プレスリリース

11月定例社長記者会見概要

平成24年11月30日

○海輪社長からの説明事項

 本日、私からは、「原子力発電所の安全対策の取り組み状況」、「冬季需給対策強化期間」について、ご説明いたします。最後に電気料金の改定の検討について申し上げます。

 

○原子力発電所の安全対策の取り組み状況について

 はじめに、原子力発電所の安全対策の取り組み状況についてご説明いたします。

 

 皆さまご承知のとおり、今年9月に原子力規制庁が発足し、原子力発電所の新安全基準について、来年7月には決定・施行というスケジュールが示されるとともに、具体的内容の検討が開始されました。

 

 一方、今月15日に、事業者を含めた原子力産業界の総力を結集し、「一般社団法人 原子力安全推進協会」が設立されました。

 同協会では、国内外の安全性に関する最新知見を収集・分析し、独立した立場と強い指導力をもって、各電力会社の安全性向上活動を技術的に評価し、われわれ事業者に対して提言や支援を行っていただくことになるものと考えております。

 当社といたしましては、これまでも原子力発電所の安全性向上に向けて継続的な取り組みを進めてきておりますが、今後ともさらなる安全性の向上に向け、同協会からの提言や支援を尊重し、世界最高水準の安全性を目指してまいりたいと考えております。

 

 このように、原子力につきましては、規制当局の動きが具体的になり、私ども事業者といたしても、より一層の安全性向上に向け、新たな組織を立ち上げたことから、これを一つの節目と捉え、当社原子力発電所の震災以降の安全対策につきまして、改めて最近の動向を織り交ぜながら説明させていただきます。

 

 当社では、「重要な安全機能について各発電所の特性や最新知見などを踏まえ、ハード・ソフト両面から最適な対策を組み合わせながら、ある要因でひとつの機能が全て失われないよう多様化することによって、安全の厚みを加えていく」という考え方に基づき、さまざまな対策による安全性の向上に努めております。

 国から指示を受けた緊急安全対策等の対策につきましては、概ね対応を完了しております。この結果、既に福島第一原子力発電所と同様な事故を起こさない安全レベルを確保したものと考えておりますが、そのレベルに立ち止まることなく、安全機能に厚みを加えるべく、さらなる対策を積み重ねております。

 いくつか最近の動きについてご説明いたします。まず、ハード面でありますが、

・「冷却機能の強化」といたしましては、万一、海水ポンプが故障して原子炉内の熱除去機能を喪失した場合に、直接海水を取水して除熱冷却ができる代替非常用海水ポンプの配備を完了いたしました。

・「閉込機能の強化」といたしましては、原子炉建屋ベント装置や水素検知器の設置について、東通原子力発電所はすでに完了しており、女川原子力発電所では今月から工事を開始し、今年度内に完了の予定であります。

 また、ソフト面では、非常時においてもこれらの安全対策が有効に機能するよう、必要な手順書を整備するとともに、さまざまな過酷な状況を想定した訓練を繰り返し行っております。

 

 このように、基本的な安全対策を着実に積み重ねるとともに、さらなる安全対策を自主的に講じることとし、東通原子力発電所については、フィルター付格納容器ベント設備、これは格納容器の過度な圧力上昇に伴う破損を防止するために、格納容器内の蒸気を大気中に放出して圧力を低減させる際、現状のベント設備に加え、万一、炉心が損傷した場合でも、フィルターを介して放射性物質の放出量を大幅に抑制する装置でありますが、それに加え、大規模地震が発生した場合でも、適切に事故対応を行うことができる免震構造の指揮所機能を有した免震重要棟を設置することとしております。

 これら2つの設備につきましては、早期の着工に向けて、現在、設備仕様や工程の詰めの作業を行っているところであります。詳細が固まり次第、改めて皆さまにはお知らせしたいと考えております。

 なお、女川原子力発電所におきましては、震災以降、大きく分けて3種類の工事、すなわち1.耐震裕度向上工事、2.設備の点検、3.被災設備の復旧を鋭意進めてきております。

 

1.  「耐震裕度向上工事」については、さらなる安全性の向上を図る観点から、配管・電線管のサポートの追加や溶接工事による部材強化などを行っております。

2.  「設備の点検」としては、発電所の全設備について、目視点検、一部分解点検および作動試験等により、地震後の設備健全性に関する確認作業を行っております。

3.  「被災設備の復旧」については、軽微な被害設備は10月末現在で61件中55件が完了しております。 

 その他、比較的大きな復旧工事としては、例えば高圧配電盤の復旧工事は完了し、現在、2、3号機の蒸気タービン翼の補修・取替工事や1号機の原子炉建屋天井クレーンの補修などを行っております。

 これらの工事につきましては、現場の状況や設備の状態を慎重に確認しながら進めておりますので相応の時間を要しております。したがいまして一通りの工事の完了時期は、ある程度の見通しが立った段階であらためてご説明させていただきたいと考えております。

 

 いずれにいたしましても安全対策というものに終わりはないものと認識しており、当社といたしましては、決して現状に満足することなく、発電所の特性と安全性に関する最新知見を反映して一歩一歩着実に厚みを増してまいりたいと考えております。

 国や原子力規制委員会におかれましても、新しい安全基準や再稼働についての判断基準を早急かつ科学的な見地からお示しいただくよう、審議・策定の加速化をお願いしたいと考えております。

 

