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青森県 つがる市

あそびの学校

チーフパートナー/橋立 達夫氏 作新学院大学 総合政策学部 教授

あそびの学校の課題

今回は、学童保育を中心に活動している「あそびの学校」の活性化がテーマです。まちづくり元気塾で「子ども」をテーマとするのは、これが初めてです。農山村集落や商店街の活性化とは趣を異にしますが、子育ては、まちづくりの中心テーマのひとつです。地域の活性化には、なにより人材が重要ですが、子どもの頃に地域の風土のなかで遊び、いい「思い出」をたくさんつくることが、地域への愛着につながり、地元に留まる、あるいは一度出て行っても帰ってくる要因になります。また子どもは地域の宝ですから、取り巻く大人たちのまちづくり活動にも熱が入ります。今回の元気塾はこのつがるの地で、地域ぐるみの子育ての方法を、親も地域の方々もみんなで考えるきっかけにしたいと思っています。

橋立 達夫氏

第1回派遣

【平成22年9月4日(土)〜9月5日(日)】

概要

地域の方々にあそびの学校を広く知ってもらうことを目的に、つがる市内の月見野地区を拠点に活動を展開する「里山森林ボランティアグループ」代表 佐藤氏の自宅およびそのすぐ裏手にある溜池を会場に「自然あそび教室」を実施。近隣の木造地区や五所川原市から10家族が参加し、「魚つり」「木工教室」「郷土料理(笹餅)づくり」に加え、まちづくりパートナーのハローウッズ土田氏の指導のもと「薪割り」「火起こし」などを行い、自然遊びを体験した。

【インタビュー】まちづくりパートナー /土田 豊氏

●(株)モビリティランド ツインリンクもてぎ ハローウッズ課
ハローウッズは、HONDAが「ツインリンクもてぎ」周辺に広がる里山を利用した「森の発見・体験ミュージアム」です。本物の自然や虫、動物たちと触れ合うことができ、私たちキャストは、森あそび、ものづくり、キャンプなどのプログラムを通して、参加者のみなさんに「気づきと学び」の機会を提供しています。これらのプログラムのなかでは「お父さん」の役割が非常に大事です。お父さんが本気になって遊ぶ姿を見て、子どもたちはいろいろなことを学びます。今回の「自然あそび」も、普段忙しいお父さんたちが、子どもと自然のなかで遊ぶ契機になればと思います。いま子どもの世界には“3間”が足りないといわれています。空間、時間、仲間です。自由に遊べる場所が少ない。公園はあるけれど、塾通いなどで遊ぶ時間がない。そして、少子化の影響もあり近所に遊ぶ仲間がいない。子どもたちの遊ぶ環境を、周りの大人たちがもう一度見つめなおしてみてはいかがでしょう。

まちづくりパートナー /土田 豊氏

【インタビュー】あそびの学校 統括責任者 /三上 久子氏

あそびの学校に、いま一番必要なのはボランティアスタッフです。スタッフがもっと集まらない限りは、施設の活動に、より大きな広がりを持たせることはできませんし、悪くすると存続も危ぶまれます。日頃から一同で頭を悩ませていますが、それでは限界があると思い、今回は「まちづくり元気塾」の専門家の方々のお知恵を拝借したいと思いました。これまでも子どもたちが売り手として参加するフリーマーケットなどのイベントも開催してきましたが、やはり私たちの活動を知ってもらうには、地域を巻き込んだイベントが大切なのだと思いました。「自然あそび」には、10家族が参加してくれましたが、子どもだけでなく、お父さんやお母さん方も大変楽しんでくれました。あそびは、汗をかく、工夫することなどにより、さまざまな知恵を子どもたちに授けます。今後は、あそびの学校の活動を通じて、そうした意義をお父さん・お母さん方と共に考え、広められればいいと思っています。

あそびの学校 統括責任者 /三上 久子氏

第2回派遣

【平成22年11月13日(土)〜11月14日(日)】

概要

今後の方向性を模索するなか、まず1日目は「あそびの学校」が丸山地区においてどう認識されているか把握するため、周辺住民を集めた意見交換会が開かれました。市街地からは、平成20年度に元気塾で応援したつがる市商工会も参加し、同施設の機能・あり方などについて話し合われました。2日目は前回の「自然あそび教室」が好評だったこともあり、今回も土田氏指導のもと、空き缶でご飯を炊く「炊飯体験」を実施。炊きあがったご飯は篠竹の先につけ、味噌を塗って郷土料理のキリタンポにしました。参加者からは「大人も知らないあそびのアイデアがあって面白い」「また自然あそびをやってほしい」との声が多く聞かれました。

