東通原子力発電所1号炉『アクシデントマネジメント検討報告書』および
『確率論的安全評価報告書』の提出について

平成15年7月16日

 当社は、本日、『東通原子力発電所1号炉のアクシデントマネジメント検討報告書』および『東通原子力発電所1号炉の確率論的安全評価報告書』をとりまとめ、経済産業省へ提出しました。

 わが国の原子力発電所の安全性は、現状の安全規制により十分確保されており、シビアアクシデント(注1)発生の可能性は工学的には考えられない程度に小さくなっております。アクシデントマネジメントは、シビアアクシデントの発生防止、あるいはその影響を緩和するための運用・設備両面の対応策であり、従来の対策によって既に十分低くなっているリスクを、念には念を入れてさらに低減するための事業者の技術的知見に基づく措置であり、電気事業者が自主保安として整備するものです。

 『アクシデントマネジメント検討報告書』は、国からの自主的なアクシデントマネジメント整備の要請(平成4年7月)を受けて、東通原子力発電所1号炉におけるアクシデントマネジメントの実施方針をとりまとめたものです。
 本報告書では、「アクシデントマネジメント策選定の考え方」、アクシデントマネジメントが適切に行われるための「実施体制」、「手順書類」、「教育等」についてまとめております。

 今回選定したアクシデントマネジメントの内容は、シビアアクシデント研究および確率論的安全評価(注2)の実施等により得られた知見に基づき、現有の設備を最大限に活用することを考慮しました。具体的には、以下の各機能毎に有効な方策の手順化について検討を行うとともに、必要に応じて設備対策を実施しました(別紙参照)。
 東通原子力発電所1号炉においては、アクシデントマネジメントの考えを設計段階より取り入れ、当初からアクシデントマネジメント策を考慮した設備としております。

@ 原子炉停止機能の強化
  異常事象発生時において、原子炉が自動停止しない場合の影響を緩和するため、再循環ポンプを自動的に停止する機能および制御棒挿入機能を強化しました。
A 原子炉および格納容器への注水機能の強化
  非常用炉心冷却装置等が多重故障した場合でも、現有設備を活用して原子炉および格納容器へ注水・冷却を行えるようにしました。また、原子炉が高圧状態となった場合でも、自動で減圧する機能を強化し原子炉へ注水しやすくしました。
B 格納容器からの除熱機能の強化
  格納容器が過度に加圧され破損するおそれが生じた場合、これを防止するため格納容器からの除熱機能を向上させる目的で減圧するラインを設けました。
C 安全機能のサポート機能の強化
  安全機能を有効に機能させるための電源をプラント内で融通することで、電源供給能力を向上させました。
なお、これらの設備対策が現有の安全機能に影響を与えないことも確認しております。

また、実施体制、手順書類、教育等の整備方針は以下のとおりです。
@ 実施体制の整備
  実際に操作を行う中央制御室の運転員とは別に、適切な操作に関する検討や情報の一元管理等を行う支援組織を定めます。また、各組織の役割分担や責任者を明確に定めるとともに、組織が円滑に機能するための施設、設備類等の整備を実施します。
A 手順書類の整備
  運転員および支援組織がアクシデントマネジメント策に関する迅速かつ適切な選択を行い、運転員が適切に操作できるよう、それぞれの役割および事象の進展状況に応じた手順書類の整備を実施します。
B 教育等の実施
  運転員および支援組織の要員を対象として、それぞれの役割に応じた適切な教育等を定期的に実施します。

 一方、『確率論的安全評価報告書』については、今回選定したアクシデントマネジメント策の有効性を定量的に確認するため、アクシデントマネジメント策を考慮した確率論的安全評価を実施しました。
 本評価により、東通原子力発電所1号炉に対して選定したアクシデントマネジメント策が安全性向上に対して有効であることを確認しました。

 今回の報告に基づいたアクシデントマネジメントの整備を通じて、当社は原子力発電所の安全性を一層向上させるとともに、原子力発電に携わる者の安全意識のさらなる向上が図られるものと考えております。
 今後とも、このような活動を通して、原子力発電所の安全性に対する社会のより一層のご理解と信頼を得られるよう、継続して努力していきたいと考えております。

以 上

(注1) シビアアクシデント
   設計上考慮すべき事象を大幅に超える事象であって,安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却または反応度の制御ができない状態であり,炉心の重大な損傷に至る事象。
 シビアアクシデントは,原子力発電所に異常事態が発生し,更に多重に設けられている安全設備が次々と故障しなければ発生しないものであり,その発生の可能性は工学的には現実に起こるとは考えられないほど小さい。
(注2)確率論的安全評価
   確率論的安全評価は、発生確率が極めて小さく、事象の進展が多岐にわたる事象を検討する上で有効な方法。様々な異常の発生を仮定し、どのように事象が進んでいくかの道のりを安全装置などの故障の確率を割り当てて計算し、たどることにより、そのような事象の起こりやすさ、何が事象の進展を防止するために効果的であるかを調べるものである。