プレスリリース

「次世代落雷位置標定システム」の開発について〜これまで捕捉困難だった冬季雷の捕捉率を改善、標定誤差も従来の半分に〜

平成22年 7月16日

 当社はこのほど、Vaisala(ヴァイサラ)社(本社:ヘルシンキ、気象観測機器メーカー)と共同で、冬季に日本海沿岸地域で発生する特有の雷(冬季雷)の捕捉率を改善した「次世代落雷位置標定システム」を開発しました。

 落雷位置標定システムは、落雷から放射される電波をセンサで捉え、基準としている電波の波形(基準波形)との照合により落雷を判別し、データ解析により落雷の位置、時刻、強さなどをリアルタイムで推定するシステムです。当社は、送電線の保守対応の迅速化などを目的として、平成3年度に従来型の同システムを国内で初めて導入し、当社管内全域における落雷状況について観測を行っております。

 しかし、従来のシステムは、日本海側で発生する冬季雷を捕捉できないことがあり、改善が求められていました。このため当社は、平成11年度から同システムにおける冬季雷の捕捉率の改善に取り組み、十余年に及ぶ研究開発を経て、このほど高精度で冬季雷を捕捉する「次世代落雷位置標定システム」について実用化の見通しを得ました。

 具体的には、一般的な夏季の落雷は、雲から地面に放電する「下向き落雷」であるのに対し、冬季雷は地面から雲に向かって放電する「上向き落雷」が多いことは、過去の研究により認識されておりました。しかし、「上向き落雷」の詳細な性状等については、それまで解明されておりませんでした。このため、当社は冬季に送電線故障を引き起こした落雷について、落雷時に放射される電波の調査分析を行い、冬季雷のメカニズムの解明に取り組みました。

 その結果、「上向き落雷」から放射される電波の波形は、「下向き落雷」と異なる様相をしており、従来型の同システムの基準波形に適合せず、捕捉率が約40%に留まっていることが判明しました。この知見をもとに、平成14年度からはVaisala社と共同でシステムの改善に取り組み、同社の最新センサを用いて、「上向き落雷」の捕捉率向上を図った「次世代落雷位置標定システム」を開発したものです。

 「次世代落雷位置標定システム」については、センサの性能向上と最適配置により、従来の9基より少ない6基のセンサで当社管内全域をカバーし、実証試験における落雷の捕捉率は、「上向き」「下向き」の放電タイプの区別なく約90%と、高い捕捉率を確保しております。また、落雷位置の標定誤差は、従来のおよそ半分の500m以内に改善しております。

 これまで、送電線への落雷位置を推定できない場合、当該線路全体の健全性を確認するために巡視点検の範囲が数十kmに及ぶことがありましたが、今回の開発により、年間を通じて高精度で落雷位置を推定できることから、巡視点検などの保守対応が一層効率的となり、送電線故障個所の早期発見・特定につながります。また、落雷データ(落雷位置、時刻)については、従来から当社ホームページを通じてリアルタイムで一般に提供しておりますが、今後はさらに確度の高い情報を提供することが可能となります。

 「次世代落雷位置標定システム」について現在、当社管内において実証試験を行っており、来年度から本格的に運用を開始する予定です。
 なお、今回開発した「次世代落雷位置標定システム」で高精度に捕捉可能となった「上向き落雷」については、日本海沿岸のほか海外でも発生すると言われております。当社としては、このたびの研究開発が、国内はもとより海外における落雷捕捉率の向上に貢献していくことになればと期待しております。

以上

【参考】
○Vaisala(ヴァイサラ)社[日本代理店:株式会社サンコーシヤ(本社:東京都品川区)]

本 社: ヘルシンキ
拠 点: フィンランド、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツ、中国、インド、 スウェーデン、UAE、マレーシア、日本、オーストラリア
従業員: 約1,400名(2009年末)
売上高: 2億3,180万ユーロ(2009年末)

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