温室効果ガス排出削減クレジットに
係わる海外炭購入について

〜京都メカニズムの活用に向けた新たな燃料調達を試行〜

平成13年10月31日

 当社は、このほど、地球環境保全を踏まえた新たな取り組みとして、オーストラリアの石炭供給会社「パワーコール社」および「センテニアルコール社」 との間で、それぞれ温室効果ガス排出削減クレジット(以下、「排出削減クレジット」)の取引を含めた石炭売買契約の締結について基本合意に達する見通しとなりました。
 環境面も考慮した燃料調達を通じた地球環境保全への貢献策を模索する中で、当社がかねてから石炭供給会社との間で検討を進めてきた結果、 石炭売買の長期契約を締結することによって温室効果ガス排出削減プロジェクトにも協力でき、 地球環境保全対策への一助となるという双方のメリットが合致したものです。

 本契約は、石炭の売買契約を締結することで、石炭供給会社が手がける温室効果ガス排出削減プロジェクトを通じて得られる排出削減クレジットについて、 将来の排出量取引など京都メカニズムの国際的運用ルールが確立されることを前提に、当社が購入できる権利を得るもので、 石炭と排出削減クレジットをセットとした取引契約は、世界的にも例を見ない試みとなります。

 当社が購入を予定している排出削減クレジットは、パワーコール社が主体となって実施する「メタンガス回収利用プロジェクト」 により得られる排出削減クレジット、および、センテニアルコール社がニューサウスウエールズ州政府と共同で実施する 「CO2吸収・固定化プログラム」により得られる排出削減クレジットです。
 両社とはそれぞれ、平成14年度から複数年にわたる石炭売買契約を締結することとしており、 今後、詳細な条件等について協議を行うこととしております。
 また、排出削減クレジットの購入時期や数量および価格等については、今後の国際動向やわが国の制度構築の進展状況を見極めながら交渉を進めていくこととしており、 石炭売買契約とは別途契約を締結することとしております。

 当社ではこれまで、地球温暖化の防止に向け、電気の安定供給と経済性を考慮しながら、原子力発電やLNG火力を中心とした電源開発をはじめ、 火力発電所の熱効率の向上、さらには新エネルギーの普及拡大など、CO2の排出抑制に積極的に取り組んでおります。
 一方、平成9年のCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)において採択された「京都議定書」では、 先進国の温室効果ガス排出削減のための措置として,「排出量取引」、「共同実施(JI)」、「クリーン開発メカニズム(CDM)」 などの京都メカニズムが盛り込まれました。
 京都メカニズムについては、現在モロッコで開催中のCOP7(気候変動枠組条約第7回締約国会議)で国際的な運用ルールについて交渉中であり、 その結果が注目されるところでありますが、温室効果ガス排出削減対策としてコスト効果が高く, 国内の排出削減対策の補完的な措置として有効であると期待されております。そのため、当社としてもグローバルな観点から、 オーストラリアでの植林事業や世界銀行炭素基金への参加など、先行的な取り組みを進めてきております。
 今回の基本合意は、こうした地球環境問題への取り組みの一環であり、 将来の京都メカニズムの活用に向けた検討における一つの選択肢として試行的に実施するものです。

 なお、温室効果ガス排出削減クレジットに係わる海外炭購入の概要は別紙のとおりです。

以 上




(別紙)

温室効果ガス排出削減クレジットに
係わる海外炭購入の概要


1.パワーコール社との石炭売買契約

(1) 契 約 先 : パワーコール社(本社:豪州ニューサウスウエールズ州)
(2) 契約期間 : 平成14年度〜(予定)
(3) 銘   柄 : パワーコール炭
(4) 取扱商社 : 住友商事株式会社
(5) 契約先が行う温室効果ガス排出削減プロジェクトの概要:

●メタンガス回収利用プロジェクト

: 石炭採掘時および採掘後に炭坑から発生するメタンガス(温室効果はCO2の21倍に相当)を回収するとともに、そのメタンガスを空気で希釈して火力発電のボイラーに吹き込み、石炭投入量を削減することにより温室効果ガスの排出量を抑える。

: 同プロジェクトによる温室効果ガス排出削減量(見込み)は最大で年間約160万トン(CO2換算)


2.センテニアルコール社との石炭売買契約

(1) 契 約 先 : センテニアルコール社(本社:豪州ニューサウスウエールズ州)
(2) 契約期間 : 平成14年度〜(予定)
(3) 銘   柄 : シャーボン炭
(4) 取扱商社 : 株式会社ジャパンエナジー
(5) 契約先が行う温室効果ガス排出削減プロジェクトの概要:

●CO2吸収・固定化プログラム

: 大気中のCO2の吸収・固定化と牧畜業のための経済的で持続可能な土地管理システム構築への貢献を目的としており、1,000haの土地に乾燥等に強く成長の早い潅木(ソルトブッシュ)を栽培し、CO2を吸収する

: 同プロジェクトによる温室効果ガス排出削減量(見込み)は年間約2万5千トン(CO2換算)

以 上




(参考)

当社における京都メカニズム活用に向けた
先行的取組み状況について


1.豪州植林事業(APFL社

 当社は1999年より豪州西オーストラリア州でユーカリの植林事業を行なうAPFL社に出資参加し,森林資源の保護と地球温暖化防止に貢献しております。
 APFL社は2022年まで合計26,000haの土地で植林事業を行い,その植林木を製紙原料として活用することにしており,2001年9月までに22,000ha余 (進捗率86%)の植林を完了しております。

【APFL社事業の概要】
(※APFL社:Albany Plantation Forest Company of Australia Pty. Ltd.)
(1) 出資者 : 王子製紙(51%),伊藤忠商事(29%),千趣会(15%),東北電力(5%)
(2) 最終事業規模(当初予定) : 約1億豪ドル
(3) 最終目標植林面積 : 26,000ha
(4) 事業期間 : 1993年 〜 2022年
(5) 植林地全体のCO2吸収想定量: 約48万t−CO2/年

2.世界銀行炭素基金(PCF

 当社は,CO2排出削減クレジットの取得およびプロジェクトの発掘,排出量認証手続きなどのノウハウを取得する目的で,PCFへ参加しております。
 PCFは,主要先進国や企業等からの拠出金をもとに,開発途上国や東欧諸国における温室効果ガス削減プロジェクトに投資し, そのプロジェクトの実施によって得られた排出削減量をクレジットとして拠出者に還元する国際的な取組みであり,地球規模での温暖化防止に貢献しております。

【PCFの概要】
(※PCF:Prototype Carbon Fund)
(1) 参加者:6政府18企業(日本国政府や当社など電力会社,商社等)
(2) 資金規模:総額1.5億米ドル(当社拠出金 1口 500万米ドル)
(3) 運用期間:2000年4月 〜 2012年12月
(4) CO2クレジット想定量(当社分):約90万t-CO2

以 上