当社女川原子力発電所では、275kV母線保護装置※1の更新工事において保護装置の確認試験を実施していたところ、平成27年9月29日、1号機の所内電源(常用電源および非常用電源)に停電が発生し、非常用ディーゼル発電機が自動起動する事象が発生しました。これにより、1号機の使用済燃料プールを冷却するポンプが停止しましたが、非常用電源復旧後、再起動しました。
その後の復旧過程において、再度常用電源に停電が発生する事象がありました。なお、非常用電源は非常用ディーゼル発電機により確保されていたことから、使用済燃料プールを冷却するポンプの運転には影響はありませんでした。
原因は、母線保護装置の確認試験時および停電の復旧過程において、しゃ断器の操作にあたり、別のしゃ断器を動作させないための電気的な処置(以下、「アイソレ※2」という。)が不足していたことによるものでした。
なお、本事象につきましては、平成27年10月13日に、原子力規制庁女川原子力規制事務所より指導文書※3を受領しております。
(平成27年10月13日お知らせ済み)
当社は、原子力規制庁女川原子力規制事務所からの指導文書も踏まえ、本事象に関する原因分析を行い、このたび、再発防止対策を取りまとめました。
主な原因は、担当者による回路図面の見誤り、アイソレに関する「ルール」や計画外作業検討における「体制」に不明確な点があったことなどと考えており、ルールの改善やアイソレの検討体制の明確化などの対策を行うとともに、所員に対して、アイソレ検討・管理に関するルールを徹底させる教育を継続的に実施してまいります。
当社としましては、このたびの一連の事象を真摯に反省し、今回の原因分析を踏まえた再発防止対策を着実に実行していくことにより、原子力発電所の安全確保に万全を期してまいります。
なお、今回の停電事象に際し、地元関係自治体等に対する情報提供のあり方に改善すべき点があったと考えております。
今後は、地元関係自治体等への情報提供および公表にあたっては、発生した事象の内容に応じて、社会的な関心や地域の皆さまの受け止めを十分に踏まえ、より適切な対応に努めてまいります。
本事象に関する原因と再発防止対策は、以下のとおりです。
【原因と再発防止対策】
1.原因
(1)1回目の停電
① 試験担当者による回路図面の見誤り [直接原因]
担当者が、しゃ断器の動作を防止するセルフアイソレ※4について、回路図面を一部見誤り、本来必要であったアイソレを不要と判断して試験を開始した結果、所内電源を停電させたもの。
回路図面を見誤った要因は、同様な作業で行っている回路図面へのマーキングを施すなどの確実なアイソレの検討がなされなかったことによるもの。
② セルフアイソレ取り止めのルールが不明確 [組織要因]
担当者が、セルフアイソレを不要として取り止めることを単独で判断し、その取り止めについて上長が確認しなかったもの。
当該アイソレの取り止めについて単独で判断した要因は、セルフアイソレを取り止めるルールが不明確であったことによるもの。
(2)2回目の停電
① 復旧作業担当者の回路図面の見誤り [直接原因]
非常用ディーゼル発電機から外部電源への受電に切り換えるための復旧作業において、担当者が、アイソレ検討段階で回路図面を一部見誤り、必要なアイソレを抽出できなかったもの。また、アイソレの検討結果については、ダブルチェックを行うこととしていたものの、上長はアイソレが不足していることに気付くことができなかった。
これらの要因は、回路図面へマーキングを施すなどの確実なアイソレの検討がなされなかったことによるもの。
② 計画外作業手順の作成過程における役割分担、責任者が不明確 [組織要因]
今回のような計画外作業手順の作成過程において、役割分担、責任者を明確にした体制がとられていなかった。
2.再発防止対策
(1)ルールの改善
① アイソレの検討過程において、アイソレの確認を確実に行うために回路図面にマーキングする等のルールを明確にする。
② セルフアイソレを取り止める場合、その妥当性を確認するルールを明確にする。
(2)計画外作業手順の検討体制の明確化
計画外作業の手順書を検討する場合、アイソレや手順書の内容を確認する役割・責任分担をルールで明確にする。
(3)教育の実施
アイソレ検討・管理に関するルール(アイソレの確実なチェックを行うためのルール、セルフアイソレ取り止めに関するルール)を徹底させるための実践的な教育を継続的に実施する。
以上
※1 母線保護装置
発電所で発電した電力の送電または外部電源を受電するための設備である開閉所において、短絡・地絡などの電気的な故障が発生した場合、故障箇所のしゃ断器を開放し、故障が広がらないようにする装置
※2 アイソレ
作業による他系統・設備への影響・波及を防止するために作業前に講じる電気的な処置。本文では、隔離等を意味するアイソレーションの略語として使用。
※3 指導文書
「1号機における所内電源系統の停電について(指導)」
1. 安全処置作成時の運用ルール及びセルフアイソレの運用ルールについて、見直しを行うこと
2. 計画外作業手順書の作成時には、責任・役割分担を明確にし、検討結果が確認できる仕組みを定めること
3. 上記の対応にあたっては、組織要因を踏まえ、再発防止対策を検討すること
※4 セルフアイソレ
アイソレのうち、保修作業担当グループが自ら行う電気的な処置。
アイソレは、原則、運転管理担当グループが実施することとしているが、現場の状況(作業の進捗状況や作業内容)に応じて実施すべきアイソレについては、「セルフアイソレ」として、保修作業担当グループが実施している。
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