プレスリリース

原子力品質保証体制総点検の結果について

平成18年8月23日

 当社は、原子力安全・保安院からの指示文書「原子力発電所の品質保証体制の総点検について(平成18年7月7日付)」、ならびに宮城県、女川町および石巻市等からの要請を受け、当社の原子力品質保証体制に関する総点検および実効的な再発防止対策の検討を行ってまいりました。
 本日、検討結果を取りまとめ、原子力安全・保安院および関係する自治体へ報告いたしましたので、その概要についてお知らせいたします。

  1. 原子力品質保証体制総点検の体制(別紙1参照
     事実の確認、根本原因の究明および再発防止対策の立案を行うため、社長を委員長とする「原子力品質保証体制総点検委員会」を設置するとともに、検討の効率性・実効性を高めるため、この委員会の下に「事実確認チーム」および「再発防止対策立案チーム」を設け、詳細な検討を行いました。
  2. 点検対象事象(別紙2参照(PDFファイル)
     原子力安全・保安院からの指示文書において指摘を受けた各事象に加え、総点検中に判明した「女川2号機における制御棒および燃料支持金具の入れ違い」、および、8月3日に発生した「女川2号機トーラス室における漏えい」についても、品質保証上問題のある事象であることから、今回の点検対象に加えることといたしました。
    • (1)女川原子力発電所における配管肉厚管理の不徹底(事象①)
    • (2)女川原子力発電所3号機第3回定期事業者検査に係わる定期安全管理審査のC評定
      • a.配管のライン番号誤表示による不適切な配管肉厚管理
        (a)配管のライン番号誤表示(事象②)
        (b)不適合の不適切な管理(事象③)
      • b.補助ボイラー負荷検査における検査前確認の不徹底(事象④)
    • (3)東芝製給水流量計問題に係わる検討過程での不適切な対応
      • a.再発防止対策検討会の解散時期(事象⑤)
      • b.再発防止対策再評価前の調達先選定(事象⑥)
    • (4)女川2号機 制御棒および燃料支持金具の入れ違い(事象⑦)
    • (5)女川2号機 トーラス室における漏えい(事象⑧)
  3. 各事象に係わる根本原因の分析および個別再発防止対策の立案(別紙2参照(PDFファイル)
     前記2.の各事象について、経営層を含む関係者への聞き取り調査等により事実関係を明らかにした上で、事象の発生を防止できなかった原因について詳細な分析を行い、各事象に関する個別の再発防止対策を立案いたしました。
  4. 背景要因(組織的要因)の抽出(別紙3参照(PDFファイル)
     当社の原子力品質保証体制を強化するためには、各事象に関する個別の再発防止対策を立案・実行するだけではなく、その背景にある組織的な要因を抽出し、抜本的な対策を講じることが必要であります。こうした考えに基づき、前記3.の検討をさらに深めた結果、以下の5点の組織風土に係わる問題点が浮き彫りとなりました。

    • (1)トップマネジメントのコミットメント(方針・指示)に対する重要性の認識不足
       当社では、平成16年に「原子力安全に関する品質方針」を定め、「安全確保最優先の意識の高揚」に努めるとともに、原子力発電所の品質保証活動について評価するマネジメントレビューの結果を踏まえて、具体的な指示を出してきました。しかしながら、トップマネジメントおよび経営層は、安全文化の意識浸透に対するリーダーシップの発揮が必ずしも十分ではなく、同時に、原子力部門としても、その重要性に対する認識が不足していたものと認識しています。
       また、トップマネジメントが適切に指示を発するためには、それまでの活動に対する評価や監査が適切に行われていることが不可欠でありますが、こうした点についても取組みが不足していた面がありました。
    • (2)事故・トラブル事象など、事象の重要性に対する危機意識の低下
       当社原子力発電所は、昭和59年の女川原子力発電所1号機の運転開始以来、大きなトラブルもなく比較的順調に運転を継続してきたことから、他社プラントのトラブル事象等の重要性に対する危機意識が次第に低下してきた面がありました。
    • (3)調達業務に対する厳格な管理意識の低下
       原子力発電所の安全・安定運転には、設備・機器の購入、請負工事、委託業務といった調達業務の供給者であるメーカーとの協力体制が不可欠であり、これまでの調達実績を通じ緊密な協力体制が構築される一方、メーカーに過度に依存する体質が形成され、調達業務に対する当社の管理意識が低下していた面がありました。
    • (4)環境変化に対応するための適切な体制構築と資源投入不足
       当社原子力部門には、「東通原子力発電所1号機の運転開始に伴う2サイト体制への移行」および「新検査制度の導入」という、2つの大きな環境変化がありました。
       当社では、この変化に伴う業務量の増加に対し、人員を強化し対応してきましたが、人員投入が不足したため現場における繁忙感が解消できない状態を招いていました。また、こうした人員強化に伴う現場の若年化も、各事象の背景にあったことが認められました。
    • (5)慣行優先の業務運営
       当社原子力部門では、本店と原子力発電所が密接な協力体制のもとで発電所の運営を継続してきたために、明確な指示や文書がなくても業務が進められると考える体質など、望ましくない組織風土が拡がってきたものと考えられます。
  5. 組織的要因に係わる再発防止対策の策定(別紙3参照(PDFファイル)
     前記4.の背景要因(組織的要因)を生んだのは、「安全文化の浸透に対する経営層および原子力部長や発電所長といったミドルマネジメントのリーダーシップが十分に発揮されなかったこと」、「組織全体において原子力安全の重視に対する意識が低下してきたこと」などの組織風土上の問題が影響しているものと考えています。
     このため、本年を「原子力発電所の品質保証に係わる意識改革元年」と位置付け、経営層および社員全員が一丸となって新たな原子力品質マネジメントシステム(QMS)の展開に向けて、以下のとおり組織的要因に係わる再発防止対策を策定いたしました。

