企業グループ紹介「One Team!!」■東北計器工業■第2世代スマートメーター生産開始を目指して

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 2025年度に予定される第2世代スマートメーターの導入に伴い、 東北計器工業では生産体制構築のために本社社屋の建て替えを進めています。「お客さまや地域から信頼され選択され続ける100年企業」を目指し、未来を見据える同社の取り組みや想いを伺いました。

スマートメーターの変革期を迎えて

 宮城県大和町に本社・工場を構える東北計器工業は、1968年の設立以降、電力量計や計器用変成器などの製造、発電所・変電所における継電器の点検、送電線故障情報システム設置工事などの事業を担っています。また、配電工務用資材の物流管理、計器類資材の発送を中心とするサプライ・チェーン・マネジメント※1、スマートメーター通信ネットワークの運用保守に関する監視業務など、スマートメーターを中心とした資材管理・保守運用も受託しています。
 同社の主力製品である現行のスマートメーターは2015年から導入されましたが、今年度で切り替えが完了する予定で、有効期間(10年間)が順次満了することに伴い、2025年度以降、新たな「第2世代スマートメーター」に切り替わっていくこととされています。国の「次世代スマートメーター制度検討会」では、「電力DX推進に向けた重要なツール」として位置づけられ、通信機能の拡充や電波特性の向上を図る、一般送配電事業者10社共通の新たな仕様が示されています(下図を参照)。
 東北電力ネットワーク(以下、東北電力NW)でも、2025年度から「第2世代スマートメーター」の設置を開始し、2034年度までに設置を完了する計画です。

※1 サプライ・チェーン・マネジメント
原材料の調達から製品の配送まで、製品やサービスに関連するデータや財務の流れを管理すること

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現行スマートメーターと第2世代スマートメーターの機能比較

新社屋の建て替えに向けて

 東北計器工業では、第2世代スマートメーターの生産体制の構築などを目的に、本社社屋の建て替えを進めています。今年10月17日に起工式が行われ、現在は2025年1月末の竣工に向けて新社屋の建設工事が進められています。同社の歴史に残る取り組みの中心的役割を果たしているのが、企画総務部の「経営戦略推進チーム」です。
 同社では、2021年から同業他社に先駆け「第2世代スマートメーターに関するワーキンググループ」を設置し、情報収集に取り組んできました。2022年4月にはその事務局を引き継ぐ形で企画総務部内に経営戦略推進チームを設置しました。第2世代スマートメーターと新社屋建設に関するクロスファンクショナルチーム(以下、CFT)※2をそれぞれ組織し、企画総務部の尾形智和副部長を含めた2名が専任で業務を担っています。さらに各部所属員のうち1〜3名が経営戦略推進担当を兼務し、営業本部営業部の昆野大輔副部長、システム技術部(生産技術グループ)の橘川貴弘グループマネージャーなど10名が社内の調整などに尽力しています。
 経営戦略推進チームでは、「第2世代スマートメーターの生産開始」を最終目標としたマスタープランを策定し、フェーズごとにミッションを細分化し計画を進めており、その取り組みをさらに進化させるため、経営戦略推進担当と実務者で分科会を立ち上げ、タスクごとに進捗管理をしています。

※2 クロスファンクショナルチーム
複数の部門のメンバーによって構成されるチーム

新社屋の建て替えに向けて イメージ3

起工式で鍬入れする二坂社長

社員の声を聴き、新社屋建設に生かす

 新社屋建設に伴い、経営戦略推進チームが中心となり、社員に既存の建物のメリット・デメリットの聞き取りを行いました。「453件もの意見のうち、ほとんどがデメリットに分類されました。このデメリットをいかに改善していくかということから検討を始めました」と尾形副部長は話します。
 特に多かったのが「動線が悪い」という意見でした。同社では事業の拡大とともに建屋を増設してきた経緯にあり、構内に建屋が点在し、物流が不便な上、人の移動も多かったそうです。この意見を踏まえ、新社屋では1階を第2世代スマートメーターの生産工場に、2階には計装部を除く本社各部を同一フロア内に全て集約するレイアウトとしました。「新社屋建設の最大の目的は第2世代スマートメーターを効率的かつ安定的に生産できる工場エリアの構築ですが、デスクワークのスペースを一体化することで業務高度化や生産性向上につなげたいと考えています」。
 新社屋の大きな特長の一つが屋外搬出入口に設置する「大型下屋」です。冬は降雪量が多く、朝から除雪に追われるため、社員の大きな負担となっていました。そこで、新社屋の設計を委託した東北開発コンサルタントと相談し、新社屋と既存のC棟(製造建屋)の間に下屋(幅10m×奥行70m)を設置することにしました。正門からすぐに下屋に入れる動線のため、トラックが下屋の下で天候に影響されず荷物の積み下ろしができるようになり、物流効率の向上にもつながることが期待されています。
 既存建物のメリットを踏襲しながら、デメリット解消のための対策をCFTで検討した上で新社屋の設計に反映するなど、従業員の声を設計に生かしています。

