12年ぶり!当社最大水力「第二沼沢発電所」の点検にフォーカス

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 第二沼沢発電所1号機は、2022年5月から2023年2月までの期間で、細密点検を実施しています。1日でも早く点検を終了させ、厳しい需給や経営に貢献すべく、関係者が一丸となって工事に尽力しています。
 工事の大きな山場となった2022年11月の発電機ロータ吊り込み・据え付け作業、担当者インタビューを中心に、第二沼沢発電所の点検にフォーカスしました。

東北電力最大の水力発電所「第二沼沢発電所」とは?

 福島県金山町にある同発電所。会津地方は、全国有数の水力電源地帯であり、東北電力としては27カ所に出力合計約140万kWの水力発電所を有しています(阿賀野川水系)。

東北電力最大の水力発電所「第二沼沢発電所」とは? イメージ1

本名発電所(出力:78,000kW)。
手前には2022年10月に豪雨災害から復旧した「只見線」が見える

 会津若松市には、東北6県および新潟県の水力発電所・ダムを24時間監視制御する「水力運用センター」も立地。会津地方は、水力部門にとって重要な拠点となっています。

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 その中でも、最大出力46万kWを誇る揚水発電所が「第二沼沢発電所」です。上池の沼沢湖(火山活動でできたカルデラ湖)、下池の宮下調整池(只見川)の落差214mを利用して、発電と揚水を行います。

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第二沼沢発電所(発電設備自体は赤丸個所の地下)

 これまでは、休日や祝日、夜間の電力需要の少ない時に揚水運転を行って沼沢湖に水を汲み上げ、電力需要の多い平日や日中のピーク時間帯に宮下調整池に放水して発電する運用がメインでしたが、現在は違います。日中帯に揚水することが非常に多くなっています。その理由は、太陽光をはじめとする出力調整ができない再生可能エネルギーの連系が増大したこと。その発電量の影響で供給が需要を上回る際に、余剰電力を“水”に変えることで、巨大な蓄電池のような役割を果たしています。
 さらに、天気や時間帯によって再エネの発電量は大きく変動します。第二沼沢発電所は、その変動にも素早く対応可能。起動操作から並列まで約2分、並列から最大出力までは約7分です。
 再エネの連系は今後も拡大することが想定されます。電力の需給バランス調整がますます必要になる中、第二沼沢発電所は、揚水発電という強みを最大限生かし、重要な役割を担っています。

1号機の細密点検を実施中!「発電機ロータ吊り込み作業」を取材!

 1号機(23万kW)は2022年5月から、12年ぶりの細密点検を実施しています。
 点検のポイントは「多頻度の起動停止・負荷調整による影響」を踏まえること。前述のとおり、再エネの連系増大により運用方法が変化し、運転頻度が増加していることから、各摺動部に摩耗や劣化が発生しています。
 よって、機器の分解・手入れ、水車などのセンターリング(芯出し)、ギャップ調整(適正位置への調整)をより念入りに行うとともに、関連部品・装置の修繕や改良も行い、安定的な運転を目指していくこととしています。
 ※据付(組立)時に発電機固定部を中心に移動するもの。設計通りにセンターリングせずにズレて組み立てると、固定部と可動部がぶつかり、機器が損傷するなど安定した運転ができなくなる

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 取材班が同発電所を訪れたのは、点検の一つの山場となる「発電機ロータ吊り込み作業」が行われていた2022年11月のとき。発電機をはじめとする様々な機器がフロアに置かれ、まさに点検作業の真最中といった状況で、緊張感が漂い、多くの作業員がそれぞれ準備をしていました。

 吊り込み作業前の、作業手順・安全確認のためのミーティング。当社社員や各企業代表者による挨拶が行われていました。

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 いよいよ吊り込み作業を開始。発電機ロータの各部位を入念に確認のうえ、490tにも及ぶロータが天井クレーンにより、ゆっくりと吊り上げられました。

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 最重要作業である据え付け位置への吊り込み。作業員が発電機ロータの位置を慎重に確認・調整しながら、少しずつ下ろしていきます。直径7.7mのロータは片側21mmの隙間となるように均等に吊り下げます。クレーン操作者と調整者が笛やトランシーバにより相互に合図をするなど、息の合った連携が見られました。

 無事据え付けが終了。終了時には安堵の表情が見られ、フロア内に拍手が響き渡りました。
 一息したのもつかの間、速やかに次の作業へ移りました。

担当者インタビュー➀ 会津発電技術センター水力電気課 新藤一政課課長

担当業務:同センターエリア内27発電所の点検・修繕工事の統括。本工事も点検計画・工事内容等の確認を実施
担当者インタビュー1 会津発電技術センター水力電気課 新藤一政課課長 イメージ1

問.工事の進捗はどうですか。
答.細密点検は2022年5月に開始しました。まず、機器の分解点検から開始。修理が必要なものはメーカーに持ち込みます。
 同年9月に”大物”の水車吊り込み作業を終え、今日(取材当日)は次なる”大物”の発電機の吊り込み・作業でしたが、無事に終了し、ここまで順調に進めることができています。
 今後は、各機器の組み立て・据え付けを順次行い、終了後は各種試験を行います。
 2022年12月には発電を再開し、2023年1月に揚水の運転を再開する予定で進めています。