    • (1)「トップマネジメントのコミットメント(方針・指示)に対する重要性の認識不足」に対する再発防止対策
       社長が、実態を正確に把握した上で的確な方針・指示を示すとともに、ミドルマネジメントのリーダーシップのもと、社員一人ひとりが、この方針・指示に基づいて業務の計画・実行に当たるよう、以下の対策を講じます。
      【安全文化の浸透・定着方法の改善】
        ①経営方針における安全最優先の明確化と決意の表明
        ②「原子力安全に関する品質方針」の抜本的改正
        ③最高経営層と現場の直接対話活動の強化
      【内部監査体制等の充実・強化】
        ④内部監査組織の強化(原子力考査室の設置)
        ⑤原子力品質保証室の新設
        ⑥原子力安全推進会議議長を社長へ変更
        ⑦外部監査機関による監査
    • (2)「事故・トラブル事象など、事象の重要性に対する危機意識の低下」に対する再発防止対策
       自社・他社プラントで発生した事故・トラブル事象等の情報を的確に収集するとともに、安全に係わる重要な情報として経営層をはじめ社内で共有化し、組織全体として適切に対応するよう、以下の対策を講じます。
      【事故・トラブル等に対する予防処置の徹底】
        ⑧原子力安全・保安院指示文書受領時の対応方法の明確化
        ⑨当社プラントに関する情報伝達ルールの明確化
        ⑩他社プラントに関する情報伝達ルールの明確化
    • (3)「調達業務に対する厳格な管理意識の低下」に対する再発防止対策
       原子力発電所の機器・設備、工事、調査等に係わる調達業務は、原子力発電所の安全を確保する上で極めて重要なものであることから、その重要性についての意識改革を図るため、以下の対策を講じます。
      【調達管理に対する社員の意識改革等】
        ⑪調達管理に対する意識改革および調達管理要領の改正
    • (4)「環境変化に対応するための適切な体制構築と資源投入不足」に対する再発防止対策
       原子力発電所の安全確保のためには、原子力を取り巻く環境変化に応じて適切な体制を構築するとともに、必要な人的資源を効率的に投入する必要があることから、以下の対策を講じます。
      【最適人員配置の継続的検証および経営レベルの評価】
        ⑫経営資源(特に人的資源)の適正配分に関する評価・検証
        ⑬原子力安全推進会議の充実
    • (5)「慣行優先の業務運営」に対する再発防止対策
       昭和59年の女川原子力発電所1号機の運転開始以来、20年あまりの運転経験の中で形成された慣行優先の組織風土を改めるため、以下の対策を講じます。
      【慣行優先の業務運営に対する改善】
        ⑭各種教育等のさらなる充実による人材育成
        ⑮現行業務プロセスのレビューおよび改善
        ⑯不適合情報検討会の設置
      【社外の視点からの意見の反映】
        ⑰「原子力の安全と信頼に関する顧問会議」の継続的な開催
  6. 今後の取組み
     当社は、今後、「原子力品質保証体制総点検委員会」において、引き続き再発防止対策の実施状況および実効性をチェックし、再構築したQMSが十分に機能することを検証してまいります。
     また、有識者で構成する「原子力の安全と信頼に関する顧問会議」の中で幅広い助言等をいただきながら、QMSの自律的・継続的改善を目指すとともに、再発防止対策の実施状況については、関係自治体および地域の方々にも随時情報提供を行ってまいります。

    さらに、原子力全般に関して、積極的な情報公開と地域の方々とのコミュニケーションを大切にし、社員一丸となって原子力の信頼回復に向けて全力をあげて取組んでまいります。

以上

(別紙1)原子力品質保証総点検体制図
(別紙2)各事象の概要および個別再発防止対策(PDFファイル)
(別紙3)背景要因(組織的要因)および再発防止対策(PDFファイル)

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