池氏と、地域の素材を活かした料理や商品開発の専門家である政所氏をパートナーに招きました。菊池氏からは、農家の方々が本業をおろそかにしない「無理をしない」農家民泊のあり方が提示され、意識の変化が見られました。また政所氏のリードで、郷土料理レシピの整備も進みました。結果として、第3回派遣において、地域の方々と郷土料理を伝承していく体制を築けたことは、大きな成果だったと思います。都会の生活に慣れた学生たちの意見も、非常に刺激に、また参考になったと思います。とにかく、一つひとつ実践を重ねていくこと、それが一番重要なことです。

岡ア 昌之氏

庄内町グリーン・ツーリズム パートナー紹介

チーフパートナー

岡ア 昌之氏 法政大学 現代福祉学部 教授

岡山市出身。早稲田大学卒業。(財)日本地域開発センター企画調査部長、福井県立大学教授を経て平成13年より現職。専門分野は地域経営論、地域ツーリズム論等。まちづくり元気塾:山形県小国町(平成18年)、秋田県北秋田市(平成19年)、山形県東置賜郡川西町(平成20年度)、福島県大沼郡金山町(平成21年度)を担当。

岡ア 昌之氏

まちづくりパートナー

菊池 新一氏 NPO法人 遠野山・里・暮らしネットワーク マネージャー

岩手県出身。遠野市役所職員として、道の駅「遠野風の丘」の立ち上げ・運営、中心市街地のショッピングセンター「とぴあ」の再生、遠野型グリーン・ツーリズムの実践に携わる。早期退職後、NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク設立。

菊池 新一氏

まちづくりパートナー

政所 利子氏 (株)玄 代表取締役

東京都出身。跡見学園短期大学卒。PR誌「メイト」編集長、クリスチャン・ディオールコスチュームデザイナー等を経て、昭和63年、まちおこし支援を行う株式会社玄を設立。

政所 利子氏

「庄内町グリーン・ツーリズムの会」とは

平成18年12月から平成19年3月に庄内町産業課が企画した「庄内町グリーン・ツーリズム達人講座」出席者により、平成19年5月発足。同年10月に羽黒古道散策や餅つき、ソバ打ち体験などの1泊2日のツアーを実施した。以後、赤かぶや柿の収穫・加工体験を組み合わせたツアーを企画。平成20年度には地域資源や農作業を調査、整理し、体験メニューを作成。研修会や講演会などを積極的に開催し、庄内町におけるグリーン・ツーリズムの推進を担っている。

※本文中に記載の役職等は、当時のものです。