問.関係者一丸となって、点検期間の短縮に努めていると伺いました。
答.昼夜2交代の24時間体制で点検を行った結果、2023年2月から1月へと、点検終了期間を約1カ月短縮できる見込みです。
 点検期間の短縮により、電力供給コスト面、そして何より、冬場の厳しい需給状況の改善に寄与することができるものと考えています。

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問.今回の点検の特徴は。
答.太陽光発電の導入拡大により、従来とは運転の仕方が変わり、運転頻度は増加しています。そのため、可動部分に想定以上の摩耗が発生しています。よって今回は、予定時期より少し早く点検を開始しました。

担当者インタビュー1 会津発電技術センター水力電気課 新藤一政課課長 イメージ3

 また、人材育成という面も特徴の1つです。機器関係を担当している猪腰さんには、2021年度、別の発電所の細密点検を経験してもらいました。今回は次なる成長の機会として、揚水というなかなか経験できない点検を担ってもらうこととしました。昨年度の経験を十分に発揮していただいており、自信も付いてきていると受け止めています。
 今後については、今回の経験を踏まえ、中堅社員として、若手社員の指導・育成に努めていただきたいと考えています。

問.最後に一言お願いします。
答.第二沼沢は、近年、太陽光発電の導入が進んだことで、需給バランスの調整役として大変重要な役割を果たしており、関係者全員がそのことをしっかりと認識のうえ、本工事に従事しています。
 そして、水力部門は「水一滴無駄にしない」「1kWhでも多く発電する」という意識を持って日々取り組んでいます。具体的には、既設水力の出力をどうしたら増加させられるか、設備トラブルの停止を少なくするためにどうすべきかなどを検討し、実行に移しています。
 今回の工事も1日でも早く、安全第一で終了できるよう、尽力していきます。

担当者インタビュー1 会津発電技術センター水力電気課 新藤一政課課長 イメージ4

担当者インタビュー➁ 会津発電技術センター水力電気課 猪腰寛仁さん

担当業務:第二沼沢細密点検チームに所属。立会人として工事の管理を2022年7月から担当。職場は、気軽に相談しあえる雰囲気で、一体感をもって業務に臨めるとのこと。
担当者インタビュー2 会津発電技術センター水力電気課 猪腰寛仁さん イメージ1

問.課題や苦労はありますか。
答.発電容量が大きく、大規模な工事です。元々工事関係者が多く作業も輻輳しますが、今回はさらに24時間2交代体制での実施のため、現場での作業が重ならないよう調整することに苦慮しました。

問.具体的にどう対応されましたか。
答.基本的なことかもしれませんが、関係者との調整をしっかりと行いました。毎日の終礼ミーティングでは、現場代理人や作業責任者など中心メンバーとの打ち合わせを綿密に実施。例えば、機器の塗装を行う場合、日中帯だと、近傍での作業を行う作業員が多く、換気のための対策が必要となります。そのため、作業を夜間に移すなどの調整を実施。地道なことですが、作業を1つ1つ確認し、影響や関連を踏まえ調整していきます。

 もちろん、大事なのは、全国各地から集まる作業関係者との信頼です。そのためにコミュニケーションに力を入れました。第二沼沢は、工事範囲が広いです。そのため、入所した際は上の階の発電機フロアから、下の階の水車ドラフトエリアまで回り、全員に挨拶することを心がけました。
 その結果、挨拶時に「部品が入ってこない」など抱えている問題について気軽に相談されるようになりました。そこで私から「違う作業を先に実施すべきではないか」などの提案を行うことで、意思疎通の頻度と質が向上しました。普段からのコミュニケーションは本当に大事だと感じています。時にはプライベートな話も交え、信頼関係の構築に努めました。

担当者インタビュー2 会津発電技術センター水力電気課 猪腰寛仁さん イメージ5

 点検は、基本的に決められたスケジュールで進んでいくのですが、多数同時並行で行っているため、1つ1つの作業まで細かく見ていくと、スケジュール変更はどうしても発生します。私なりに何をどうしたら効率的に進むかを考え、可能な範囲で調整を行いました。例えば、水車などの主機の点検は遅らせられないため、補機の点検タイミングを前倒しするなどです。

問.発電機ローター吊り込み作業を終えての率直な気持ちを教えてください。
答.関係者の皆さんに感謝しています。本作業は大きな節目ですが、工事は今後も続いていきますので、運転開始まで無事故無災害で取り組んでまいります。また、今回経験した工事管理能力を今後の業務に生かしていきたいです。

問.最後に一言お願いいたします。
答.12年ぶりの細密点検というタイミングで本点検に関わることができ、感謝しています。無事故無災害で、一日でも早く点検を終え、供給力の戦力として復帰できるよう、ワンチームで頑張っていきます。
 また、現在、SDGsの観点から、再生可能エネルギーへの社会的感心が高まっており、水力発電にも注目が集まっています。
 その水力発電は、先輩たちの開発・運用のおかげで今があります。この設備や技術、スピリッツを受け継ぎ、誇りと使命感を持って、今後も携わっていきたいです。

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2023年1月中旬現在の状況です

 第二沼沢発電所では昼夜2交代の24時間作業など、関係者の努力の結果、もともとタイトだった点検期間を約1カ月短縮。2022年12月27日に発電方向(上池→下池)、2023年1月13日は揚水方向(下池→上池)の運転を再開し、厳冬期を前に供給力として戦列に復帰しました。

発電機ロータ吊り込みの様子をタイムラプスで撮影しています。ぜひご覧ください!