■女川原子力発電所■重大事故の発生を想定し訓練実施〜2号機の再稼働と安全・安定運転に向けて技術力を磨く〜

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 女川原子力発電所では2号機の安全対策工事に係る作業がピークを迎えています。今年11月の安全対策工事完了、来年2月の再稼働に向けて安全確保を最優先に、関係者が一丸となって作業を進めています。
 また、技術系社員の技術力向上を図るため、有事に備えた訓練などを継続的に実施し、ハード・ソフト面の両面から安全性向上に取り組んでいます。
 8月8日に、重大事故の発生を想定した訓練などを報道機関に公開しました。この訓練の様子や再稼働とその後の安全・安定運転にかける所員の想いなどをお伝えします。

重大事故を想定した訓練の様子などを報道機関に公開

 この報道公開は、ハード・ソフト面の両面から安全性向上に取り組んでいることを、地域の方々に広くお知らせしようと実施したものです。女川原子力発電所や協力企業、原子力部、ソーシャルコミュニケーション部門などの関係者が連携し対応にあたりました。
 報道公開が行われたのは、昨年12月以来。前回は、防潮堤や緊急時対策所、ガスタービン発電機など、安全性向上に向けたハード面の取り組みを紹介しました。
 今回はソフト面の取り組みを中心に、再稼働に向けたさまざまな訓練の中から、重大事故等対応要員による大容量送水ポンプ車操作訓練や、運転員によるシミュレータ訓練のほか、ハード面として、主要な安全対策設備である防潮堤の状況を公開しました。
 当日は16社21名(新聞11社、テレビ5社)が参加。参加した記者から評価のコメントがありました。
 この報道公開にデジタルBRIDGEの取材班も参加しましたので、訓練の様子をお伝えします。

大容量送水ポンプ車操作訓練

 原子炉建屋に設置している注水ポンプが機能喪失した場合を想定し、代替のポンプとなる大容量送水ポンプ車を設置し、原子炉や使用済燃料プールへ注水するための一連の操作訓練を実施しました。
 訓練には重大事故等対応要員である発電所員3名と、協力企業のアトックス3名が参加。
 淡水貯水槽から原子炉建屋までのホースの敷設、注水ヘッダや建屋接続口へのホースの敷設などの訓練を実施しました(訓練の一部は報道公開向けにアレンジし実施)。
 今回の訓練は構内高台にあるヘリポートで行われました。なお、淡水貯水槽から原子炉建屋までの実際のルートは1km以上あり、ホースを積載した車両(ホース延長回収車)を動かしながら、荷台からホースを引き出し敷設します。
 この訓練は重大事故等対応要員が年1回以上行うこととしており、一連の操作を確実に行うことや、所要時間をいかに短くできるかがポイントとなります。
 強い日差しが照りつける中、お互いに声を掛け合いながら、真剣に訓練に取り組む作業員の皆さんの姿が印象的でした。

シミュレータ訓練

 大地震発生により原子炉が自動停止し、全交流電源の喪失や複数の安全対策設備が機能喪失する状況を想定し、運転員が事故収束に向けた対応訓練を実施しました。
 女川原子力技術訓練センター2階のフルスコープシミュレータ室で行われた訓練には、発電部の副長2名、運転員3名の計5名が参加。
 地震を模した地鳴りが室内に響くと、運転員は待避行動をとり、揺れが収まるのを待ちます。次々とアラームが鳴る中、「緊急!」「周知!」などと盤面で確認した情報を共有し合い、迅速・的確に対応。本番さながらの緊迫した空気の中、培った技能を発揮していました。
 2号機の制御盤を忠実に模擬したシミュレータでは、様々な運転モードや故障・事故の模擬操作などの訓練が可能となっており、プラント停止期間中も運転員の技術力に磨きをかけています。
 このほか、女川原子力技術訓練センター1階には発電所で運用されているポンプ、モータ、弁および電源装置など、実物の機器類を模擬した装置が配置されており、保全部門の作業員はこれらを使用し、分解点検の実技訓練や構造の理解教育を行っています。

防潮堤の状況

 主要な安全対策設備の一つである防潮堤の状況についても公開。
 延長約800m、高さは海抜約29m。想定高さ約23.1mの津波にも耐えられる設計となっており、目の前から見上げると、その高さや規模がより際立ち、圧倒されました。
 現在、排水路などの付帯設備の工事が行われており、今後も作業が進められます。

女川原子力発電所 工藤発電部長へのインタビュー

―――訓練を振り返り、どのように受け止めていますか。
 女川原子力発電所は、震災後、約12年間運転を停止していますが、日頃からシミュレータ等を活用し、さまざまな教育・訓練を行っており、技術力の維持・向上に努めています。
 皆さんにしっかりとその成果をお見せできたものと考えています。

―――今回の訓練のポイントはどのような点にありますか。
 今回の訓練に限ったことではありませんが、安全対策として配備している様々なバックアップ設備が使用できなくなった場合に、速やかに次の手段に移行することをあらかじめ想定した上で、電源、注水、閉じ込め機能の状況などを同時並行で把握しながら、「複合的に状況を判断していく」という視点で訓練を行っています。

―――女川2号機に関して、震災前と大きく変わった点について、教えてください。
 ハード面の対策として、様々な安全対策設備を設置したことです。
 それらの設備を使用するのは人であり、ソフト面の対策として、単に操作の習熟に留まらず、どのような位置づけでその設備を配備したかについても、しっかりと理解した上で、事故時にも適切に対応できる社員を育成していきたいと考えています。

―――来年2月の再稼働に向けて、どのように取り組んでいきますか。
 女川2号機については、今年11月の安全対策工事完了に向けて、作業のピークを迎えているところです。安全対策設備の設置は、我々にとって、原子炉を起動するために必要不可欠なハード面の強化策です。
 また、これらの設備を動かす技術者の技術力の維持・向上を図るソフト面の強化策も必要不可欠だと考えています。
 発電部門では、女川2号機の運転停止期間は長くなっているものの、運転員はその間もシミュレータをフルに活用し、通常運転時の操作訓練を実施してきたほか、今回のような緊急時の操作訓練も地道に行ってきており、女川2号機が再稼働を果たした際には、十分なパフォーマンスが発揮できるように技術力を磨いてきています。
 保全部門については、実物の機器類を模擬した装置等を用いて、ポンプや弁の分解点検のほか、機器や装置の操作訓練を積み重ねてきています。
 加えて、発電所全体でいえば、主に技術系社員を対象に、新規制基準で配備した新たな安全対策設備の運用管理や、操作に関する教育・訓練を重ね、技術力の向上を図っています。
 安全対策工事の完了は節目だと考えていますが、その先にある再稼働や、その後の安定運転の維持を達成することが我々の大命題だと認識しています。技術系社員の育成を含めて、しっかりと取り組みを継続してまいります。
 また、地域の方々のご意見やお気持ちを受け止めながら、高い緊張感を持って、再稼働に向けて必要な準備をしっかりと行ってまいります。

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