プレスリリース

2月定例社長記者会見概要

平成24年 2月29日

○海輪社長からの説明事項

 本日、私からは「東日本大震災発生からの1年」と「平成25年度定期採用計画」についてご説明させていただきます。

 

○東日本大震災発生からの1年を振り返って

 明日から3月ということで、東日本大震災から1年が経過するわけです。

 今回の大震災は、私たちの郷土「東北」に、かつてない甚大な被害と、あまりにも多くの悲しみをもたらしました。あらためまして、このたびの震災により犠牲になられた方々、そしてご遺族の皆さまに心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 

 本日は、震災発生以降これまでの1年を、当社設備の復旧状況を中心に振り返りながら、ご説明させていただきます。

 昨年3月11日に発生した東日本大震災では、東北から関東に至る広い範囲で、最大震度7を記録する大きな揺れに見舞われるとともに、高さ10メートルを超える大津波が太平洋沿岸を襲い、当社設備も甚大な被害を受け、延べ486万戸のお客さまが停電するなど、当社創立以来の大災害となりました。

 

 当社は、このような大規模停電に対し、当社社員のほか、企業グループ各社、協力会社に加え、他の電力会社からも多くの応援をいただき、過去最大規模の復旧要員を被災地に派遣し、停電解消にあたりました。

 巨大な地震、津波により電柱の折損や電線の断線、鉄塔の倒壊や変電所の損壊など被害は膨大な数におよびました。また、道路の損壊や浸水、ガレキなどで現場への進行が非常に困難な中、度重なる余震と津波警報にも注意を払わなければならないという、通常とは全く異なる状況下での復旧作業となりました。

 しかしながら、「一刻も早く電気をお届けしたい」との使命感から、家族の安否、自宅の状況の確認もままならない中、まさに寝る間も惜しんでの復旧作業を進め、震災3日後で約80%、8日後には約94%、3月末時点で約96%まで停電を解消しました。

 そして、6月18日には、津波による流失地域や震災の影響で現地への立入りが困難な地域などを除き、復旧に着手可能な地域の停電を全て解消することができました。

 

 後日談でありますが、震災発生翌日の早朝に、仙台市民の方が、新潟ナンバーを付けた当社の黄色い作業車両の列が仙台市内を通過する様子を見てほっとした、との話をされていたと聞きました。日本海側の応援部隊は、震災発生直後に夜を徹して駈け付けており、災害に対する備えや、こうした社員の士気の高さは、当社の財産であると思っています。

 

 発電所の状況については、日本海側の火力発電所は、地震の影響により停止しましたが、被害が少なかったことから、設備の健全性を確認した後、能代火力発電所、秋田火力発電所、酒田共同火力発電所は地震発生後3日以内に、また、一部浸水被害があった八戸火力発電所は3月20日に運転を再開することができ、震災後の貴重な供給力となりました。

 一方、太平洋側の火力発電所は、津波による被害を受けて大きく損壊したことから、運転再開までにはかなりの期間を要するものと覚悟しましたが、夏場に向けて、常磐共同火力勿来発電所8・9号機が運転を再開しました。

 その後も一日でも早く供給力となるよう作業工程の前倒しなど、被災火力の復旧に全力で取り組んだ結果、新仙台火力発電所1号機、仙台火力発電所4号機、さらには常磐共同火力勿来発電所7号機、相馬共同火力新地発電所1・2号機が運転を再開し、多くの発電所が今冬の供給力として戦力に加わることができました。

 なお、原町火力発電所1・2号機については、津波により、本館1・2階の電気・機械設備が冠水するとともに、電気集塵機が破壊、揚炭機が倒壊するなど甚大な被害を受けており、現在、損傷した設備の製作や修理を進めているところです。遅くても平成25年夏前までには運転再開したいと考えています。

 

 東日本大震災では、水力発電所の供給力への影響は若干あったものの大きなものではありませんでしたが、7月末に発生した新潟・福島豪雨では29カ所もの当社水力発電所が設備被害により停止し、供給力が100万kW減少する大きな被害を受けました。

