○高橋社長からの説明事項
本日は、一昨年の12月に、新潟県下越地方を中心に発生した停電について、事故が起きた送電線を対象とする設備対策が、11月末をもって完了する予定であることから、その概要と他地域への水平展開について説明させていただきます。
○非常災害対策訓練について
本題に入る前に、先日実施した非常災害対策訓練について、若干触れさせていただきます。
当社では、11月20日(火)、新潟県中越沖地震を踏まえた非常災害対策訓練を実施しました。今回の訓練では、宮城県沖を震源とするマグニチュード8.0の地震により、宮城県内全域で50万戸にのぼる大規模な停電と、女川原子力発電所における設備被害が同時に発生するという想定のもと、情報伝達訓練や女川原子力発電所における消火訓練、被災事業所への応援要員の派遣訓練などを実施しました。なお、今回のような想定のもとに訓練を実施したのは、当社としては初めてとなります。
今回の訓練の結果については、現在、分析・評価を行っているところです。実際に災害が発生した場合には、社内外ともに相当錯綜した中での対応を余儀なくされますが、こうした中でも、災害復旧や情報提供などが迅速、的確に行われるよう対応策を改善し、さらに訓練を積み重ねてまいります。
○平成17年12月新潟県下越停電について
それでは、本日のテーマについて説明させていただきます。
一昨年(平成17年)の12月22日、朝8時頃、塩害と暴風雪の影響により、新潟県下越地方を中心に、最大で約65万戸におよぶ停電が発生しました。当社では、一刻も早く停電を解消できるよう、昼夜を分かたず、懸命の復旧作業にあたりましたが、強風が吹き荒れる悪天候が災いし、全ての停電が復旧したのは、停電発生から30時間以上が経過した、翌23日の午後3時過ぎとなりました。新潟市などにお住まいの皆さまには、寒い中、長時間にわたり大変なご不便、ご迷惑をおかけしました。
停電が発生した12月22日は、非常に強い寒気の影響により、大量の降雪を伴う台風なみの強風が吹き荒れるとともに、送電線への着雪が起こりやすいとされる、0℃から2℃の気温が長時間継続するという、送電設備にとっては極めて過酷な気象条件にありました。
その後の調査の結果、この停電の原因は、「塩雪害」と「ギャロッピング現象」によるものと判明しました。「塩雪害」とは、海水に含まれる塩分を含んだ湿った雪が、送電線の碍子のひだを覆うように付着し、送電線が絶縁不良を起こす現象です。また、「ギャロッピング現象」とは、電線に羽根状に雪が付着し、強風が吹いた場合に、風の揚力によって電線が大きく振動する現象です。これらの現象により、送電線が同時多発的に故障し、広範囲で長時間にわたる停電に至ったものです。
当社では、この調査結果から、事故が発生した新潟県下越地方の送電線を最優先に、設備対策を実施することとしました。
従来、電圧が15万4千ボルト以下の送電線については、「長幹碍子」を使用していました。これは、平常時に徐々に蓄積する汚損に強い碍子ですが、送電線2回線のうち片側1回線について、塩雪害や台風などによる短時間での汚損に強い「懸垂碍子」
に取り替えることとしました。異なる特徴を持つ2つのタイプの碍子を併用し、それぞれの長所を活かすことで、さまざまな気象条件に対して、総合的に強い設備が構築できるものと考えています。
次に、「ギャロッピング現象」への対策ですが、27万5千ボルト以上の送電線については、従来のスペーサを、風の揚力を抑えることにより「ギャロッピング現象」を抑制する「ルーズスペーサ」に取り替えることとし、また、15万4千ボルト以下の送電線については、送電線同士の接近を防止する「相間スペーサ」を取り付けることとしました。
この取り付け工事は、「ルーズスペーサ」については、昨年5月に7,194個の取り替えが完了し、また「相間スペーサ」については、昨年11月に296組の取り付けが完了しました。また、「懸垂碍子」については、明日(11/30)の作業をもって、鉄塔1,956基で取り替えが完了する予定となっており、新潟県下越地方で事故が発生した送電線を対象とする設備対策については、これをもって全て終了することとなります。
これらの対策により、新潟県下越地方の送電設備の信頼度が高まり、より一層冬季における安定供給が図れるものと考えています。
また、当社では、供給エリア全体における送電設備の信頼度向上を図るため、この新潟県下越地方における事故発生箇所への設備対策と平行して、その他の地域においても、「塩雪害」および「ギャロッピング現象」が発生する恐れのある箇所を改めて調査し、同様の設備対策を実施することとしました。
具体的には、「塩雪害」が発生しやすいと思われる青森県、秋田県、山形県、新潟県において、日本海側を通過する送電線の鉄塔、約6,600基について、送電線2回線のうち片側1回線を、既設の「長幹碍子」から「懸垂碍子」に取り替えることとしました。
また、「ギャロッピング現象」の対策としては、各県において、過去の事故実績やシミュレーションの結果から、この現象が発生しやすいと判断される箇所を選定し、「ルーズスペーサ」については約50の送電線、「相間スペーサ」については約300の送電線に取り付けることとしました。
なお、宮城県内においては、「ルーズスペーサ」と「相間スペーサ」を、それぞれ約20の送電線に取り付けることとしました。
これらの対策は、昨年4月に着手した新潟県内における碍子の取り替え工事を皮切りに順次開始していますが、今後の詳細な工程については、現在検討を進めているところです。なにぶん工事量が多く、また、作業に伴う停電の調整も必要となることから、完了までには相応の期間を要するものと思われますが、できるだけ早期に完了できるよう、鋭意取り組んでまいります。
明後日から12月に入り本格的な冬を迎えますが、当社としては気を引き締めて、安定供給に万全を期してまいる所存です。
本日、私からは以上です。
以上