商店街で学ぶ「地元愛」
〜あおもり若者プロジェクト クリエイト〜

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 地域課題解決に取り組む団体を助成金でサポートする、東北電力の「東北・新潟の活性化応援プログラム」。今年度の助成団体の皆さんが、どのようなことにどんな想いで取り組んでいるのかインタビューしました。

商店街をフィールドに高校生がまちづくりを実践。2023年度にはカリキュラムを充実化

 地域産業の振興や地域コミュニティの再生・活性化など、地域課題解決のために事業・活動を行う団体を応援する、東北電力の地域づくり支援制度「東北・新潟の活性化応援プログラム」。2023年は、ビジネスの手法を活用して課題解決に取り組む「ソーシャルビジネス部門」、地域の団体等が地域社会の課題解決を目指す「コミュニティアクション部門」の両部門において、それぞれ最優秀賞・優秀賞団体を選定しました。
 コミュニティアクション部門の最優秀賞は、青森市で高校生を対象とした通年型社会教育プログラムを展開する「NPO法人あおもり若者プロジェクト クリエイト」。そのプロジェクトや今後の展望について、理事長の久保田圭祐さんにお話を伺いました。

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NPO法人あおもり若者プロジェクト クリエイト 理事長 久保田圭祐さん

ーー受賞したプロジェクトの内容についてお聞かせください。

 「商店街が学校になる」をコンセプトに、高校生と商店主が一体となって商店街活性化に取り組む「クリエイトまち塾」を2014年度から展開しています。青森駅前の商店街を学校に見立て、一年間にわたり講義やグループワークを通じてまちづくりを学び、地元愛の醸成につなげていくもので、これまでに200人以上の高校生が参加してきました。
 コロナ禍では人と会うこと自体がはばかられ、一部オンライン化や活動縮小を余儀なくされましたが、制約が緩和された2023年度には改めて活動の目的や理念を確認し、「やっぱり高校生と商店主が近い距離感で接するのが醍醐味だよね」ということで、ホームルームと呼んでいるクラスごとの活動機会を増やすなど、カリキュラムの大幅なアップデートを行いました。

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ーーどのような経緯からこのプロジェクトがスタートしたのでしょうか。

 私が高校生だった2009年、任意団体「クリエイト」を立ち上げたことが原点です。当時、青森市は東北新幹線全線開業が目前に迫っていましたが、「この開業を好機に、みんなで地域を盛り上げよう」という雰囲気が乏しいと感じました。
 新幹線開業は青森市にとって大きな出来事であるはずで、市民の意識が足りないのであれば、自分たちで高めていこう。その思いから仲間を集め、小さな活動をスタート。次第に輪が広がり、たくさんの大人も支援してくれるようになり、地域からの期待も大きくなりました。
 また、それまでは単に地域活性化を目的とした活動でしたが、まちづくりは人づくりにも一役買っていると気づき、活動の柱に教育をプラス。これが現在に至る「クリエイトまち塾」の原型となっています。

主体的に行動して初めて出会える発見、そこに広がる新しい景色を高校生たちへ

ーーどんな高校生が入塾されるのですか。

 2023年度は、18人の高校生が入塾しました。青森市内だけでなく、八戸から通っている人もいます。志望理由としては、やはり「まちづくりに興味がある」というのが多いですが、「自己啓発として色々な人の話を聴きたいから」というのもありました。

ーー高校生に対して伝えたい思い、得てほしい経験は。

 合言葉は「三人称の提言より、一人称の実践」。まちへの不満を口にするのは簡単です。でも、それだけでは何も始まらないし、生まれません。高校生には、自分たちのまちを、自分たちの手で元気にするためにどう動くかを考え、実際の行動に移してほしいですね。主体性を持って活動に臨んでこそ、初めて見えてくる景色がきっとあります。
 2023年度は「新しいまちづくり」をテーマに、18人が3クラスに分かれて活動していますが、みんな「自分の成長につなげたい」と思い参加しています。以前は素通りしていた商店街と深くかかわり、商店主と交流することを通して「商店街ってこんなに面白いんだ」「青森って何もないと思っていたけど、魅力的な資源がたくさんあったんだ」といった気づきの声が聞かれます。それらは、自ら動かなければ出会えなかった発見。新しい価値観や学びを得られている様子が伝わってきます。

ーーこれまでの取り組みを通じて、特に印象深い成果はありますか。

 商店街の価値や魅力を同世代に伝えるために、高校生自身が語り部となって商店街ツアーを部活動のように展開する「語り部(かたりぶ)」を企画したり、自分たちが運営する立場になり中学生向けに「クリエイトまち塾」を開いたり、地元ケーブルテレビの放送枠を提供してもらい商店街の情報を発信する番組も制作しました。
 大掛かりな活動は実践が大変ですが、完遂すれば忘れられない思い出や大きな経験になります。活動を通して参加者の成長を感じる瞬間も多く、例えばおとなしい印象だった子が、活動を経てプレゼンテーションで前面に立って発表する場面などを見ると、成長著しいなと感じます。いつか高校時代を振り返った時、その思い出の中で「商店街やクリエイトまち塾があったから成長できたな」と感じてくれたら、こんなに嬉しいことはないですね。

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「クリエイトまち塾」では活発な意見交換が行われる

より多くの若者を巻き込んだ活動に向け、今後もカリキュラムの魅力化を推進

ーー活性化応援プログラムに応募した経緯、また最優秀賞に選定された感想をお願いします。

 「東北・新潟の活性化応援プログラム」の存在自体は以前から知っていましたが、「この活動が果たして評価されるだろうか」と自らハードルを上げてしまっていました。ただ、活性化という意味ではベクトルの向きは同じだろうだなと。たくさんの人に我々の取り組みを知ってほしいという思いは常にあり、「青森にはこんな活動があるんだ」と発信するために応募を決意しました。結果、最優秀賞として評価され、審査員の方々に取り組みを共感いただけたことはありがたい限りです。我々の活動の主役は高校生ですが、地元大学生などが多くの時間を割いてスタッフとして関わってくれています。助成金は広報面に加えてスタッフの成長につながるサポートにも活用し、少しでも彼・彼女らにも恩返ししたいですね。また、プログラムへの応募をきっかけに、これまで関わりのなかった方とのつながりが生まれ、他地域の先進的な取り組みに触れる機会もありました。ずっと応募を躊躇してきましたが、思い切って踏み出した一歩から世界が広がりました。

「クリエイトまち塾」のホームルームでは、商店主やまちづくり関係者が「担任」となって、クラスごとにより実践的な学びを深めている

ーー「クリエイトまち塾」の今後の展望についてお聞かせください。

 「あおもり若者プロジェクト クリエイト」の名称に若者という言葉を取り入れているように、参加者である高校生だけでなく、大学生、その上の世代も含め、多くの若者にまちづくりを自分ごととして捉えてもらい、スタッフや支援者など様々な形でどんどん参加してほしいですね。「自己啓発のために」「多くの人の話が聞きたい」。理由やきっかけはそれぞれで構いません。
 私もまだ30代前半。同世代やさらに若い世代を巻き込み、みんなで活動を盛り上げていければと思います。今年度の「クリエイトまち塾」への高校生の参加者は18人でしたが、過去には30人という年もありました。
 この活動は、参加者が増えるほど多様な価値観に触れられ、取り組める内容も多くなります。コロナ禍を経てアップデートを行ったように、今後もカリキュラムの充実化など魅力を高め、情報を積極的に発信していく。2つのアプローチから、賛同してくれる若者の参加につなげたいと思っています。

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