 これまで、取水口・放水路に堆積した土砂の排除や清掃、浸水被害を受けた水車や発電機、配電盤などの復旧作業を速やかに進め、現時点で15カ所が復旧しました。残る発電所については、設備被害の状況などに違いがありますが、国、県、地元市町村など関係個所との連携を密にしながら、運転再開に向けて取り組んでまいりたいと考えています。

 

 東日本大震災発生時、女川原子力発電所は1号機および3号機は通常運転中、定期検査中の2号機は原子炉起動の直後でした。 

 女川原子力発電所では、原子力発電所において最も重要な、原子炉を「止める」「冷やす」、放射性物質を「閉じ込める」という機能が有効に働き、この地震に対して、全3基が設計どおり安全に自動停止し、その後、冷温停止状態を維持することができました。

 震源に最も近い女川原子力発電所が、未曾有の地震、13メートルもの津波にも耐えて安全を確保したことは、発電所建設当時に敷地を約15メートルの高さに設定したという先人の判断もありましたが、発電所員の冷静な対応や日常の訓練に基づいた的確なオペレーションの成果でもあり、非常に重要なことだと思っています。

 

 一方、定期検査中であった東通原子力発電所1号機は、設備被害はなく、原子炉起動前に行う停止中の作業を全て終了しています。 

 

 現在、両発電所では緊急安全対策やシビアアクシデント対策を実施するとともに、ストレステストや耐震バックチェックへの対応を進めています。

 さらに今後は、緊急安全対策の有効性をより確実なものとする訓練や資機材の改善、更なる安全性向上に向けた防潮堤や防潮壁の設置などの中長期の安全対策などにも取り組むこととしています。また、今回の地震の新たな知見を踏まえ、女川原子力発電所においては、自主的に更なる耐震裕度向上工事を実施することとしています。

 このような発電所の更なる安全性確保に向けた取り組みを通じ、地元や自治体の皆さまから、原子力に対するご理解を得られるよう、最大限努力してまいりたいと考えています。

 

 電力需給については、震災当日である3月11日の朝の段階では、ピーク時間帯で  1,430万kW程度の供給力を確保し、お客さまに電気をお届けしていましたが、震災により、当日の供給力の2分の1以上となる、約800万kW以上の設備が停止、震災直後の供給力は620万kW程度まで低下しました。

 

 日本海側にある火力発電所は早期に復旧しましたが、当時は、極めて厳しい電力需給が続いていたため、予見性のないまま大規模な停電にならないよう、緊急的な措置として、 被災地を除いた地域を対象に、計画停電を準備することを当時決断しました。幸い、実施には至りませんでしたが、電力の安定供給を使命とする会社として、計画停電をお客さまにお願いする準備を進めるということは、極めてつらい経験であり、本当に申し訳ない気持ちでした。

 その後、当社は「被災地の復興には安定した電力の供給が不可欠」との思いから、被災火力の復旧に加え、長期計画停止中であった東新潟火力発電所港1号機を運転再開させるとともに、新規電源の新潟火力発電所5号系列の運転開始、自家発余剰電力の購入など、あらゆる供給力確保策を進めるとともに、需給調整契約の拡大など需要面からの対策にも取り組んできました。

 

 一方、夏場のピーク時には、復興需要の回復もあり、供給力不足が懸念されたことから、電気事業法第27条による電気の使用制限が発動されるなど、広く当社のお客さまに対し、節電へのご協力をお願いすることとなりました。

 こうした中、追い討ちをかけるように、7月末の新潟・福島豪雨により水力発電所が停止し、供給力が減少したことから、とりわけ8月上旬は需給が逼迫する局面もありました。しかし、東京電力や北海道電力から電力融通を受けたことや、お客さまの節電に対するご理解とご協力により、何とか計画停電を実施することなく、乗り切ることができました。

 大口のお客さまをはじめ、すべてのお客さまに最大限の節電やピークシフトに取り組んでいただくなど、大変なご苦労とご不便をおかけしたことについて、あらためてお詫び申し上げますとともに、ご協力に感謝申し上げます。

