元気お届け!ジーバー弁当
〜株式会社ユカリエ〜

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 地域課題解決に取り組む団体を助成金でサポートする、東北電力の「東北・新潟の活性化応援プログラム」。今年度の助成団体の皆さんが、どのようなことにどんな想いで取り組んでいるのかインタビューしました。

シニア活躍の場を創出し、若者の負担を減らしたい。両者が生きやすい社会のための第一歩

 地域産業の振興や地域コミュニティの再生・活性化など、地域課題解決のために事業・活動を行う団体を応援する、東北電力の地域づくり支援制度「東北・新潟の活性化応援プログラム」。2023年は、ビジネスの手法を活用して課題解決に取り組む「ソーシャルビジネス部門」、地域の団体等が地域社会の課題解決を目指す「コミュニティアクション部門」の両部門において、それぞれ最優秀賞・優秀賞団体を選定しました。
 ソーシャルビジネス部門の最優秀賞は、仙台市で不動産事業や高齢者の生活サポート事業などを展開する「株式会社ユカリエ」。そのプロジェクトや今後の展望について、代表取締役の永野健太さんにお話を伺いました。

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株式会社ユカリエ 代表取締役社長 永野健太さん

ーー受賞したプロジェクトの内容についてお聞かせください。

 地域のおじいちゃん・おばあちゃんが真心込めてお弁当を手作りし、働く現役世代においしさと健康を届けることを目的に、2022年から仙台市太白区の長町商店街を製造拠点とした「ジーバーFOOD」を運営しています。
 ここで働くシニアの人たちには、「料理を目の前で食べてもらい、おいしいという声を聞きたい」という思いがあります。一方で地域には、孤独を感じている若者が一定数います。まるで実家に帰ってきたかのようにくつろげる食堂、世代を超えて交流できる場があれば、お互いのニーズを満たせると思い、お弁当製造の枠を超え、その場で食事を楽しめる「ジーバー食堂」を計画しました。ありがたいことに各方面から「この場所でやらないか」という声をいただき、出店場所を選定している最中です。

ーーなぜシニアを対象とした事業を始めようと思われたのですか。

 以前は不動産事業をメインで展開していましたが、コロナ禍で世の中が一瞬静かになった時に、「この事業だけを継続することに意味はあるのか」と自問自答するようになりました。極端な話、不動産屋がなくなっても誰も困らない。我々は地域に対して価値を提供していなかったんです。「地域から必要とされる事業をやろう」「『必要だよ』と言ってもらえる会社になろう」そう考えていた時、長町商店街の方とコネクションができ、「商店街を元気にするために、空きテナントを活用して何かやってみないか」と相談を受けました。自分の中でシニアが活躍する場をつくりたいと考えていたタイミングでもありました。
 シニア世代には「まだまだ働きたい、新しいチャレンジをしたい」と本気で思っている人がたくさんいます。逆に若者に目を向けると、少子高齢化により負担ばかりが増え、チャレンジの機会が削ぎ落とされているのが現状。活躍するシニアが増えれば、若者の負担は減り、両者にプラスの効果が生まれます。これは社会的意義の大きい事業になると考えました。

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多くのシニアの得意分野を、働く現役世代の不健康な食生活改善へとつなげる

ーーさまざまな事業が考えられる中で、食をテーマにした理由は。

 まず、料理はシニアの得意分野であることがひとつ。特に多くのおばあちゃんは家庭料理のプロ。「おばあちゃんの手作りお弁当」と聞いただけで、すごくおいしそうですよね。食に目をつけたもうひとつの理由は、働く現役世代の不健康な食生活を改善できると考えました。私自身もそうでしたが、若い世代は食生活が荒れているケースが多く見受けられます。
 改善策はとてもシンプルで、栄養バランスをきちんと考えられた手作り料理を食べること。「ジーバーFOOD」では、レシピや味付けも実際に調理するおじいちゃん・おばあちゃんが考案しています。それらすべてが手作り。「いかにおいしい料理を届けられるか」という思いは、ここで働くシニアのやりがいになっていますし、その料理を食べる現役世代は健康につながる。とてもいい循環が生まれています。

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ーー実際に働いているシニアの方々の反応はいかがですか。

 「ジーバーFOOD」には25人程度が登録しており、シフト制で1日7〜8人に働いてもらっています。中には80歳になる人もいますが、「体が動く限りはここで働きたい」「ここで働くようになり、家族から表情が明るくなったと言われた」など、当初思い描いた以上に、地域に必要な場になっていると実感する出来事が度々あります。
 運営する上で大切にしているのは、シニアをシニア扱いしないこと。きちんと知恵や意見を出してもらい、しっかりおいしい料理をつくってもらう。提供するお弁当は好評じゃなかったことがありません。

「ジーバー」を冠にした新展開に加えて、シニア人材と企業を結ぶプラットフォームに

ーー活性化応援プログラムに応募した経緯を聞かせてください。

 どこで「東北・新潟の活性化応援プログラム」を知ったかは正直覚えていないのですが、こうしたプログラムに応募する最たる価値は、自分の頭の中が整理されることだと思います。日頃ぼんやり思い描いているビジョンをスライド資料にし、伝わるように言語化する。それらは事業計画の上で避けては通れず、応募のプロセスにこそ価値があるのかなと。その上で評価されると露出も増え、認知拡大にもつながります。我々が目指しているのは、広い括りでシニアが活躍できる仕組みづくり。それは小さな一企業の力でどうにかなる問題ではなく、多くの企業の力を借りる必要があり、みんなで地域を盛り上げるためのいい実績になりました。

ーーさらなるシニア活躍の機会創出など、今後の展望についてお聞かせください。

 「ジーバーFOOD」は県外からも問い合わせが増えており、展開拡大を進めつつ、「ジーバー」を冠にしたさまざまな事業を生み出したいと考えています。例えばおじいちゃんの夢が詰まった「ジーバークラフトビール」。退職後に地元で名産品を生かしたビールづくりができたら、ロマンですよね。
 そして、もうひとつ注力したいのがシニア人材と企業のマッチング。我々がそのプラットフォームになることです。研修プログラムを構築し、「企業が求めている人材はこういう人です。これまでの経歴プラスこのスキルを磨きましょう」と教育した上でシニア人材を送り出す。一方、持続可能に雇用してもらうためには企業側への啓蒙活動も必要で、同様にシニア人材を受け入れるためのプログラムを組み、両者納得のマッチングを提供する。このしくみは早急に実現させたいですね。

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