移動型SQUIDの開発について
〜大型設備の非破壊検査を可能にするコア技術を確立、実用化に向けて第一歩〜


平成16年8月31日

 当社はこのほど超電導量子干渉素子(SQUID) * 1を用いる非破壊検査技術 * 2について、これまで難しいと考えられてきた大型設備(広範囲)の検査への適用を可能にするコア技術の開発に成功いたしました。
 今回当社が開発した技術は、これまでSQUIDを固定して実施していた非破壊検査について、SQUID自体を動かしながら検査を実施することを可能とするもので、こうした技術の開発は世界最先端のものとなります。

 SQUIDは、磁気センサとして感度、分解能が極めて高いことから、非破壊検査をはじめ生体磁気、鉱物探査など幅広い分野で利活用に向けた研究開発が進められています。
 一方、SQUIDは高感度である反面、磁気ノイズの影響を受けやすく、仮に少しでもSQUIDを動かそうとすると、わずかな磁気成分の変化(例:地磁気)がノイズとして悪影響を及ぼし、磁気センサとして全く機能しなくなってしまう問題があります。このため、SQUIDを用いる非破壊検査では、従来からSQUIDを固定させ、検査対象物を動かして検査する方式が長年採用されてきました。こうしたことから、現在、主に研究用として市販されているSQUIDは、数十cm程度までの小型のものしか検査できず、 SQUIDを動かせないことがSQUIDを利用した非破壊検査の実用化を妨げる要因の一つとなっておりました。

 当社では平成13年度に、より高精度で利便性の高い非破壊検査技術の開発に着手し、この中で高感度な磁気センサであるSQUIDに着目し、実用化に向け技術的課題の解消に取り組んできました。

 このたび当社が開発した技術は、SQUID本体を動かしながら検査するためのコア技術です。今回開発した技術のポイントは、@SQUIDをスライドさせる際の振動の影響を抑えるためSQUID冷却用容器を小型化したこと、A磁気ノイズを入れないようにSQUIDの形状を工夫したこと、B主に低周波の磁気ノイズをカットする計測手法を開発したことの3点であります。これらの開発により、SQUIDを用いた非破壊検査において、メートル長の大型設備の検査が可能となり、実用化に向けて大きく前進することとなります。

 今後は、本技術のメリットが活かせる適用箇所を絞り込み、本技術をさらにレベルアップさせるための応用研究に取り組む計画としております。


* 1 超電導量子干渉素子(SQUID:Superconducting Quantum Interference Device)
 SQUIDは、ある温度を境に電気抵抗がゼロになる超電導の性質を利用した磁気センサです。現在開発されている磁気センサの中では、最も高感度の性能を有しています。

* 2 非破壊検査
 材料、構造物等を分解や破壊せずに検査する方法で、通常は稼働中や点検中に現場サイトに検査機器を持ち込んで設備の健全性を検査します。材料、構造物等に傷、劣化、材質の変化等が発生すると、物理的な(あるいは化学的)性質が変化します。その変化を非破壊的に音響、電磁気、光、放射線等を利用して検査するのが非破壊検査です。 SQUIDを用いる非破壊検査は、漏洩磁気探傷の一種です。

以上

別紙:開発した移動型SQUIDシステム