送電線を用いた電力線搬送通信システムのデジタル化について
<国内初のデジタル送電線搬送電話端局装置の開発>

平成17年3月17日

 当社はこのたび、東北大学 安達文幸教授の技術指導のもと、関係会社の通研電気工業株式会社(本社:仙台市泉区明通3丁目9、取締役社長:平田和也)との共同研究により、送電線を伝送路とする保安通信用デジタル電力線搬送電話端局装置(以下、デジタル電搬装置)の開発と、実フィールドでの実証試験に国内で初めて成功し、装置実用化への見通しを得ることができました。

 当社では、遠隔地にある小規模発変電所の監視制御などに用いる保安通信回線については、主として送電線を伝送路とするアナログ電搬装置により構成しております。

 一方、近年、通信機器のデジタル化や、IP機器の急速な普及が進み、小規模発変電所においても、保安通信回線の高度情報化への対応が必要となってきております。

 今回開発したデジタル電搬装置は、同装置を既設のアナログ電搬装置と置換えるのみで、その他の伝送設備はそのまま活用しながら保安通信回線のデジタル化を 可能とするもので、低コストでデジタルネットワークを構築できることが特徴です。

 これまで、送電線を使用したデジタル伝送については、伝送時にデジタル信号間の干渉が著しいことや、雷等の外来雑音の影響を受けやすいことなどから、十分な伝送品質の確保が困難となっていました。このたびの開発においては、送電線路の雑音対策など各種デジタル信号処理技術を開発・適用したことにより、所要の回線品質を実現したものです。

 また、開発したデジタル電搬装置は、電波法で定められた利用可能周波数帯域内を5つに分割した任意の帯域を使用し、電話回線などの音声帯域アナログ信号と、ISDNのような64kbpsのデジタル信号を同時に伝送することが可能であります。
 さらに、伝送速度192kbpsでのデータ伝送が可能で、直接IPネットワークへ接続もできるため、本装置一台で目的に応じた様々なデジタルネットワークをフレキシブルに構築することができる、画期的な装置であります。

 今後は、製品仕様のデジタル電搬装置による実回線運用試験を1年間行い、平成18年度以降の設備導入に向けて、試験データの蓄積を図ることとしております。

 なお、開発したデジタル電搬装置のイメージと、装置の外観は別添のとおりです。

以上

【本装置で適用した主な技術】

*1 64QAMデジタル変調方式
    位相と振幅の情報を64値持つ、デジタル変調方式。

*2 独自インターリーバ方式(特許出願中)
    送信側では送信データ系列の順番を時間的に入替えて送信し、受信側では受信されたデータを元のデータ系列の順番に戻す方式で、通信路で発生する連続雑音の影響を分散させることができる。今回開発した方式は、送電線路の連続雑音の特性に対応させている。

*3 独自適応波形等化方式(特許出願中)
    送信したデジタル信号は、直接波(送信した信号)のほか、送電線路の分岐箇所などから発生する不要な遅延波を伴って受信側に到達する。本方式は、受信側において、この遅延波を自動的にキャンセルし直接波のみ抽出する方式で、デジタル信号間の干渉を無くすることが可能となる。今回開発した方式は、送電線路の遅延特性に対応し、雷などの外来雑音の影響を受けにくい対策を施している。

*4 エコーキャンセラ方式
    送受信に同じ伝送帯域を用い双方向の通信を行う方式。周波数の有効利用と、限られた帯域での伝送効率の向上に寄与することとなり、同時に伝送できるシステム数を2倍に増やすことが可能となる。