プレスリリース

第2回「原子力のあり方に関する有識者会議」の開催結果について

平成24年12月 5日

 当社は、本日、「原子力のあり方に関する有識者会議」を開催いたしましたので、その概要について以下のとおりお知らせいたします。

 本会議は、これからの原子力のあり方といった大きなテーマを見据え、原子力全般にわたる課題に関して、社外の有識者の方々から幅広くご意見・ご助言をいただくことを目的に設置したものです。

 第2回目となる本日の会議では、「震災から得た教訓と課題について」をテーマに、委員の方々からご意見・ご助言を頂戴しております。

 

【第2回「原子力のあり方に関する有識者会議」開催結果の概要】

 ●開催日時  平成24年12月5日(水)10時00分〜12時00分

 ●開催場所  東北電力本店ビル

 ●出席者    別紙のとおり

 ●テーマ    「震災から得た教訓と課題について」

 ●概要

 会議では、海輪社長からの挨拶の後、当社より「震災から得た教訓と課題」に関して「安全対策(設備)」「組織・風土(土壌)」「人材育成(能力)」「社会とのコミュニケーション(信頼)」の4点の課題を抽出し説明した。その後、出席委員の方々よりご意見を拝聴した。

 本会議における社長の挨拶要旨および出席委員の方々からの主なご発言は以下のとおり。

 

【社長挨拶要旨】

・  第1回会議(平成23年11月8日)では、女川原子力発電所において、緊急安全対策などをご覧いただいたうえで、現地でさまざまなご意見を頂戴いたしました。前回会議で委員の皆さまから頂戴したご意見は、その後の安全対策の詳細検討や企業倫理に関わる社内ルールの制定などの参考にさせていただきました。さらに、会議以降も、弊社からの依頼にご対応いただき、技術的な側面やコミュニケーションなどの視点からの専門的なアドバイスや社内講演会なども行っていただきました。

 

・  原子力をめぐる動きについて、規制面においては、9月に原子力規制委員会が発足し、新たな安全基準について「来年1月に骨子案の提示、7月に実施」というスケジュールが示されております。また、立地自治体のみならず30km圏内となる周辺自治体(UPZ)も含めた地域防災計画を、来年3月までに整備することとされています。

・  原子力規制委員会の田中委員長は、原子力発電所の再稼働にあたっては、新基準をクリアすること、ならびに地域防災計画が整備されていることが要件になると発言されております。一方で、電力事業者の自主的な取り組みとして、11月に原子力安全推進協会(JANSI)という新組織が発足しました。この組織は、原子力安全の確保について、規制要求に留まることなく、民間ベースで世界最高水準の安全性を継続的に確保していくことを目的としており、事業者とは独立した立場から事業者の安全対策を評価し、安全性向上策の指導・支援を行うものです。原子力政策・エネルギー政策の行方は依然不透明であり、再稼働へのプロセスも見えてきておりません。事業者といたしましては、国民経済への影響なども踏まえ、現実的な工程を含めて整合性のある政策が早期に提示されることを期待しているところです。

・  当社といたしましては、これまで行ってきた緊急安全対策やシビアアクシデント対策などの規制要求に留まることなく、新組織の知見や指導も反映しながら、後追いではなく、むしろ先取りする形でしっかりと安全対策を進めて、地域の皆様のご理解を得る努力を続けていくことが何よりも大切なことであると考えております。

・  本日の議題は、「震災から得た教訓と課題」としております。内容といたしましては、私どもが実際に体験した震災時の対応や、各種事故調査報告書の記載内容などを踏まえて、「震災や東京電力福島第一原子力発電所事故から何を学び取ったのか」、「今後、どのように取り組んでいくのか」、その上で「何を課題として考えているのか」などを当社から率直にお示しした上で、皆さまからのご意見、アドバイスを頂戴したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 

【出席委員の方々の主なご発言】

【主に「安全対策」について】

・  「想定外の事象への対策についてどこまで対応するか」という論点について、あらゆることに対して設備を適合させていくことは現実的ではない。ポイントは有事においてフレキシブルな対応ができるよう多様な対応シナリオを考えておくことである。具体的には、今回の東日本大震災において使用不能になった設備は何か、または使用可能だった設備は何かという点を洗い出した上で、シビアアクシデントに至らないようにするためのシナリオを複数作成し、それらを体系的に理解し、実践できるようにしておく必要がある。また安全対策の実施状況について情報発信する場合には「東日本大震災前よりも現在のほうが格段に原子炉の安全性が向上している」ということを「分かりやすく」伝えることが地域住民からの支持につながるはずである。

