マイクロガスタービン、固体高分子型
燃料電池の試験研究について

〜次世代タイプ熱電併給型小型分散型電源の実証試験開始〜

平成12年7月18日


当社は、次世代の分散型電源として注目を集めている、マイクロガスタービン(MGT)および固体高分子型燃料電池 (PEFC)の実証試験を開始することといたしましたのでお知らせいたします。

マイクロガスタービンにつきましては、当社新仙台火力発電所(仙台市宮城野区港五丁目2―1)構内に出力75kW (米国ハネウェル社製、灯油燃料)1台と、出力45kW(米国エリオット社製、天然ガス燃料)1台の計2台を設置し、 運転性能や技術的信頼性の確認、経済性や実用性の評価に加え、高圧配電線と系統連系を行い、 その影響を確認することとしており、7月21日から実証試験を開始いたします。

また、固体高分子型燃料電池につきましては、当社研究開発センター(仙台市青葉区中山七丁目2―1) 内に出力1kW(三洋電機製、水素ガス燃料)1台を設置し、性能、信頼性等の評価と、 発電機器としての技術的可能性を確認することとしており、7月21日から実証試験を開始いたします。

なお、それぞれの試験研究期間は平成13年度までの2年間を予定しています。

マイクロガスタービンおよび固体高分子型燃料電池の試験研究概要につきましては、別紙のとおりです。

以 上

(添付資料)
1.マイクロガスタービン(MGT)の試験研究概要 ・・・・・別紙1
2.固体高分子型燃料電池(PEFC)の試験研究概要 ・・・・・別紙2



別紙1


マイクロガスタービン(MGT)の試験研究概要


  1. 試験研究の目的
    MGTを設置し、運転試験を実施することにより、運転性能、技術的信頼性、系統連系に伴う影響等の確認、 および設置費、運転費等を把握し、システムとしての技術的ならびに経済性の評価を行うものです。

  2. MGTの概要
    MGTは、航空機エンジンや自動車エンジン技術がベースとなっており、これらの技術を転用したものです。

    (1)システム構成
    代表的な一般的システム構成は、次のとおりです。



    (2)技術的特徴
    1. 発電機(電動機)、圧縮機、タービンは1軸で構成され、高回転であり、インバータにより商用周波数に変換します。(減速機なし)
    2. 空気冷却のため、冷却水系統が不要です。
    3. 永久磁石発電機(電動機)の採用により、発電機とスタータが兼用しています。
    4. 液体燃料(軽油、灯油等)および気体燃料(天然ガス、LPG)が使用可能です。
    5. ディーゼルエンジン等に比べ低NOです。

  3. 試験概要
    (1)試験機器
    項 目 MGT1号機 MGT2号機
    メーカー名 ハネウェル社製 エリオット社製
    型 式 一軸再生式 一軸再生式
    出 力 75kW 45kW
    燃 料 灯油 天然ガス
    軸 受 空気軸受 油軸受
    回転数 65,000 rpm 100,000 rpm
    減速機
    発電機形式 同期 同期
    熱効率(LHV) 26% 25%
    排ガス温度(MGT出口) 240℃ 288℃
    騒音(メーカー仕様値) 65dBA(機側10m) 80dBA(機側1m)
    設置台数 1台 1台

    (2)排ガスボイラーの仕様
    項 目 MGT1号機用 MGT2号機用
    メーカー名 三浦工業(株) 荏原ボイラー(株)
    型式 簡易貫流ボイラー 簡易温水ボイラー
    入口ガス温度 約240℃ 約288℃
    出口ガス温度 約114℃ 約114℃
    温水流量 約3.87立方m/h 約3.20立方m/h
    入口温水温度 約60℃ 約70℃
    出口温水温度 約80℃ 約90℃
    交換熱量 約90kW 約74kW
    (設計時データ、参考値)

    (3)設置場所
    新仙台火力発電所構内
    (系統連系は、新仙台火力発電所構内の高圧配電線を介して行う。)

    (4)試験内容
    運転試験を行うことにより、次の項目を確認することとしています。
    1. 基本性能(発電出力・効率、電気的特性、起動停止特性)
    2. 運転操作性(起動停止、負荷変化)
    3. 保守性(保守容易性、部品寿命)
    4. 環境特性(排ガスNOx、騒音、振動)
    5. 熱供給特性(排ガス温度、熱出力等)
    6. 系統連系に伴う影響(系統電圧、電圧位相等)

    (5)スケジュール



以 上




別紙2


固体高分子型燃料電池(PEFC)の試験研究概要


  1. 試験研究の目的
    現在入手可能なPEFC機器を購入し、機器の単体試験を実施することにより、PEFCの現状の性能、信頼性、 運用性等を評価し、PEFC発電器の技術的可能性を評価することを目的としています。系統連系と改質ガスの使用は、 今回は実施いたしません。

  2. PEFCの概要
    PEFC (Polymer Electrolyte Fuel Cell) は、電解質にフッ素樹脂系の陽イオン交換膜を用いたもので、 エネルギー密度が高いためコンパクト化が可能であり、動作温度が100℃以下と低いため、起動が早い等の特徴があります。

    (1)システム構成
    図1 PEFCコジェネレーションシステムの基本構成

    (2)技術的特徴
    技術的な特徴は、次のとおりです。
    1. 体積あたりの出力密度が高い → コンパクト化
    2. 100℃程度の低温動作 → 早い起動、取り扱いが容易。
    3. 固体高分子電解質 → 電解質損失に伴う劣化が無い
    4. 環境調和性が高い (低NOX、低SOX、低騒音、低振動等)
    5. 燃料の多様性 (水素、天然ガス、プロパン、メタノール等。)

  3. 試験概要
    (1)試験機器
    現在、機器として入手可能なPEFCは、三洋電機製の1kW機器 (FCP-10KHA) 他、海外製品数種がありますが、 海外製品については購入後のメーカーサポートが難しいため、今回は、三洋電機製1kW機を購入し試験研究を行います。
    ただし、本機は非常用電源や作業用電源として開発された製品なので、系統連系運転は不可能です。 また、都市ガスから水素を製造する燃料改質器については、開発途上品であり、今回の評価対象には含まれておりません。

    表1 試験の対象とするPEFC
    項 目 仕 様 備 考
    定格出力 1kW AC 1.3kVA
    定格電圧 100V AC 50/60Hz
    電池 積層数 52
    定格電圧 0.6V/cell
    燃料利用率 95%
    燃 料 水素ガス
    起動時間 1分
    騒 音 40dBA
    安全装置 @水素漏れ、A振動、B過負荷

    (2)設置場所
    研究開発センター 新実験棟内

    (3)試験項目
    次の項目について、機器の単体試験として検証します。
    1. 機器の性能
      ・電池の電流-電圧特性
      ・全高調波歪み率
      ・効率(直流端、交流端)
      ・負荷応答性
    2. 機器の信頼性
      ・電池電圧の経時変化(定格電力、無負荷)
    3. 機器の運用性
      ・純水消費量
      ・異常時の安全性

    (4)スケジュール