プレスリリース

11月定例社長記者会見概要

平成26年11月27日

○海輪社長からの説明事項

 本日、私からは、「風力発電のための送電網整備実証事業への参画」と、「今冬の電力需給見通し」について、ご説明いたします。

 

 

○風力発電のための送電網整備実証事業への参画について

 はじめに、「風力発電のための送電網整備実証事業への参画」についてご説明いたします。

 

<再生可能エネルギーの現状と課題>

 今回の事案について、より理解を深めていただくために、まず、再生可能エネルギーの現状と課題から申し上げたいと思います。

 ご承知のとおり、当社は、再生可能エネルギーのうち、水力、地熱、風力の導入実績は、いずれも国内の電力会社の中で最も多い実績であるなど、再生可能エネルギーの導入拡大に積極的に取り組んできております。また、再生可能エネルギーの特性や課題等を踏まえ、さらなる導入拡大に向けて、大型蓄電池システム実証事業といった新たな取り組みも進めているところです。

 再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しない貴重な純国産エネルギーでありますが、一方で、例えば、太陽光や風力は、天候により出力が瞬時に大きく変動するなどの特性があります。

 加えて、再生可能エネルギーは、エネルギー密度が低いために、一定の事業規模を確保するためには広大な事業用地が必要になるなど、開発適地が限られるといった制約もあります。エネルギー密度とは、単位面積当たりでどの程度発電できるかという考え方であります。太陽光を例に、仙台火力発電所4号機(出力44万6千kW)と、当社が所有する太陽光の中で最も規模が大きい仙台太陽光発電所(出力2千kW)のそれぞれの年間発電電力量を比較いたしますと、仙台太陽光では年間約210万kWhの電気を作ることができるのに対して、仙台火力4号機の年間発電電力量はその約1,300倍となる約27億kWhとなります。つまり、仙台太陽光で仙台火力4号機と同じ量の電気を作ろうとした場合、現在のおよそ1,300倍程度の敷地が必要という計算になります。

 こうした出力変動や開発適地が限られるという特性から、電力の安定供給を前提に再生可能エネルギーの導入拡大を図っていくにあたっては、電力会社への系統連系の面で、大きく次の2つの課題に適切に対応していく必要があります。

 一つは、周波数面での課題であります。電力の安定供給を維持するためには、時々刻々と変化する需要にあわせて火力発電などの出力を調整し、需要と供給のバランスを常に一致させることで周波数を一定に調整する必要があります。太陽光や風力の連系量が一定の範囲内であれば、それらの出力変動は火力発電などで調整し、需要と供給のバランスを一致させることができます。

 これに対して、出力の調整ができない太陽光や風力が大量に連系した場合、供給が需要を上回るおそれがあります。これにより、周波数が大きく変動すると、機器の損傷や、最悪の場合、当社管内の広範囲で停電に至るリスクがあります。

 当社管内におきましては、先にお知らせしておりますとおり、国の固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギー発電設備の設備認定量が、当社管内の軽負荷時の電力需要を上回っており、需給バランスが崩れるリスクが顕在化しております。こうした状況を踏まえ、現在、系統連系申込みに対する回答を一時的に保留させていただき、今後の受入可能量や導入拡大方策について検討を急いでおります。また、国においても、再生可能エネルギーのうち、太陽光の設備認定量が突出している現状を踏まえ、水力や地熱などを含めて、再生可能エネルギー間のバランスを確保しながら、将来にわたり着実に導入を進めていくといった観点での議論も行われており、これらの議論も踏まえながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

 もう一つの課題は、送電線の容量面についてであります。先ほど申し上げた周波数面の課題は、再生可能エネルギーの導入量に対する当社の調整力の問題ということで、当社管内全体に関わる話でありましたが、こちらの課題は個別開発地点における課題となります。

 当社管内に敷設されております送電線の多くは、もともとはお客さまに電気をお届けするための設備であり、送電先の需要規模に応じて形成しております。従いまして、需要規模の小さい地域で大規模な再生可能エネルギーによる発電が計画された場合、最寄りの送電線等の容量が不足し、系統設備の増強が必要となることがあります。

