栽培面積が約2万?とトマト栽培では県内最大級となる『サンアグリしわひめ』。平成13年に水田の転作と地元の雇用拡大を目的に、「栗っこ農業協同組合」が事業主体となり創業しました。栗駒山系の清らかな地下水を利用した養液栽培とマルハナバチの自然交配に加え、農薬使用を抑えた美味しく安心なトマトづくりを行っています。ハウス内では「桃太郎」を中心に約47,000株を栽培。「サンひめっこ」の名で出荷されたトマトは、品質、味わい、日持ちの良さで高い評価を得ています。
『サンアグリしわひめ』のある栗原市は、日射量が少なくトマト栽培の北限といわれる地域。これまでは、冬季における暖房はA重油ボイラー(5基)による温湯配管暖房に頼っていたため、近年の燃油高騰により年間の燃料費が大きな経営負担となっていました。
平成25年8月、燃料費の軽減に向けた取り組みとして、農水省の「燃油価格高騰緊急対策事業」を活用し地下水熱利用ヒートポンプ10HP×40台の導入工事に着手、同11月より一部運転を開始し、翌1月よりヒートポンプ優先方式によるハイブリッド暖房運転に本格移行しました。地下水熱利用ヒートポンプ空調システムは、外気の温度に左右されずに効率的な運転ができるのが強み。『サンアグリしわひめ』では、温度、日射量、炭酸ガス濃度を日射比例制御方式によりコンピューターで環境制御し、安定した高品質のトマトづくりに力を注いでいます。
身近な未利用エネルギーである地下水を熱源として有効利用する地下水熱利用ヒートポンプシステム。日最低気温平均値が?5℃以下まで冷え込む志波姫地区ですが、地下水の温度は16℃と冬季でも安定しているため、高効率なヒートポンプシステムを構築することができます。また、燃焼を伴わないためCO2の排出がなくクリーンな再生可能エネルギーです。この地下水熱ヒートポンプシステムは、室外機が不要なため除霜運転(デフロスト運転)の必要がなく、寒冷地でも安定した運転ができることが大きな特徴となっています。
ヒートポンプは、少ない投入エネルギーで効率的に熱エネルギーを利用することができます。冬季の暖房運転においては、高効率なヒートポンプを優先的に稼動し、外気温が低くなる時間帯等に温水ボイラーによる温湯循環で室温を維持します。ハイブリッド運転にすることで、A重油の使用を抑制し、ランニングコストを低減できます。
『サンアグリしわひめ』は、平成13年に複合経営促進施設として設立されました。温度、日射量、炭酸ガス濃度など、すべてコンピューター制御によるダッチライト型ガラス温室でトマトの栽培に適した環境を作り出しています。栗駒山系の地下水をたっぷり含んだみずみずしいトマト「サンひめっこ」は、平成21年2月に栗原ブランドにも認定されました。
当社にとって、経営上の一番の課題は燃油高騰でした。経費の削減とともに経営体質の強化を図るため、ヒートポンプシステムの採用を決断しました。システムの採用にあたっては、空冷式ヒートポンプとの比較検討も行いましたが、冬季の高効率運転が可能であるという特性に着目し、地下水熱利用ヒートポンプを導入することにしました。電気エネルギーのヒートポンプはメンテナンスがとてもラクですね。
おかげさまで、直売所ではいつもトマトが完売してしまい、足を運んでいただいたお客さまにご迷惑をおかけすることがあります。収集した環境データの活用で栽培管理技術の向上を目指していますが、美味しく高品質なトマトの収量が更に安定すれば、将来的には、現在のパートさんを正社員にするなど、地域の雇用創出にさらに貢献できるのではないかと考えています。