 

 このような夏場の状況も踏まえ、冬場に向けては、お客さまに無理を強いるような節電をお願いしなくともよいよう、被災火力の早期復旧や緊急設置電源の運転開始、自家発余剰電力の積み増しなどの供給力確保に全力で取り組むとともに、新たな料金メニューの導入など需要抑制策にも努めました。

 依然として、供給力に余裕のある状況ではありませんが、引き続き北海道電力などから電力融通を受けるとともに、無理のない範囲での節電にご理解とご協力をいただいていることで、今冬もこれまでのところ電力需給が逼迫する状況には至らず経過しています。

 今年の夏に向けては、30万kW級の緊急設置電源3台を設置する等、更なる供給力の確保に取り組むとともに、需給調整契約の拡充などにも努め、夏場も安定供給に万全を期してまいりたいと考えています。

 

 当社設備の復旧状況を中心に東日本大震災発生後の1年を振り返ってきましたが、この1年を総括すると、「東日本大震災」「東京電力福島第一原子力発電所事故」「新潟・福島の集中豪雨」と、何十年、何百年に一度起きるかどうかという大災害が重なって発生し、これらに企業グループも含め社員が一丸となって必死に対処してきた1年でした。

 私は、被災電力である当社の状況を「五重苦」と表現しています。すなわち、(1)大震災による電力需要減少、(2)当社設備の甚大な被害、(3)原子力事故による直接・間接の被害、(4)女川・東通原子力発電所の長期停止、(5)豪雨水害による水力発電所の被害、の5つ経営課題に直面しているわけです。

 

 経営的には今後も厳しい局面が続くものと予想していますが、「これ以上は下がらない、必ず上向きになる」との思いで、企業グループの全員が心を一つにし、危機意識を強く持って自助努力を徹底的に進め、何とかこの難局を乗り切ってまいりたいと考えています。

 そして、今回の大震災で電力会社が失った原子力への信頼と安定供給への信頼を是非とも回復し、地域の方々から「やはり東北電力でなければ困る」と言われる会社となるよう努力し、東北の地元企業として、地域の復興を支え続けてまいりたいと決意を固めたところです。

 

○平成25年度定期採用計画について

 当社としては、東日本大震災後の復旧・復興に向けて、供給力確保をはじめとした電力の安定供給、技術・技能の継承に必要な人員は確保しつつ、一方で、極めて厳しい収支状況を踏まえますと、今後、より一層、効率的な業務運営体制を推進していく必要があります。

 こうした観点から、平成25年度の定期採用については、平成24年度採用数の311名より3割減となる事務系50名、技術系170名の合計で220名とすることとしました。

 現在、当社は、聖域を設けることなくコスト削減の努力を進めているところではありますが、地域に根ざす企業として、地域の復興を支える観点からも、当社の採用が、少しでも東北地域の雇用環境の改善に貢献できればと考えています。

 

○社債の発行について

 当社は、東日本大震災、新潟・福島豪雨により設備に多大な被害を受け、復旧のために多額の資金を必要としており、震災以降、金融機関からの借入を中心に資金調達を行ってきました。

 こうした中、資金調達の多様化・安定化を図る観点から、社債の発行についても検討を進めてきており、今回、期間5年の社債を500億円、期間10年の社債を100億円、総額で600億円の機関投資家向け社債の発行を予定しています。

 なお、当初、期間5年の社債は200億円、期間10年の社債は50億円、総額で250億円の発行を予定していましたが、機関投資家からの申し込みが想定を上回ったことから、最終的な発行額が、それぞれ500億円、100億円、総額で600億円となりました。

 今回調達する資金については、東日本大震災により被害を受けた火力発電設備を中心に設備の復旧に充当し、早期の電力の安定供給に寄与したいと考えています。

 

 本日、私からは以上です。

 

以 上

 

「プレスリリース本文のPDFファイルはこちら」印刷用PDF

←← 東北電力トップページ ← 元のページへ戻る