風氷雪害の防止対策に関する国際プロジェクトからの研究受託について
〜三次元シミュレーションを用いた送電線被害への対策検討に係る研究を受託〜

平成16年3月19日

 当社では、このほど、風氷雪害の防止対策に関する国際プロジェクト、WISMIG※1(ウィスミッグ)から、三次元シミュレーション※2を用いた送電線着氷雪被害への対策検討に係る研究を受託することとなりました。

 WISMIGは、1998年にカナダを襲ったアイス・ストーム※3を契機に、風氷雪による送電線被害の対策について検討するために発足した国際組織で、現在、北米の電力会社を中心に16社が加盟しており、日本からは唯一当社が参加しています。
 WISMIGでは、1999年度より、毎年、参加メンバーによって選出された風氷雪による送電線被害に関する研究テーマ5件程度について研究委託を行っております。

 当社は、昨年10月にモントリオールで開催されたWISMIGの定例会議において、三次元シミュレーションを用いた送電線雪害対策の研究成果を発表しておりますが、その技術が高く評価され、各国の研究機関からエントリーされた32のテーマの中から、2004年度のWISMIGプロジェクトの1つとして採用されることとなりました。

 当社は、この受託により、北米において風氷雪によって引き起こされる送電線動揺の発生状況、ならびに北米で使用されている対策品の効果を、三次元シミュレーションを用いて分析・評価することで、より効果的な送電線被害対策を提案していくこととなります。

 当社は、供給区域内に降雪量の多い地域を多数抱えることから、これまで、電力設備への雪の影響、とりわけ送電線への着雪による電線の動揺(ギャロッピング)や電線の垂下(垂れ下がり)等を軽減するため、順次、 難着雪リングの装着や ヒレ付き電線の開発・導入、 ねじれ防止ダンパ相間スペーサの取り付けなどの対策を実施し、供給支障事故の未然防止に努めてきました。
 しかし、このような対策をより効果的に進めていくためには、着雪や風などの様々な気象条件下における送電線の動きを正確に予測し、それを踏まえた最適な設備対策を講じる必要があります。

 このため、当社は、送電線の動きを容易にかつ正確に可視化できる三次元シミュレーションを開発、これを活用しながら雪害対策の研究を行ってきました。この研究の結果、雪の被害を受けた設備個所に対し最適な対策を講じることが可能になるとともに、予防保全の観点から、既設の送電線の類似設備個所、および新たに送電線を建設する際に雪害が予想される個所に対して、対策を講じることができるようになりました。

 当社としては、今回の研究受託を通して、このような当社保有の知見・ノウハウを提供し、海外での電力の安定供給に貢献していきたいと考えております。

 なお、今後は、契約の詳細について幹事社であるカナダ電気協会と協議することとしており、5月頃に受託契約を締結した後、研究を本格化し、12月には研究報告書を提出する予定です。

以上

<今後のスケジュール>
平成16年 5月
      10月
      12月
受託契約締結
受託研究経過報告
研究報告書提出

※1 WISMIG(Wind and Ice Storm Mitigation Interest Group)
     カナダ電気協会が主催する「風氷雪害の低減に関する国際プロジェクト」。
*カナダ電気協会
  
 現在まで多くの研究報告書を取りまとめている民間の研究団体。WISMIG以外にも数件の国際プロジェクトを主催。

※2 三次元シミュレーション
   (財)電力中央研究所が開発した解析プログラム「CAFSS(キャフス)」、当社が開発した入出力支援プログラム、およびこれらを活用し当社が培った技術・知見を用いて行う送電線動揺シミュレーション解析の総称。これを用いることで、着雪や風などの様々な気象条件下における送電線の動きを、容易にかつ正確に可視化できる。

※3 アイス・ストーム
   上空より地上の温度が低いため、過冷却雨が地上で一瞬にして凍りつく現象