・  対応シナリオを考えるのは、思考の訓練にもつながるものと考えている。こうしたクリエイティブな仕事をする機会を若い社員に与えることも重要ではないか。

 

・  「想定外の事象」と「想定除外の事象」とを切り分けることが必要である。「想定除外の事象」とは、当初は「想定」していたが、検討した結果「想定から外した事象」ということであり、福島第一原子力発電所事故における「津波」がこれに該当する。この「想定除外」の事象について大切なことは、万が一「想定除外」の事象が現実のものとなった時に、「打つ手がない」という状況にしないことである。この点についてはしっかりと留意してほしい。

・  「基本」「日常」「応用力」の3つがポイントである。今回の福島第一原子力発電所事故などを経験し改めて痛感したことは、住民の安全確保に関する規制やルールがありながらも実はそれが実務レベルまで浸透していなかったということ。つまり地域住民の期待するレベルまで「基本」「日常」の取り組みが達していなかったということである。また、「基本」や「日常」ができていたとしても有事の際に「応用力」がいかに発揮されるかが大きなポイントである。これが機能しなければ「基本」「日常」も意味がなくなる。

 

【主に「組織・風土」について】

・  論点の一つに「常に挑戦し続ける職場風土の醸成」が挙げられている。組織の風土というものは「これまでその組織が求めてきた人材像の積み重ね」であり、組織のメンバーである自分たち自身が作ってきたものである。この点をしっかりと自覚する必要がある。また、「よい風土」は継続し「悪い風土」は改善する必要があるわけだが、組織の風土には「うらはら」な面があることにも留意する必要がある。例えば「真面目な人が多い」という良い組織風土が悪い方向に向くと「どんな指示にも従う」風土となってしまう。これが企業不祥事の遠因となる。

・  もう一つの論点に「改善する意識の弊害となる風土の改善」が挙げられている。企業倫理の面からも大きな課題となっているのは「不作為の罪」である。つまり「手をこまねいて後ろからみているだけで何もしない」ということである。この「不作為の罪」は1.諦め・無力感 2.傍観・無関心 3.不平不満 の3点が原因。「不作為」というものは対応しなくても叱られることがないなど、動機づけがないものである。従って「不作為の罪に対応している社員をどのように評価するか」が経営層の重要な役割である。

・  東北電力は「夢と誇りに溢れる魅力的な職場作り」を目指すとのことだが、夢や誇りはとても重要な要素である。このためには単に「仕事」として割り切るのではなく、仕事に対して「情熱」が感じられるような仕組みが必要である。内向きにならずに地域の様々な方々と積極的に顔をあわせていくことが大切ではないか。これは企業のトップのみならず現場の社員にも必要なことである。

 

【主に「人材育成」について】

・  東北電力が挙げている「スペシャリストの養成」は特に期待するところ。スペシャリストであるためには本人の気概と自信が必要となる。そのための取り組みについて地域住民の視点から申し上げると、技術系の方と地域住民が常日頃から対話ができるような環境づくりが重要ではないか。特別なテーマは必要なく、その方が普段どのような仕事を行っているかという日常的なことで十分。これでコミュニケーションができれば地域住民との間によい効果が得られると思うし、技術系社員にとっても「地域の方に認められた」という自信につながるのではないか。私が知っている方は、理解をしていただきたいという情熱を持って説明をし、地域住民からの信頼を得ていた。多くの方が地域住民と対話する機会を設けてほしい。

・  技術系の方の中から、技術的な話をわかりやすく平易にお伝えできる方を発掘し、養成していくことも重要ではないか。

 

【主に「社会とのコミュニケーション」について】

・  東日本大震災に伴い,地域の住民が女川原子力発電所に避難した。これは、東北電力が日頃から立地地域の住民とコミュニケーションを重ね信頼関係を構築してきたからこその出来事であると考えている。東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い原子力防災重点地域が拡大されるが、こうしたことを踏まえ東北電力には、これまでの地道な努力を継続し、地域住民との信頼を構築していただきたい。

・  原子力発電の停止は、単に原子力だけの問題だけではなく、「電気料金の値上げ」、企業の海外進出に伴う「国内空洞化」、さらには雇用への影響など経済全体にわたる。にもかかわらずそのような視点からの論調が少ないことは残念である。

・  東北電力のコミュニケーションに対する考え方にはぶれない力強さを感じる。一方で少し物足りなさも感じている。東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故以降、電力会社として主張しにくい雰囲気があることは事実であるが、「正すべきは正し、主張すべきは主張する」ことが必要であり、また、そのような気概を持ってほしい。仮に萎縮して主張することを控えればプラスになるかというとそうではない。住民側からすれば「やはりこれまでもよくなかったということだ」と受け止められてしまう。

 

以 上

 

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