9月定例社長記者会見概要

平成15年9月30日

 本日、私からは、経営効率化の一環といたしまして、このほど開発いたしました「火力発電所蒸気タービン主要部品の余寿命診断技術」につきまして、ご説明させていただきます。

○今夏の電力需要について

 その前に、今年の夏が記録的な冷夏でありましたことから、この冷夏が夏場の電力需要に及ぼした影響につきまして簡単に触れたいと思います。

 当社では、今年の夏場を迎えるにあたりまして、原子力発電所の停止が長期化していることを踏まえ、自社火力の補修期間の調整など、様々な追加供給対策を講じてまいりました。

 このような中、LNGの主力輸入先でありますインドネシア・アチェ州における独立紛争の再発等も踏まえ、電力供給に関する危機管理体制を一層強化する観点から、私を本部長とする「電力需給対策本部」を設置し、不測の事態に備える万全な体制を構築してまいりました。

 このようにして迎えました今年の夏は、当初の見通しでは、「気温は平年並みか少し高めになる」とのことでしたが、実際には梅雨明けも特定できず、日照不足が続くなど、記録的な冷夏となり、この結果、農作物への影響等も懸念されている状況になっております。

 参考までに申し上げますと、今年7月の最高気温は、新潟を含む県庁所在地七都市の平均で23.4℃と、記録的な冷夏であった平成5年をさらに下回り、過去30年間で最も低い最高気温となっております。

 また、8月につきましても、高気圧に覆われた上旬と下旬に、一時的に気温が上昇したものの、七都市平均では26.7℃と、前年および平年と比較しても大幅に下回っております。

 このような中、当社の発受電電力量の実績をみますと、前年同月との比較では、昨年の8月以降今年の6月まで11ヵ月連続して、プラスで推移してまいりました。

 しかし、今年7月は、マイナス7.5%、同じく8月はマイナス3.5%と、前年同月を大きく下回りました。特に7月のマイナス7.5%という数値は、夏場に最初に最大電力の更新を記録した昭和50年以降では、最も大きなマイナス幅であり、発受電電力量自体も平成10年当時の水準まで戻ったことになります。

 ちなみに、電力9社合計の発受電電力量につきましても、7月にマイナス12.7%となっており、過去最大の前年割れを記録しております。

 一方、今年の夏の当社の最大電力についてみますと、今夏の最大は、8月7日に記録した1,324万kWでありますが、平成12年8月1日に記録した過去最大の1,470万kWを、146万kW下回り、3年連続で夏場の最大電力の記録更新はなりませんでした。

 また、昨年の記録であります1,449万kWと比べますと125万kW下回り、率で申し上げると、マイナス8.6%というこの下げ幅は過去最大のものであります。

 なお、1日24時間の発受電電力量であります日電力量の実績につきましても、同様の傾向を示しております。

 また、景気動向との関係ではどうかという視点で、販売電力量の実績について産業用の動きを反映している大口電力の状況を見てみますと、7月が冷夏による空調需要の減少などもあり、マイナス0.9%と昨年6月以来13ヵ月ぶりに前年を下回りましたが、8月ではプラス0.2%とほぼ前年並みに戻しております。

 こうしたことから、電力需要の面からみる限りでは、企業の生産活動そのものは、鉄鋼の輸出向けを中心に底堅いものがあると考えております。いずれにいたしましても、当社としては、企業の生産活動を含めまして、今後の需要動向に引き続き注目してまいりたいと考えております。

 なお、上半期の電力需給実績につきましては、来月とりまとめてご説明させていただきます。

○火力発電所蒸気タービン主要部品に対する高精度余寿命診断技術の開発について

 それでは、本日のテーマであります「火力発電所蒸気タービン主要部品に対する高精度余寿命診断技術の開発」につきましてご説明いたします。

 すでに皆さまご存知のとおり、今般の電気事業制度改革により、電力市場は自由化範囲が段階的に拡大されていくこととなり、私ども電気事業を取り巻く経営環境は一層厳しくなることが予想されております。

 このため、当社では、価格競争力と経営基盤の強化を図るため、経営全般にわたる徹底した効率化を進めているところであります。それに関連してコスト削減につながる技術開発につきましても、積極的に取り組んでおります。

 こうした技術開発分野における効率化への取り組みの一環として、当社は、このほど経年化した火力発電所の蒸気タービン主要部品、具体的には車軸、車室、主要弁といった主要な部品についての余寿命を、高精度にしかも容易に診断することができる技術を開発いたしました。

 すでに皆さまご存知のとおり、火力発電所では、石炭やLNGといった燃料を燃やすことで水から蒸気に変え、この蒸気でタービンを回し電気を起こす仕組みになっておりますが、この火力発電所の蒸気の温度は500℃を超える高温ですので、蒸気タービン部品は、過酷な熱条件下にさらされることになります。

 このため、蒸気タービン部品には、高温特性に優れた特殊な鉄鋼合金材料を使用しておりますが、こうした部品でありましても、長時間高温にさられるために徐々に劣化していくこととなります。

 これまで、このような蒸気タービン部品の更新にあたりましては、新しい部品を強制的に劣化させたデータをもとに、余寿命を総合的に診断してまいりましたが、こうしたデータだけでは実機の部品の状態を正確に把握することが難しいという課題を抱えていました。

 このため、当社では、昭和60年から、実際のプラントで使用した廃棄部品を利用して劣化診断の精度の向上を図る研究を進め、技術検証を行い、実績を積み上げてきた経緯にあります。

 こうした中で、当社では、全部で23基ある火力発電ユニットのうち、運転時間が20万時間を超えるものが6基を数えるなど、火力発電所の経年化が進んでいる傾向にあります。

 また、電力設備保安規制の合理化を受けて、設備点検における自主保安体制の重要度も高まっております。

 このため、経年化した火力発電所の設備の余寿命をより実態に即して的確に把握し、最適な時期に補修あるいは設備更新を行うことが必要となっておりました。

 こうしたことから、当社では、昭和60年からの知見を踏まえ、平成9年より、経年化した火力発電所設備に関する余寿命診断技術の精度をさらに向上させるため、本格的に研究に取り組んでまいりました。

 高温にさらされる蒸気タービンの部品は、部品の表面と内部の温度差により熱応力が働き、徐々に劣化してまいりますが、経年化による部品のわずかな変形が、逆に応力を弱めることとなり、劣化するのを逆に防ぐという面もあります。

 今回の余寿命診断技術の開発にあたっては、タービン部品のこのような応力特性などにつきまして、実際に24万時間という非常に長期にわたり使用した仙台火力2号機の蒸気タービン廃棄部品をもとに、破壊検査等により解析を行い、当社独自のデータベースを作成したことが特徴であります。

 これにより、経年化したタービン部品の劣化状態をより的確に把握できることから、最適な部品の更新時期の設定が可能となり、設備運用コストを低減することができるものと期待しております。

 さらに、この詳細なデータベースをもとに、部品の劣化状態を短時間でしかも簡単に把握できる評価プログラムも開発いたしました。

 具体的には、運転時間や起動停止などの運転条件、評価する部品の温度や応力などの力学条件、および定期検査における部品の硬さの測定結果を入力することにより、非常に複雑な計算を要する部品の劣化評価を短時間で行うことが可能となりました。

 今回の診断技術は、蒸気タービン主要部品を対象にしておりますが、今後は火力発電所の他の部品へも適用できるよう、データベースの拡充を行い、既存設備の有効活用を図ってまいりたいと考えております。

 本日、私からは以上です。