当社は、平成25年10月24日、原子力規制委員会より、指示文書『米国情報「電源系統の設計における脆弱性」に係る報告の指示について』を受領しました。
本件は、米国の原子力発電所において、三相交流電源の外部電源の1相が欠損(開放故障)し、その状態が検知されなかったため、原子炉自動停止後に起動した安全系ポンプ等が停止した事象を受け、各原子力事業者に対して、同事象が発生した場合の検知の可否や検知後の対応等について報告することを求められたものです。
当社は、本指示に基づき、女川原子力発電所および東通原子力発電所における対応状況等を取りまとめ、本日、同委員会へ報告しました。
報告の概要は、以下のとおりです。
- 当社原子力発電所においては、三相交流の所内電源系は各相ごとに電圧低下を検知する交流不足電圧継電器※1が設置されているため、その警報により電源系の異常を検知することが可能であることを確認した。異常検知後は、原子炉給水ポンプなどの停止により原子炉が自動停止するとともに、非常用ディーゼル発電機が自動起動して給電されることで、非常用炉心冷却系※2機器が自動起動または待機状態となるため、電源系の異常の影響は受けず、最終的に残留熱除去系※3が機能すること、また、運転員が適切な対応を行い、原子炉を冷温停止できることを確認した。
- 変圧器の負荷が少ない場合等には、交流不足電圧継電器で検知できない可能性があるが、その場合でもポンプ類の運転状況により運転員が電源系の異常を判断し、電源の切替や非常用ディーゼル発電機の起動などを行い、検知した場合と同様に冷温停止に向けて適切な対応が行われることから、発電所の安全性に影響を及ぼす問題には至らないことを確認した。
また、本事象が発生した米国の原子力発電所と当社原子力発電所では変圧器1次側(送電線側)の接続構造が異なることから同様の事象(地絡・短絡を伴わず1相が開放故障すること)が発生する可能性は低いと考えられますが、運転員に対して本事象に関する定期的な教育の実施ならびに日常監視や設備の巡視点検を実施することにより電源系の異常の早期発見に努めてまいります。
以 上
※1 交流不足電圧継電器
保護継電器(電圧や電流の急激な変化から電気機器を保護する装置)のひとつ
で、停電や事故などで電圧低下が発生した場合に遮断器の開放や警報を発報さ
せる継電器。
※2 非常用炉心冷却系
原子炉冷却材喪失時、原子炉に冷却水を注入するための系統、および注入を円
滑にするために原子炉を減圧するための系統の総称で、高圧炉心スプレイ系、低
圧炉心スプレイ系、残留熱除去系、自動減圧系で構成されている。
※3 残留熱除去系
原子炉停止後に原子炉から発生する崩壊熱を除去・冷却するための機能や、原
子炉冷却材喪失時に非常用炉心冷却系として炉心へ冷却水を注入する機能等を
有する系統。
(参考)
米国の原子力発電所(Byron2号機)における事象概要
- 平成24年1月30日、米国Byron2号機は定格出力運転中に起動用変圧器の架空碍子の損傷により、地絡・短絡を伴わず三相交流電源の1相が欠損(開放故障)した状態が発生した。
- このため、常用母線の電圧が低下し、原子炉が自動停止した。
- 三相交流電源の1相開放故障が検知されなかったため、非常用母線の外部電源への接続が維持され、非常用母線各相の電圧が不平衡となった。
- 原子炉停止後に起動した安全系補機類が、非常用母線の電圧不平衡のため過電流により停止した。
- 運転員が1相開放故障状態に気付き、外部電源の遮断器を手動で動作させたことにより、外部電源系から非常用母線が開放され、非常用ディーゼル発電機が自動起動し電源を回復した。
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