○今冬需給対策強化期間について

 続きまして、「冬季需給対策強化期間」について申し上げます。

 明日から12月となり、本格的な厳冬期を迎えます。当社の今冬の電力需給の見通しについては、既にお知らせしておりますとおり、皆さまからの節電へのご協力も織り込んだ上で、6%程度の予備力を確保できる見通しにあります。

 しかしながら、当社においては原子力の停止が継続しており、ひとたび火力発電所にトラブル等があれば、需給がたちまち逼迫することも想定されます。

 したがって、未だ供給力が万全と言える状況にはないものと認識しております。このため、来週12月3日から来年3月29日までを、「冬季需給対策強化期間」と設定し、この夏と同様に発電設備など供給設備の重点パトロールやお客さまへの節電の理解活動などを計画的に実施していくことといたしました。

 なお、東京電力におかれましては、冬場に備えて発電所設備の点検を進めているところ、11月26日に、気温の急激な低下による暖房需要の増加と火力発電所のトラブルが重なったことから、需給が逼迫し、全国融通を受電する事態となりました。

 また、先日、北海道電力管内におきまして、風雪害による大規模停電が発生いたしました。このような、自然災害への備えも含めて、気を引き締めてまいりたいと考えております。

 皆さまにおかれましても、引き続き、上手な電気の使い方や無理のない範囲での節電にご協力いただきますようお願いいたします。

 

○電気料金改定に向けた検討開始について

 最後に、電気料金の見直しについて申し上げます。

 当社は、東日本大震災による石炭火力等の設備被害や原子力の停止、新潟・福島豪雨による水力発電所の被害の影響により、火力燃料費が大幅に増加しております。加えて、被災設備の復旧費用や緊急設置電源等の導入に係る設備関連コストの発生などもあり、会社創立以来の厳しい収支状況にあります。

 こうしたことから、先月の会見では、このような状況が長く続くことで、事業運営に必要な資金調達が滞るなど、お客さまへの安定した電気の供給に支障をきたすような事態が想定される場合には、料金改定を含めたあらゆる選択肢を検討していかざるを得ない、ということを申し上げました。

 

 その後、社内において、さらなる効率化策や自己資本レベルの評価、原子力の再稼働などについて検討を深めてまいりましたが、現時点で、原子力の再稼働時期が見通せない中、火力燃料費の増加をはじめとする膨大なコスト負担を、これまでのように緊急的な支出抑制や繰り延べ、自己資本の取り崩しによって吸収し続けることは、設備保全と資金調達の両面で電力の安定供給に支障をきたすことになると判断いたしました。

 

 このため、非常に残念であり、お客さまには大変申し訳なく存じますが、電気料金の見直しについて判断せざるを得ず、今般、本格的に検討を開始することといたしました。

 

 震災等によるコスト負担の増加につきましては、平成22年度の特別損失を含んだ23・24年度の累計額で約9,000億円となっております。一方、緊急的な支出抑制や繰り延べ、人件費の見直しなどの効率化により約3,000億円を圧縮しております。しかしながら、こうした取り組みを行ってもコスト増加分を全て吸収することはできず、配当見送り分を除いた残りの約5,000億円について、自己資本を取り崩すことにより対応している状況となっております。

 

 自己資本については、震災等による特別損失や燃料費の増加等による純損失の計上により、3,320億円減少する見込みとなっております。これは震災前の平成21年度末と比較し、約4割もの減少となります。また、自己資本比率につきましても、震災前の21%から11%程度と、約半分にまで落ち込む見込みです。原子力の再稼働が見通せない中、今後も火力燃料費の増加などによる膨大なコスト負担が継続した場合には、コストの増加分をすべて吸収することは困難であり、資本欠損となるおそれがあります。

 

 資金調達への影響につきまして、当社の有利子負債残高は、震災前から20%、約4,000億円も増加しております。また、格付けも震災以降、段階的に引き下げられております。自己資本の大幅な減少と有利子負債残高の増加による当社財務体質の急速な悪化や、これに伴うさらなる格付け引き下げ等は、資金調達に悪影響を及ぼし、ひいては電力の安定供給への影響が懸念される状況です。

 

 当社のコスト構成ですが、震災前後で大きく変化しております。平成24年度は燃料費・購入電力料がコスト全体の半分以上を占めるまで増加しております。また、被災した設備の復旧や緊急設置電源の減価償却費負担が増加しております。この増加分について、修繕費等の緊急的な支出抑制や繰り延べ、人件費・その他経費等の効率化を実施することで吸収するよう努めておりますが、その全てを吸収することは困難な状況となっております。

 

 以上、申し上げました点を総合的に判断し、電気料金見直しの検討を開始せざるを得ないとの結論に至ったものであります。

 足下の財務状況を考慮しますと、平成25年度の早い時期に料金値上げを実施し、早急に収支の改善を図ることが必要と考えております。

 しかしながら、具体的な検討にあたっては、1日でも長く現行料金を維持するとともに、更なる効率化を織り込んで値上げ幅を可能な限り圧縮するよう努めてまいります。

 なお、料金見直しの検討にあたりまして、経営層自らが率先して今後一層の効率化に取り組み、収益基盤を早急に改善していく決意を示すため、現在実施している役員報酬の自主返上につきましては、お手元の資料にございますとおり、報酬額の最大2割を最大4割まで深掘りすることといたしました。

 

 お客さまに大きなご負担をお願いする電気料金見直しの検討に至りましたことについて、改めてお詫び申し上げますとともに、何卒ご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 本日、私からは以上です。

 

 

「プレスリリース本文のPDFファイルはこちら」印刷用PDF

←← 東北電力トップページ ← 元のページへ戻る