グループ企業との連携〜さまざまな困難を乗り越える〜

 国から第2世代スマートメーターの基本的な方針が示されたのが2022年度上期のこと。それから2025年度の生産開始に向けて、新社屋の建設計画を進めるにあたり、東北開発コンサルタントと工期の相談を重ね、ECI方式を採用しました。ECI方式は設計の初期段階から施工者が参画して技術協力を行うもので、工期短縮・建設コストの縮減につながりました。また、電気設備工事計画はユアテックから、調達困難とされる資機材(変電設備、基礎抗、電線)の調達計画もグループ企業の協力を得たことから、限られた期間で建設計画を策定できたそうです。
 昆野副部長は「第2世代スマートメーターの導入では、東北電力NWは全国でも先頭集団の一角をなす予定となります。当社でも、全国初の納入メーカーとして、計器設計元の大崎電気工業とも密に連携しながら、ニーズにお応えしたいと考えています。今後、グループ企業として、遅延なく納入に向けた準備を進めていきます」と話します。

既存資源を生かしながら、新たな生産ラインを構築

 新社屋の1階にある工場にも、さまざまな課題があります。「第2世代への移行によりスマートメーターの仕様が大きく変わるため、新JIS規格に適合した新たな試験設備の導入が必要となります。また、現行スマートメーターの生産を継続しながら第2世代スマートメーターの生産ライン・設備の構築が必須です」と尾形副部長が話すとおり、既存のラインや人財を生かしながら、新社屋での生産に移る計画としています。橘川グループマネージャーも「現行のスマートメーターは累計400万台達成以降も、徹底した品質管理の下、安定した生産を継続しています。今後は、パートナー企業として最後まで現行スマートメーターの安定供給に努めるとともに、第2世代スマートメーターへ円滑に移行する上で関係箇所と連携しながら必要な準備に取り組んでいきます」と言葉に力を込めます。

既存資源を生かしながら、新たな生産ラインを構築 イメージ1

橘川グループマネージャーが所属するシステム技術部は、
製品の生産ラインを構築する主管的役割を担う

お客さまや地域から信頼され選択され続ける100年企業を目指して

 最後に、皆さんの目標をお伺いしました。

 「既存建屋も50年余り使用してきたので、新社屋も今後50年は使用されていくと考えています。その間に生産するものも業務内容も変化することが想定されるため、今回の新社屋の設計思想は将来を見据えたフレキシブルな生産ライン構築を想定しています。今後は第2世代スマートメーター生産開始に向けた検討を計画的に推進し、遅滞なく生産開始を目指していきます」(尾形副部長)

 「当社は設立以降、東北電力グループの一員としてその時代に必要な電力量計などを安定的に納入していますが、時代とともに取引用の電力量計の高度化や多様化が求められ、当社に対する期待も大きくなっていると感じています。今後も企業グループとして当社の役割を果たし、お客さまから求められる企業であり続けたいと考えています」(昆野副部長)

 「まずは第2世代スマートメーターの生産ライン構築が最優先事項と考えています。製品の品質は当然ながら、お客さまに安心してご使用いただき、安定して供給し続けるためにどのような生産ラインを構築していくか、100年企業を目指す上でも大変なミッションとなります。一つひとつの課題にOne Teamで取り組み、後世に誇れる生産ラインの構築を目指していきたいです」(橘川グループマネージャー)

 同社の構内には創業時に植樹された桜の木が立ち並びます。工事のために一部を伐採しましたが、従業員の記憶に残るよう、伐採木の利活用を検討しているそうです。歴史とともに歩みながら、未来を見据え、一丸となって困難を乗り越えていく姿勢が心に残りました。