【インタビュー】まちづくりパートナー /檜槇 貢氏

●弘前大学大学院 地域社会研究科 教授
日本は成熟社会を迎え、結果として「縮小化」が進みました。そのため、これまで整備され機能してきた公共施設は、部分的に役割を終え、いまその後処理をどうするかが、全国で課題になり始めています。「少子化」は縮小化の最たる現象です。利用者の減少により公立丸山保育所は廃止され、その後、有志により学童保育・地域交流施設として生まれ変わりましたが、維持・存続、施設としての意義を問い直すと、どう活用するのがベストなのか、答えはそう簡単には出ません。そういう意味で「あそび」をテーマに活性化を図ろうとする今回の試みは、一つの方向性を探れる可能性に富んだものだと思います。またこの地域の多くの家庭は、高度成長期に出稼ぎに出ており、現在子育てをしている親たちは、子どもの頃、親との関わりが希薄でした。あそびの学校での「あそび体験」は、親子であそぶ文化の少ないこの地域の特性にも根ざした、意義あるプログラムだと思います。

まちづくりパートナー /檜槇 貢氏

【インタビュー】つがる市議会議員 /成田 克子氏

私は以前から、市街にある児童館などで、子どもに対するボランティア活動として「本の読み聞かせ」や「郷土カルタの読み手」などを務めてきました。そうした関係から、丸山保育所長を務めていた三上さんとも、古くから昵懇でした。しかし今回、保育所廃止後の「あそびの学校」が、利用者の減少やスタッフ不足から、窮地にあることを知り、この元気塾の意見交換会に馳せ参じました! やはり、地域に根ざしたサービスを提供する場合、広くその活動を知ってもらうことが必要だと思います。あそびの学校は、市街地から離れていますが、いまはクルマの運転ができるお爺ちゃん、お婆ちゃんもたくさんいます。そうした人々にサポートしてもらえば、市街の子どもを受け入れることもできます。市議という立場からは、今後はより広くあそびの学校をPRし、支援できればと思っています。また私人としては、お菓子づくりが得意なので、お菓子づくり体験などで、子どもたちと「あそびたい」と思います。

つがる市議会議員 /成田 克子氏

第3回派遣

【平成23年1月22日(土)〜1月23日(日)】

概要

「あそびの学校」を維持し、津軽地域で共有していく方法を模索するため、1日目はつがる市木造地区の街の駅「あるびょん」において、地域住民を集めたワークショップが開かれました。「話題提供者」として地域のボランティア、子育て支援の団体も参加。意見交換会を行うなかで問題の共有が進み、より強固な協働体制が築かれました。2日目は「あそびの学校」出前教室を開催。コミュニケーションを深める「親子リズムエクササイズ」や「親子でドキドキワクワクゲーム」「読み聞かせ」「もちつき」などが行われました。

※あるびょん:
平成20年度まちづくり元気塾で活動したメンバーが中心となって運営する中心市街地活性化施設。

【インタビュー】
東北電力(株)五所川原営業所 副所長 /藤田 壽雄氏

施設を存続させていくには「ヒト・モノ・カネ」が必要になりますが、現在「あそびの学校」は利用者の減少による赤字経営、開校日の制限、ボランティアを含むスタッフの不足など、さまざまな面から経営難に陥っています。こうした局面を打開するには、今回の「あるびょん」での出張教室のような、丸山地区を飛び出し、他地域を巻き込んだ活動が必要になってくると思います。また今回の元気塾に参加してくれた里山森林ボランティア(第1回では「自然あそび教室」の会場を提供)など、さまざまな団体と連携し、課題を共有していくことが重要だと思います。ワークショップでは、企業の経営課題解決に用いられる「SWOT分析」を使い、「S:Strength(強み)」「W:Weakness(弱み)」「O:Opportunity(可能性)」「T:Threat(脅威)」の4点について評価することで「あそびの学校」の課題を分析・検討することができ、解決へ向けたヒントが得られたのではないでしょうか。地元の東北電力営業所として、私たちも地域の子育てを元気にするため、積極的にお手伝いしてまいります!

