プレスリリース

11月定例社長記者会見概要

平成21年11月26日

○高橋社長からの説明事項

 本日、私からは、当社における災害時の対応強化に向けた取り組みと、その一環としての耐震装置付き高所作業車の導入について紹介させていただきます。

 

○当社における災害時の対応強化に向けた取り組み(耐震装置付き高所作業車の紹介)

 当社では、30年以内に99%の確率で到来が予想されている宮城県沖地震など大規模な自然災害に備え、全社的な検討を重ね、設備対策や復旧対応体制の整備、充実などに継続して取り組んできています。

 設備対策面では、耐震性に優れた機器(低重心機器の採用など)を導入するとともに、変圧器の碍子取り付け部のずれ止め補強や、配電柱の基礎部分(地中)に根かせ(補強部材)を取り付けるなど、災害に強い設備の形成に努めています。

 

 一方、災害発生時の対応においては、「初動体制の早期確立」、「迅速かつ十分な応援体制の構築」、「的確な情報の発信、受信」、そして「被災現場における安全かつ円滑な復旧作業」の4点が特に重要と見ています。

 当社では、こうした4つのポイントを踏まえた対応体制の整備に取り組んでいます。

 

 例えば、「初動体制の早期確立」という点については、社内の「非常災害対策実施基準」において、大規模地震が発生した際の自動出社基準というものを定めています。

 具体的には、当社管内あるいは東京都区部で震度6弱以上の強い地震が発生した場合には、関係者が直ちに自動的に出社することになっています。そして、直ちに社長を本部長とする本店非常災害対策本部が設置されます。また、予め災害対策本部の要員は決められており、それぞれの所属や業務に応じて定められた役割に従い、直ちに出社したり、現場に駆けつけたり、応援の準備に入ったりと、迅速に行動することになっています。

 

 こうした災害時の対応については、年2回、大規模な地震災害を想定した全社大の訓練を実施しています。また、実際に大きな災害を経験するたびに、復旧完了後、社内で検討会を開催して、成果と反省について確認を行っています。そうした継続的な取り組みを通じて、現状の対応体制が有効に機能するかどうかを、常に検証しながら、さらにいい体制がないかなど、復旧体制の強化・改善を図ってきているところであります。

 

 また、「迅速かつ十分な応援体制の構築」あるいは「被災現場における安全かつ円滑な復旧作業」という観点では、現場レベルでの実践的な作業訓練による技能レベルの向上や、野外に宿泊する幕舎訓練を行っています。そして更に、配電業務ナビゲーションシステムなど各種支援システムの開発などにも継続して取り組んできています。

 

 配電業務ナビゲーションシステムは、平成16年度に当社の全ての営業所の配電業務車輌1,362台に導入しています。このシステムでは、目指す電柱番号をインプットすると、カーナビゲーションにより、そこまでの道案内をし、また、走行中に、現地での設備被害をほぼリアルタイムで把握することができます。そのため、作業手順の準備を、走行しながら、事前に行うことができるというものです。このため、災害発生時に各県から駆けつける応援隊は、被災した現地の営業所に道案内をしてもらうなどの負担をかけることなく、自力で指示された被災現場に到着し、自律的に復旧作業を行うことができるというものです。

 

 本日、紹介させていただく「耐震装置付き高所作業車」についても、こうした安全、かつ円滑な復旧作業を支援するための取り組みの一環として、開発、実用化したものであります。

 この耐震装置付き高所作業車については、当社が、平成19年度に車輌メーカーのアイチコーポレーションと共同で開発したもので、現在、順次導入を図っているところです。

 

 はじめに、開発の経緯についてですが、5年前の平成16年10月に発生した新潟県中越地震は、最大で震度7を記録するという大きな地震でした。また、この地震では、その後震度6クラスの余震が頻繁に発生しました。この余震による作業員の事故などは発生しませんでしたが、作業員からは大きな不安が寄せられました。ここでの経験から、そうした余震が懸念される環境でも、作業の安全を確保できるような対策が必要であると考えたことがきっかけとなりました。また、そうした環境下でも作業の安全が確保できれば、作業効率の向上につながり、ひいては、お客さまに対して、より早く電気をお届けできることになります。こうしたことから、高所作業車の耐震対策の検討に着手しました。

