お客さま設置用NAS電池の
実証試験計画について

〜日本で初めて瞬時電圧低下時の停止抑制制御方式を採用〜

平成13年2月13日


 当社はこのたび、日本ガイシ(株)および関係会社の(株)ユアテック、通研電気工業(株)、東北発電工業(株)との共同研究で、 お客さま設置用ナトリウム硫黄電池(NAS電池)の実証試験を開始することといたしました。
 平成13年度に出力200kW級(電池容量1,500kWh)のNAS電池を通研電気工業(株)本社ビル(仙台市泉区)に設置し、 平成13年10月より実証試験を行うこととしております。

 NAS電池は、一般に使用されている鉛電池に比べて、エネルギー密度が高く高効率で長期耐久性も優れており、また、 負荷平準化機器としての利用およびピークシフトによる契約電力低減や割安な深夜電力利用によるお客さまの電気料金削減メリットが期待されていることから、 お客さまへの設置の検討が進められている状況にあります。

 今回の実証試験システムは、NAS電池本体(50kW/375kWhのモジュール電池4台)と、 交流の受電設備に系統連系するための交直変換装置および系統連系装置、監視制御装置などにより構成されており、 システムの機能・経済性・負荷平準化効果の検証を行うとともに、瞬時電圧低下時の停止抑制制御方式、 および将来の分散型電源の増加に対応した遠隔監視制御方式の検証を行うものであります。

 特に、今回採用する瞬時電圧低下時の停止抑制制御方式は、当社と(株)日立製作所が共同で開発したもので、 落雷事故時等の瞬時電圧低下発生時にNAS電池システムの停止回数を減少できる新制御方式で、日本で初めて実証試験を行うものであります。

 当社は、平成8年7月より研究開発センター内に50kW級(電池容量400kWh)のNAS電池を設置、 基本性能の確認・負荷平準化対策としての有効性検証・運用ノウハウの蓄積を行っており、今回の実証試験は、 これまでの検証を踏まえ、実フィールドにおいて実用化の検証を行うことを目的としております。

 また、今後については、ESCO事業などへの展開も視野に入れながら検討を進めていくこととしております。

以 上



お客さま設置用ナトリウム硫黄電池(NAS電池)の実証試験概要


1.実証試験期間 平成13年10月から平成17年10月まで
2.設備設置場所 通研電気工業株式会社 本社ビル(屋外設置)
(仙台市泉区明通三丁目9番)
3.電池仕様 ・種  類  ナトリウム硫黄電池
・定格出力  200kW
・電池容量  1,500kWh
・充放電効率 83%
(直流端、1サイクル/日、保温エネルギーを含む)
・電池構成  50kW/375kWhモジュール×4台
・単電池本数 320本×4=1,280本
・大きさ   幅2.7m×奥行2.3m×高さ3.5m(屋外収納箱含む)
・重  量  15.6t(屋外収納箱含む)
4.研究項目

(1)お客さま設置用NAS電池システムの設計研究
 負荷追従運転や最適運転パターンなど負荷平準化に対応したお客さま設置用NAS電池システムについて研究する。

(2)NAS電池システムの運転研究
  1. 基本性能試験
     電池の容量、エネルギー効率、待機損失等の試験を行い電池の基本性能を把握する。
    1. 電池容量試験
      定期的に充放電試験を行い、電池容量の変化を把握する。
    2. エネルギー効率試験
      基本運転パターンや負荷追従運転による充放電を行い、エネルギー効率を評価するとともに、長期運転特性を評価する。 また、試験データからお客さまに合った最適な運転パターンについて評価する。
    3. 待機損失試験
      週末停止や夏期・年末の長期休暇等による長期放置による電池補機電力量を測定する。
  2. 運用・保守・信頼性の検証
     システムの起動停止、各種運転パターンによる充放電試験、停止抑制制御方式の機能検証、保護システム試験を行い、運用・保守・信頼性の検証を行う。
  3. 運転・保守技術の確立
     運転研究および保守点検の実施により、運転技術(無人運転対応)・保守技術等の運用ノウハウの蓄積を図る。また、遠隔監視技術の確立を行う。
(3)NAS電池システムの解析・評価研究
 運転研究等のデータを解析・評価し、経済性・信頼性・運用性を検討し、お客さま設置用NAS電池システムとしての有効性を検証する。 また、電力会社およびお客さまのNAS電池設置に伴うメリットを評価し、新たな電気料金メニューの検討等に活用する。

5.実証試験スケジュール



○ NAS電池の特徴

 NAS電池は、マイナス極にナトリウムを、プラス極に硫黄を、電解質に「ベータアルミナ」を用いております。
 このベータアルミナは、ナトリウムイオン伝導性を持つファインセラミックスで、高性能で耐久性に優れた固体電解質であり、 これによってプラス、マイナス両極を隔離しております。
 NAS電池は、鉛電池とは逆に、両極が液体、電解質が固体の電池です。
 充放電反応を円滑に進行させるため、両極が液体となる高温(300℃程度)に保持して充放電を行います。
 NAS電池は鉛電池に比べて、
  1. 電池体積あたり約3倍ものエネルギーを蓄えることができ、コンパクト性に優れている。
  2. 電解質が固体のため自己放電がない。
  3. 電気抵抗の小さなベータアルミナを使用するため電池の充放電効率が高い。
などの特徴があります。