平成14年5月29日
当社は、本日、『女川原子力発電所のアクシデントマネジメント整備報告書』および『アクシデントマネジメント整備有効性評価報告書』をとりまとめ、経済産業省へ提出しました。
わが国の原子力発電所の安全性は、現状の安全規制により十分確保されており、シビアアクシデント(過酷事故)発生の可能性は工学的には考えられない程度に小さくなっております。アクシデントマネジメントは、シビアアクシデントの発生防止、あるいはその影響を緩和するための運用・設備両面の対応策であり、従来の対策によって既に十分低くなっているリスクを念には念を入れてさらに低減するための事業者の技術的知見に基づく措置であり、電気事業者が自主保安として整備するものです。
『アクシデントマネジメント整備報告書』は、平成4年7月に国からの自主的なアクシデントマネジメント整備の要請を受けて、平成6年3月(1・2号機)および平成7年6月(3号機)に提出したアクシデントマネジメント検討報告書の整備方針に基づき、整備した内容についてとりまとめたものです。
本報告書では、「アクシデントマネジメント策の整備実績」、アクシデントマネジメントが適切に行われるために整備した「実施体制」、「手順書類」、「教育等」についてまとめております。
今回整備したアクシデントマネジメントの内容は、シビアアクシデント研究および確率論的安全評価(注)の実施等により得られた知見に基づき、既存の設備を最大限に活用することを考慮しました。具体的には、以下の各機能毎に有効な方策について手順化を行うとともに、必要に応じて設備改造を実施しました(別紙参照)。
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原子炉停止機能の強化
異常事象発生時において、原子炉が自動停止しない場合の影響を緩和するため再循環ポンプを自動的に停止する機能および制御棒挿入機能を強化しました。 |
A
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原子炉および格納容器への注水機能の強化
非常用炉心冷却装置等が多重故障した場合でも、現有の設備を活用して原子炉および格納容器へ注水・冷却を行えるよう改善しました。また、原子炉が高圧状態となった場合でも、自動で減圧する機能を強化し原子炉へ注水しやすくしました。 |
B
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格納容器からの除熱機能の強化
格納容器が過度に加圧され破損するおそれが生じた場合、これを防止するため格納容器からの除熱機能を向上させる目的で、新たに減圧するラインを設けました。 |
C
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安全機能のサポート機能の強化
安全機能を有効的に機能させるための電源を隣接プラント間で融通し、電源供給能力を向上させました。 |
なお、これらの設備が既存の安全機能に悪影響を与えないことも確認しております。
また、実施体制、手順書類、教育等の整備は以下のとおりです。
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実施体制の整備
既存の組織との整合性を踏まえた上で、実際に対応操作を行う中央制御室の運転員とは別に、適切な対応操作に関する検討や情報の一元管理等を行う支援組織を定めました。また、各組織の役割分担や責任者を明確に定めるとともに、組織が円滑に活動を行うための施設、設備類等の整備を実施しました。 |
A
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手順書類の整備
運転員および支援組織がアクシデントマネジメント策に関する迅速かつ適切な選択を行い、運転員が対応操作を実施できるよう、それぞれの役割および事象の進展状況に応じた手順書類の整備を実施しました。 |
B
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教育等の実施
運転員および支援組織の要員を対象として、それぞれの役割に応じた適切な教育等を定期的に実施しております。 |
一方、『アクシデントマネジメント整備有効性評価報告書』については、BWRを所有する電力会社でとりまとめており、今回整備したアクシデントマネジメント策の有効性を定量的に確認するため、炉型毎に代表炉を選定し、アクシデントマネジメント策を考慮した確率論的安全評価を実施しました。また、代表炉と異なるアクシデントマネジメント策を整備したプラントについては個別に評価を実施しております。
女川原子力発電所では、代表炉と異なり、代替注水手段として復水補給水系と消火系に代わり復水補給水系とろ過水系を用いております。また、1号機では、BWR4代表炉と異なり安全機能のサポート機能に関するアクシデントマネジメント策として、非常用炉心冷却系等のポンプやディーゼル発電機などを冷却する非常用補機冷却系の強化を実施しております。
これらの評価により、わが国で運転されている全てのBWRについて、アクシデントマネジメント策の整備が安全性向上に対して有効であることを確認しました。
今回のアクシデントマネジメントの整備を通じて、当社は原子力発電所の安全性を一層向上させるとともに、原子力発電に携わる者の安全意識のさらなる向上が図られたものと考えております。
今後とも、このような活動を通して、原子力発電所の安全性に対する社会のより一層のご理解と信頼を得られるよう、継続して努力していきたいと考えております。
以 上
(注)
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確率論的安全評価 |
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確率論的安全評価は、発生確率が極めて小さく、事象の進展が多岐にわたる事象の検討を行う上で有効な方法です。様々な異常の発生を仮定し、どのように事象が進んでいくかの道のりを安全装置などの故障の確率を割り当てて計算し、たどることにより、そのような事象の起こりやすさ、何が事象の進展を防止するために効果的であるかを調べるものです。 |
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