当社はこのほど、三菱電機株式会社と共同で、工場など主に大口電力のお客さま向けの新型高圧瞬時電圧低下対策装置※1・2「COMPACT※3」を開発いたしました。
送電線など電力系統に落雷などがあると、瞬間的に電力系統の電圧が低下することがあります。このような瞬時電圧低下(以下、「瞬低」)が発生した場合、工場などのお客さまにおいては製造ラインが停止するなど、大きな影響を受ける可能性があります。
当社としては、お客さまにできるだけ影響が生じないよう、架空地線※4や避雷器の設置といった設備対策を行っておりますが、電力系統は厳しい自然環境にさらされており、また莫大なエネルギーを持つ雷に対しては、これらの対策を施しても瞬低を完全に防ぐことはできません。
このため当社では、こうした設備対策とともに、瞬低により多大な影響を受ける恐れのあるお客さまには、重要設備への瞬低対策装置の設置などをお願いしております。
今回開発した装置は、当社が平成17年度から研究開発を進めてきたもので、平成18年度からは、三菱電機株式会社と共同で開発を行ってきました。
今後、三菱電機株式会社より販売を行うほか、当社の関係会社である東北エネルギーサービス株式会社においても取り扱うこととしております。
本装置では、切換スイッチに高性能の半導体素子を採用することなどにより、世界最小レベルのコンパクト化を実現いたしました。これにより、設置スペースが確保できず導入を見合わせていたお客さまにとっても、導入の可能性が拡がることとなります。
また、運転効率※599.5%(容量3000kVA、高効率運転モード時)という、世界最高レベルの省エネ性を達成しており、コストを大幅に削減することが可能となりました。
さらに、1/1000秒という世界最速レベルの切換時間※6を実現することで、瞬低による影響を最小限に抑えることが可能となっております。
当社としては、こうした技術開発などを通じて、今後とも、お客さまサービスの一層の向上に努めてまいりたいと考えております。
なお、本装置の概要については別紙のとおりです
以上
※1 瞬時電圧低下
送電線に落雷などがあると、送電線がショート(送電線の電線間や送電線と鉄塔の間が電気的に繋がること)し、ショートしたところに瞬間的に大量の電流が流れてしまうことがあります。このため、当社の変電所の保護装置により、ショートした送電線への送電を瞬時に遮断し、ショートを解消します。
このとき、ごく短い間(0.07秒〜1秒程度)、ショートした送電線や近傍の送電線の電圧が低下します。この短時間の電圧低下を「瞬時電圧低下」または略して「瞬低」といいます。
※2 瞬時電圧低下対策装置
瞬時電圧低下対策装置とは、瞬低が発生した際、電力系統からの電力供給を遮断し、蓄電部からの電力供給に切り換えることで、瞬時に電圧を復旧し瞬低の影響を最小限に抑える装置です。装置の回路は、大きく分けると、高速の切換スイッチ、双方向変換器(交流⇔直流)、蓄電部で構成されています。
※3 COMPACT
The high-speed compensation system for instantaneous voltage drops, integration of MITSUBISHI parallel-proceeding conversion technology and Tohoku EPCO’s expertise「東北電力・三菱電機共同開発の高速瞬低補償装置」の略。加えて、「コンパクト(超小型)な瞬低対策装置」を表しています。
※4 架空地線
架空地線とは、送電線に雷が直撃するのを防ぐもので、送電鉄塔の一番上に設置されている線です。
※5 運転効率
運転効率とは、瞬低対策装置によって、電力のロスがどの程度生じるかを表したもので、出力電力と入力電力の比で算出します。この数値が高ければ高いほど、電力のロスが少なく省エネ性が高いことになります。
※6 切換時間
切換時間とは、瞬低発生後に、電力供給が電力系統から瞬低対策装置(蓄電部)に切り換わるまでの時間を指します。この時間が短ければ短いほど、瞬低によるお客さま設備への影響を最小限に抑えることができます。