 

 この耐震対策の検討に際しては、茨城県つくば市にある独立行政法人「土木研究所」の「三次元大型振動台」(大規模地震時における振動を再現し、構造物などの耐震性を調査する実験装置)という実験装置で、国内で初めて、実際の高所作業車を揺らして、車輌への影響を確認するという試験(加振試験)などを行いました。

 

 こうした試験などにより開発した耐震装置付き高所作業車の最大の特徴は、「作業範囲規制システムの搭載」であります。

 高所作業車については、作業員が乗り込む籠のようなところを「バケット」、また、そのバケットを上に上げるために伸び縮みする部分を「ブーム」、車両の周りに回転させる装置を「ターンテーブル」と言います。バケットは、このブームによって、最大で高さ15m程度、横方向で11m程度移動させることができます。

 

 先程申し上げた高所作業車に振動を与える実験の結果、震度6強程度に相当する大きな振動であっても、この高所作業車は、バケットの移動範囲を、最大許容値の80%以内に抑制することによって、転倒することはなくなり、また、ブームの変形というような破損も発生しないということがわかりました。

 

 このため、耐震装置付き高所作業車は、スイッチの切替えひとつで、バケットの移動範囲を自動的に最大許容値の80%以内に制限できる「作業範囲規制モード」を搭載しています。

 

 この他、「一体型のジャッキベースの装備」、そして、「地震感知器の搭載」(これについては、携帯電話による気象庁の緊急地震速報の利用が可能となったため、一部の車輌のみの仕様となっています)ということが、耐震装置付き高所作業車の特徴となっています。

 

 次に、耐震装置付き高所作業車の導入による効果ですが、車輌にこのような地震対策を施したことによって、冒頭にも申し上げましたが、作業員、ならびに車輌の安全が確保されます。そして、そのことにより、余震発生時の作業員の不安も解消され、また、作業の中断時間も極めて短時間となることで、作業効率が向上し、早期復旧が図られるものと考えています。

 昨年(平成20年)6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震の際には、この耐震装置付き高所作業車を使用して復旧作業にあたりましたが、その結果、ただ今申し上げた効果を実際に現場で確認したところです。

 

 また、コスト面におきましても、大きな地震で車輌が破損した場合、修理費は車輌1台あたり数百万円のオーダーになると試算しています。一方、車輌への耐震装置の装備にかかる費用は1台あたり数十万円オーダーです。従って、導入による効果を考えると、それほど大きな負担ではないと言えます。

 

 続いて、現在の導入状況ですが、当社では高所作業車を合計で134台所有しており、これらの車輌の更新の機会などにあわせ、平成19年度から順次、耐震装置付き高所作業車への導入を図ってきています。このうち、宮城県内については、合計で22台ありますが、来年1月に全て、このタイプへの更新が完了する予定であります。全社的には今年度末までに更新を完了する予定となっています。

 

 以上が、耐震装置付き高所作業車の概要です。

 

 当社としましては、30年以内に発生すると想定される宮城沖県地震も踏まえ、今後とも、訓練や様々な検討を積み重ね、災害対応力のさらなる向上に努めてまいりたいと考えています。

 

○冬季の電力供給について

 最後に、冬場の電力供給について申し上げます。これから本格的な冬を迎えますが、当社では例年1月から2月前半にかけて、冬場の電力需要のピークとなります。今年度については、この期間、女川1号機、2号機、3号機の全3機が営業運転中であり、更に、現在定期検査中の東通1号機が12月中に調整運転に入る予定となっています。こうしたことから、仮に寒波の到来などにより厳しい冬となった場合でも、供給力は十分に確保できる見通しとなっています。

 しかしながら、暴風雪などによる災害など不測の事態も予想されるため、備えを万全に、気を引き締めて、冬場の安定供給に努めてまいりたいと考えています。

 

 本日、私からは以上です。

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