健康増進、交流体験、災害時における地域防災拠点と
“3つの機能”を備えた地域の多目的施設に
ヒートポンプ給湯システムを導入。
小川原湖畔に建つ小川原湖交流センター「宝湖館」様は、天然温泉、温泉プール、ホール、交流室などからなる多目的施設です。東北町民の@健康増進、A交流体験、B災害時における地域防災拠点と”3つの機能”を備えた地域の拠点施設として、平成23年6月にオープンしました。天然温泉およびプールの温度維持、冬季の床暖房(温水式)用としてヒートポンプ給湯システムが導入されています。また、浴室のカラン・シャワー、プールのシャワー用としてもヒートポンプ給湯システムが導入されています。
同施設の運営・管理に携わる東北町商工観光課・副参事兼館長補佐の山中諭さんは、施設の利用状況やヒートポンプ給湯システムについて次のように語っています。
「「宝湖館」の建設計画は、基本構想・基本計画を策定し、それに基づいて議会などの承認を得て、具体化されました。地域のまさに”宝の湖”である小川原湖畔に開設される施設ですから、給湯に限らず、設備については煙が出ない、音が出ない、火災の危険性がないなど、自然環境や周辺にお住いの方々の生活への影響がないことを重視して選ばれたようです。
町民はもとより、周辺地域の方々のご利用も多いですね。町外の子ども会さんが団体でプールを使われたこともありました。また、温泉のお客さまは年配の方々が中心でしょうか。日々たくさんの方々にご利用いただいています。管理・運営が容易にできているのは、この給湯システムの大きなメリットかも知れませんね。夜間は自動運転ですし、朝に湯温や湯量を確認する作業も容易ですから…。」
入庁以来、福祉に関わる部署での勤務が長かったという山中さん。平成24年4月から「宝湖館」の運営・管理に携わるようになるまで、設備について意識することはほとんどなかったと言います。そんな山中さんは、同館へのヒートポンプ給湯システム導入のメリットについて、さらに次のように語っています。
「老人福祉施設で運動機能が低下している高齢の方が転倒しないよう配慮された建物設計・構造などを気にかけることはあっても、設備については全くと言っていいほど意識していませんでした。ですが、現在、ヒートポンプ給湯システムが安全・安心であること、経済的であること、管理やメンテナンスが容易であること、環境に与える影響が少ないことなどの重要性を改めて感じさせられています。自然の中にある公共施設であり、子どもさんから高齢の方まで毎日たくさんの方々にご利用いただいている施設ですから、そうした数々のメリットはありがたいことですね。
また、東日本大震災の時、電気が数日で復旧する一方、石油製品については入手が大変困難になったと聞いています。地域の防災拠点でもある施設の機能を考えると、電気で稼動する給湯設備(ヒートポンプ給湯システム)が導入されていることの意義も大きいと言えるでしょう。」
熱交換器を介して温泉およびプールの加温を行う“蓄熱設備用”、浴場・プールの給湯を担う“給湯設備用”の2つの系統を設け、いずれにもヒートポンプ給湯システムを採用。
ヒートポンプ給湯機は湖面をわたって吹いてくる潮風の影響を考慮して耐塩害タイプを採用、施工にあたっては積雪に備えてコンクリートの架台上に設置しました。
「宝湖館」さまの給湯システムについて、設計を担当した株式会社石川設計・専務取締役の高谷健司さんは次のように特長を語っています。
「設備容量やお湯の消費動向に効率的に対応するために、宝湖館様の場合は1つの大規模設備によらずに2つの独立した系統の給湯システムで構成しました。
1つは蓄熱設備用のヒートポンプ給湯システムです。これは、温水を貯湯槽(蓄熱槽)に貯え、熱交換器を介して浴槽およびプールの加温、冬期の床暖房用として利用しています。もう1つは給湯設備用のヒートポンプ給湯システムです。こちらは浴槽のカラン・シャワー、プールのシャワー、トイレなどの消費場所に配湯しています。
浴槽やプールの水温を自動制御しますから夜間勤務も不要です。蓄熱槽の温度や熱交換器2次側温度などによる複数の制御システムを完備し、確実な省エネルギー運転が可能な設計となっており、ランニングコストの低減にも大きく貢献しています。」
「「宝湖館」さまの空調システムは、空気熱源ヒートポンプパッケージエアコンによる冷暖房と、ヒートポンプ給湯システムで蓄熱した温水による床暖房を併用しており、熱源はいずれも電気を採用しています。東日本大震災の時にも電気の復旧は早かったということから分かるように、災害時でも、給湯も空調も使える地域の防災拠点として機能できます。もちろん電気が復旧するまでの数日間をバックアップする設備は必要ですが、それでもライフラインとしての電気の優位性は高いと考えています。
最近、設備設計の際には@環境への配慮、A費用対効果(低ランニングコスト)の2つをポイントとしています。二酸化炭素排出量の削減が求められ、石油製品の高騰がニュースとなる時代ですから、施主様も環境への影響や投資額・コストを気にされます。
燃焼系の設備・機器の場合は排煙・排気処理の問題が避けられず、メンテナンスにもコストがかかります。運転制御についても、電気ほどの簡便さ、容易さは期待できません。
一方、電気の場合は、安価な夜間電力による契約を活用すれば、ランニングコストを大幅に軽減できます。建物の用途や規模、利用形態、災害対策等についての施主様のご意向にもよりますが、設備は電気で稼動がベストと断言できる物件は数多くありますね。その結果、給湯・空調に燃焼系の設備・機器を提案することが少なくなりました。」
商業・娯楽施設、事務所、教育・文化施設、医療・福祉施設、居住・集会施設など、さまざまな物件を手掛ける高谷さん。ライフラインとしての電気に対する評価や電気で稼動する設備・機器が持つ数々のメリットを伺うと、ヒートポンプ給湯システムが活躍する物件は今後ますます増えそうです。