東北電力(株)五所川原営業所 副所長 藤田 壽雄氏

【インタビュー】あそびの学校 統括責任者 /三上 久子氏

今回ワークショプでやっていただいた「SWOT分析」は、みんなで問題を考えていくのにとてもいい方法だと思いました。話し合いを持つことは大切ですが、その内容を残さなければ意味がありません。文書化するのが一般的ですが、とかく文章は書き手の技量で内容に差が出てしまうので、カードに書き留め、それを貼り出して一覧できるこの手法はとてもいいと思いました。今後も「あそびの学校」の強み、弱みなどを分析するため、要所要所で用いたいと思います。 3回の元気塾を通じて、いろいろなことを学びました。私は幼児教育の専門家ですが「親子であそぶ」プログラムとなると、また違った技術が必要になります。そういう意味でハローウッズの土田さんの自然あそびやゲームは大いに参考になりました。また一人では何もできない、多くの人と協働していくことが大切なのだと身にしみてわかりました。いろいろな団体が理解を示してくださったいま、間を置かずネットワークづくりに本腰を入れたいと思います。

あそびの学校 統括責任者 三上 久子氏
チーフパートナー/橋立 達夫氏 作新学院大学 総合政策学部 教授

3回の派遣を終えて

丸山地区で学童保育施設「あそびの学校」を運営し、地域の子育ての課題に、民間の立場から取り組んでいる三上久子氏のサポートを目的に元気塾はスタート。まず、利用者減による経営の問題があり、これを考えるには利用者、特に保護者の意見を聞くことが必要でした。そのため第1回から3回を通して、親子で遊べる、特に父親と遊べるイベントを企画、参加してくれた親たちと意見交換をしていきました。しかし、実際には普段「あそびの学校」を利用している親子のイベントへの参加は少なく、集まってくれたのは、他地域の親子がほとんどという現実がありました。そこで施設の存続も含め「あそびの学校」をどう考えるかというアンケートを実施。元気塾を進めるなかで見えてきたひとつの方向性は、学童保育に留まらず「あそびの学校」の名の通り、津軽地域に「あそびの技術」を広く伝えていく組織へと進化していくことでした。そのため今回はハローウッズの協力も得、「あそびのプログラムの技術移転」という試みもしたわけです。さらに平成20年度に元気塾でお手伝いした「つがる市商工会」との連携も視野に入れていました。第3回は、同商工会も深く関わる街の駅「あるびょん」で実施。運営組織の「NPO法人元気おたすけ隊」をはじめ、多くのボランティア、子育て支援組織の面々が集まってくれました。ここで課題の共有化が行われ、「あそびの学校」を本格的にサポートしていく組織も結成されました。「あそびの学校」を利用している子どもたちは、本当に元気いっぱいに遊んでいます。この火を消してはいけないのではないかと、感じています。

橋立 達夫氏

あそびの学校 パートナー紹介

チーフパートナー

橋立 達夫氏 作新学院大学 総合政策学部 教授

東京都出身。千葉大学大学院終了後、民間研究機関などで、全国のまちづくりに寄与。平成12年4月より現職。まちづくり元気塾:新潟県南魚沼市(平成18年)、福島県三島町(平成19年)、岩手県花巻市(平成20年度)、秋田県仙北市(平成21年度)を担当。

橋立 達夫氏

まちづくりパートナー

檜槇 貢氏  弘前大学大学院 地域社会研究科 教授

長崎県出身。博士(人間福祉・法政大学)、市民的地域社会を中心とした地域政策を研究。平成21年度には日本都市学会賞を受賞。平成19年度から現職。平成20年5月から22年4月まで弘前大学地域共同研究センター長。まちづくり元気塾:青森県つがる市(平成20年度)を担当

檜槇 貢氏

まちづくりパートナー

土田 豊氏  (株)モビリティランド ツインリンクもてぎ ハローウッズ課

徳島県出身。順天堂大学体育学部卒、日本体育大学大学院体育研究科修了。平成7年、徳島県海部町が施行した「ふるさと教員制度」のふるさと教員として10年間勤務。学校と地域の融合を進める役割を担い、地域の方々を巻き込んだ学校教育の推進に努めた。平成17年より現職。

土田 豊氏

「あそびの学校」とは

平成20年4月、廃止となった、つがる市木造丸山の丸山保育所を、元同保育所長の三上氏が市から無償で借り受け、学童保育を中心とした多目的施設として開設したもの。その運営は三上氏他、ボランティアスタッフで成り立っている。遊びは、ドッジボールや砂場遊び、積み木遊びなどだが「子どもたちの自主性」に主眼が置かれている。地域の老人クラブなども利用しており、世代間交流の場ともなっている。

※本文中に記載の役職等は、当時のものです。