 また、発電事業の規模が大きくなれば、アクセス送電線の規模の拡大に加え、設備の形成方法も複雑になり、技術的な課題も大きくなる傾向にあります。例えば、発電規模や電圧の異なる複数の風力発電所を集約する場合には、各発電所をつなぐ送電線や中継する変電所の配置、接続方法などを最適化するための検討が必要と考えられます。

 本日、お知らせをさせていただく「風力発電のための送電網整備実証事業」は、国が事業者を公募して進めるものでありますが、こうした設備容量上の課題をクリアし、風力発電の大幅な導入拡大に向けて、ステップ・バイ・ステップで取り組む事業であり、当社としても、中長期的な視点での風力の導入拡大に向けて、協力を行うこととしたものです。

 

<風力SPCの概要>

 今回の実証事業は、先ほど申し上げたとおり、特定の地域の設備容量上の制約をクリアし、風力発電の大幅な導入拡大を実現することを目的とした取り組みであります。この取り組みは国の補助事業として、国が、風力発電に適している北海道と東北の一部地域を「特定風力集中整備地区」に指定して、風力発電のための地域内送電網の整備とその技術的課題の実証を行う事業者を公募したもので、当社管内においては、本年9月に、青森県の上北地域で事業を計画する上北送電株式会社と、秋田県の沿岸地域での事業を計画する秋田送電株式会社の2社が、対象事業者として国から採択されております。

 事業のイメージについては、まず、採択事業者において、計画地域における風力の開発可能性に関する調査を行います。その後、国の中間審査において、事業性が認められた場合には、次のステップとして、事業化に向けた送電線の設計・整備といった具体的な手続きに移行することになります。

 なお、開発可能性調査の段階、事業化の段階でそれぞれ国から50%の補助が予定されており、事業化に移行した後は、送電線建設後の残りの費用を、風力発電事業者が利用料として負担するスキームとなっております。

 

<当社の参画理由・内容>

 本事業の趣旨を踏まえ、当社は、地元電力会社として、開発可能性調査に関する技術協力を行っていくことといたしました。具体的な参画内容は、本事業による風力の開発地域や規模、複数の風力発電所の集約等を考えた場合、風力アクセス設備の規模が大きくなることに加え、連系方法も複雑になることが想定されるため、柔軟かつ実現性の高い設備を形成していく必要があるとの考えから、2社に出資を行い、取締役各1名を派遣することといたしました。これにより、風力アクセス送電線等のルート調査や仕様の検討、費用の積算などにおいて、当社の知見やノウハウを活用いただくことができ、より実効性のある調査につながるものと考えております。

 なお、開発可能性調査の実施後、国の中間審査を経ることになりますが、その後、事業化に移行することになった場合の当社の参画については、あらためて判断することとしております。

 国は、今回の送電網整備実証事業について、開発可能性の調査から風力アクセス送電線の建設までの期間、さらに発電所の建設期間を考慮すると中長期にわたる事業と想定しており、当社としても、今回の事業は、中長期的な視点から将来的な再生可能エネルギーの導入拡大に資する有効な取り組みと考えております。

 当社は、こうした事業への協力なども通じて、引き続き再生可能エネルギーの課題の解決に最大限取り組み、今後も、それぞれの再生可能エネルギー間のバランスも確保しながら、導入拡大に向けて積極的かつ継続的に取り組んでまいりたいと考えております。

 

 

○今冬の電力需給見通しについて

 最後に、これから本格的な冬を迎えるにあたり、この冬の電力需給に関して一言お話させていただきます。

 今冬の需給見通しにつきましては、先月10月31日に皆さまにもお知らせをしておりますとおり、一定の予備率を確保できる見通しとなっておりますが、これは、皆さまからご協力いただいている節電の定着分を織り込んだうえでの見通しとなっております。

 当社といたしましては、この冬も安定供給に努めてまいりますが、お客さまにおかれましても、引き続き、上手な電気の使い方などによる無理のない範囲での節電にご協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 

 本日、私からは以上です。

 

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