三条市にあるこちらの施設は、居宅での生活や介護が困難な高齢者の方などを対象とした福祉施設です。「ほっと心が和む里、いつでも聞こえる笑い声」をキャッチフレーズに、80名を超えるスタッフが365日24時間体制で真心のサービスにあたっています。つかのめの里さまは平成22年に空調設備をガス焚冷温水発生機から「大温度差水蓄熱空調システム」にリニューアル。入所者の方々の快適性を向上させるとともに、施設運営面でのコスト削減・省力化が図れました。園長の村山裕子さんは、新システム導入の経緯を次のように振り返ります。
「施設竣工時に導入した空調システムは15年目頃から設定した温度にならないなどの故障が頻繁に起こるようになりました。その都度、メンテナンス会社に連絡して修理してもらっていましたが、週末だと対応してもらえず頭を抱えることも…。
このままだと入所者の方にご迷惑をおかけすることになる。そう思いリニューアルを決断しました。それが平成21年の秋のことです。当時は、ガスでの空調のリニューアルを考えていました。
というのも、この地区では電気の空調システムを導入したという前例が少なく、正直なところ選択肢に入っていませんでした。それに『電気は高い』という先入観もありましたし…。そんなときです、電化システムの提案をいただいたのは。話しを聞いて、低コストや環境へのやさしさ、管理のしやすさなど様々なメリットがあることを知り驚きました。」
その後、村山園長は、長岡市の電化システムを導入した福祉施設に視察に訪れるなど、計画は急ピッチで動き出しました。
「実際に利用している方々の話しを聞いてみて、コストや管理、環境への配慮など、本当に参考になりました。特にランニングコストの安さは魅力的でしたね。当施設に置き換えた場合、ガスと比較してイニシャルコスト(初期費用)が約3倍かかりますが、6年で回収できるという試算でしたし、メンテナンスコストも低く、長い目で見れば経済的だと思いました。それに、運転管理が簡単なのもうれしいメリット。しかも、ガス漏れや火災などの事故のリスクが少ないので安心ですし、地震の時でもライフラインとして電気の復旧が早いという実績も心強かったですね。電化のメリットを知れば知るほど、コレしかないという思いになりました。秋からリニューアル計画を始めたのですが、暑さが厳しくなる夏までにリニューアルしなければ、入所者の健康管理にも影響がでてくる。そう思い翌年の春には電化を決断。その選択は間違っていなかったと、今も確信しています。」
平成22年7月に夜間の安い時間帯の電力を利用する空調システムを導入。使用してみて実感した良さは、ランニングコストの安さ(31.1%削減)は当然ですが、予想以上に管理面や操作が容易だったことのようです。
「設備のランニングコストは当初の想定通りで、経済的で満足しています。それにも増して、管理のしやすさは大きなメリット。以前はわざわざ機械室に行って温度調整をしていたのですが、今は事務室での一元管理。わずらわしい業務から解放されました。それに、コンピュータで制御されているので、何かエラーが生じるとメンテナンス会社が遠隔操作で直してくれるので、安心感が違います。管理のしやすさは、節電にもつながります。事務室でこまめにスイッチの入り切りができるので、節電意識が高まり、結果、さらに電気料金の節約に。それに、居室ごとにきめ細かな温度設定ができるようになったことは、施設利用者の皆さんにとっても、快適なシステムと言えるのではないでしょうか。また、今まで建物内に設置していた空調機器を屋外に出すことで、そのスペースを有効活用できました。」
電化システムの良さを実感した村山園長は、先を見据え給湯のリニューアルにも取りかかりました。そこには、空調のリニューアル計画時の反省点があったようです。
「空調のリニューアルは故障が出始めてから慌てて計画を進めたもので、いろんな意味で時間が足りませんでした。施工10年後から2〜3年かけてじっくりと計画していけば、もう少し余裕を持って進められたはずですし、補助金の申請も可能でした。その反省を踏まえて、給湯のリニューアルは早めに着手。資金や工期の問題を慎重に検討でき、そのうえ補助金も受けられました。
今では、当施設の電化システムを見学するために県外からも視察にいらっしゃいます。設備リニューアルの時期を迎えている施設が多いようですね。コスト面や管理のしやすさなどをご説明すると、視察に訪れた方々もその良さを理解されているようです。新潟県内でも、今後ますます電化リニューアルが普及していくのではないでしょうか。」